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地域資源活用チャンネル

いきいき活用事例

滋賀

既存事業を生かし、環境貢献へ

近江窯業・奥田信泰社長

近江窯業・奥田信泰社長

壁面緑化で新展開

 近江窯業は外装、床タイルを手掛ける近江化学陶器の販売会社として1979年に設立した。親会社の近江化学陶器の歴史は古く、創業は1874年。生糸生産のため蚕の繭を煮る鍋が当時の製品だった。この流れをくむ近江窯業も現在はタイル関連の開発、製造能力を備え、事業拡大に注力している。

 同社が現在、力を入れているのが、多孔質セラミックス製の植栽断熱発泡陶板を使った壁面緑化技術の普及だ。土を掘って化石燃料を燃やす窯業にあって、これからは環境への貢献が欠かせないという思いから事業をスタートさせた。当初は屋上緑化への参入を目指したが、先行企業の多さと市場価格の下落による利益率の悪さから断念。ドイツで主流となりつつあった"壁面緑化"に着目した。

 植栽断熱発泡陶板は、フレームとなる陶板と植物が根付く発泡体を一体焼成している。建物外壁の下地レールにタイル裏面の溝を引っかける乾式脱着方式の採用により、接着剤による環境負荷を軽減、工期短縮や工費削減を実現した。さらに植栽部の多孔質構造により断熱、防音性能にも優れ、湿潤状態では通常タイルと比べ、16℃以上温度上昇を抑えられるのも特徴だ。独自の面形成により、散水も効率よく行える。

本業の技術革新から派生

壁面緑化で展開する発泡陶板

壁面緑化で展開する発泡陶板

 この技術は2002年に国の創造法の認定を受けて取り組んだ多糖類研究の副産物だった。同社は当時、粘土の技術革新のため水に反応しない多糖類の開発を推進。この中で得たのが、発泡体形成技術とコケの植生に関するノウハウだ。発泡体を植生誘導の土台とすることで、陶板の上に植物を生育させることが可能。さらにコケは垂直面に活着させることができることから、壁面緑化タイルとして利用できる。新規事業の道が開けた。

 課題は販路だったが、信楽窯業技術試験場のイベントを通じ、屋上緑化を手掛けていたヒューネットと出会った。すでに協力関係にあったヌルハウスも交え、3社で06年2月に「新連携」の認定を取得した。

 屋上緑化市場はその製品に定量評価をもたない業者が多い。データが揃っているのは5%程度。大手ゼネコンと取引するためにはこれを明確にする必要がある。例えば"温暖化に優しい"というなら、サーモグラフィーを使って性能を可視化しておくといった具合だ。植物の寿命についても同様で、メンテナンスと保証の面から設置面積に対する年数当たりの枯死率をデータ化しなければならない。

 近江窯業は新連携の認定取得後から製品のデータ収集に注力した。金融機関の紹介で大学などにできたパイプを活用。断熱効果を数値化したほか、枯死率についても一定の数値を明らかにした。さらに細かなデータ収集によってメンテナンス体制も確立。同業他社に対する競争力を高めている。

 現在、同社は製品のラインアップ拡充に取り組んでいる。工費は削減できるものの、現状のタイルは設計価格が鉄筋コンクリート構造の3〜4倍。今後、コケ以外の植物を使ったタイルや廉価品を揃えていく方針だ。

 既存システムにとらわれず、新たな企業間協力を構築して、さまざまな製品の組み合わせによって市場を広げる。共同研究はすでに約10社と進んでいる。さらに壁面緑化の市場拡大をにらみ、志ある企業と連携して組合を形成、市場から粗悪品を排除する仕組みも構築したいと考えている。

【アドバイス】成長意欲の維持

既存技術も若手作家とのコラボレーションでアピールする(同社経営のレストラン内ギャラリー)

既存技術も若手作家とのコラボレーションでアピールする(同社経営のレストラン内ギャラリー)

 技術やマーケットシェアをもっている企業同士が連携することで新しい価値観が生まれる。異業種の中で再評価されることにより既存技術から生まれてくる製品もある。企業間で情報は得にくいが、大学などは映画でいえばプロデューサーだ。助言を受け止めれば新たな道が開けてくる。

 日本は急速な成長をしてきたが、中国は日本の成長期を4分の1に圧縮して追いかけてきている。これは日本の経済がつぶされていくスピードとも言い換えられる。現在の日本の環境、福祉、教育は企業が考えを転換しなければ、もうもたない。中小企業は連携することによって変わっていける。必要なことは成長意欲を維持することだ。前向きな気持ちで取り組んでいかなければならない。

会社概要

会社名:近江窯業株式会社
住所:滋賀県甲賀市信楽町勅旨2408
電話:0748-83-1381
URL:http://www.oumi-k.co.jp/