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地域資源活用チャンネル

いきいき活用事例

福岡

県内10業者が同一酒造用米使いソフト清酒商品化

大賀酒造・大賀信一郎社長

大賀酒造・大賀信一郎社長

焼酎にもワインにも負けない新しい酒づくりに挑戦

 福岡県農業総合試験場(福岡県筑紫野市)が開発した県内初の酒造用水稲品種「夢一献」。同品種を原料にした「福岡オリジナルソフト清酒」が県内の酒造業10社で製造販売されている。福岡県工業技術センター(同)が開発した酵母「ふくおか夢酵母」を使い、福岡県酒造組合(福岡市東区)や九州大学など産学官が連携して05年に製品化にこぎつけた。同酵母はリンゴ酸がベース。アルコール度数が10%以下と、さわやかでやや酸味があるフルーティーな味わいが特徴だ。

 福岡県、特に筑後地域は灘、伏見と並ぶ日本三大酒どころとして長い歴史を持つ。最盛期の昭和48年ごろには120の酒蔵があったが、日本酒低迷のあおりを受け現在は70まで減少している。焼酎やワインに負けない新しい日本酒が造れないか−。福岡県酒造組合は5年ほど前から本格的な製品開発に取り組んだ。

 同組合から委託を受け、開発に携わったのが1673年創業と福岡最古の酒蔵・大賀酒造(大賀信一郎社長)。同社は皇室献上酒「筑紫野」などの吟醸酒を得意にするが、「新しいことにチャレンジすることは苦にならない」(大賀社長)と製品開発を快諾した。

 最初の製品が誕生したのは02年。製品化は難しくなかったという。ただアルコール度数が9.7度と大吟醸に比べ5度以上低いため、製造後即瓶詰めしなければ製品が劣化する。また精米率が55%と低いため、製造コストがかかるという2点が課題として残った。

 とはいえ出来上がりは予想以上だった。日本酒を敬遠しがちな女性でも飲めるフルーティーで軽い口当たりから、当初は「ファーストキス」の名前でテスト発売、試飲会では飛ぶように売れた。

日本酒離れの中プラスアルファの商品に

発売したオリジナルソフト清酒「ゆめほたる」

発売したオリジナルソフト清酒「ゆめほたる」

 高評価を受けて福岡県酒造組合の組合員10社は夢一献とふくおか夢酵母を使った酒を独自に商品化、05年春から本格発売した。大賀酒造も商品名を「ゆめほたる」に変更した。商品化にあたっては情報交換のみで各社が連携したり共同開発などは行わなかったという。「同じ米を使っても水が違う、くせもあるで出来上がりは全然違う酒になる。技術は皆持っている」(大賀社長)ため製品化は各社に任された。

 発売直後の評判は上々だった。ところがいざ店頭に並べてみると日本酒という理由だけで売れ行きは芳しくなかった。「試飲会などで飲んでもらえれば売れる。ところが店頭に並べるだけでは思うように売れない」(同)。消費者の日本酒離れは思った以上に深刻だった。

 現在10社は販売を継続しているが、手に入るのは福岡県内の酒屋や百貨店などに限られている。大賀社長は今後も東京や大阪の大都市圏で商品を販売するのは難しいと見ている。市場は今、日本酒が爆発的に売れるとは見ていない。ただ福岡県で開発された酒造用水稲品種と酵母を使った清酒が地域資源の先進的活用事例として大きく注目されたのは間違いない。「ガンガン飲んでもらう酒ではない。ただ大吟醸だけでない、こういったさわやかな酒もあるんだということを知ってもらいたい。既存商品プラスアルファとしてこれからもいい酒を売っていく」(同)。地道な取り組みがいつか夢開くことに期待したい。

【アドバイス】行政と一体となった連携活動が大事

 イオンやダイエーといった大手流通業者でも、全国均一商品から、地産地消へと変わり始めている。地域にこだわった商品を店頭で販売することで立地する地域に根付こうとしているのだ。我々福岡の酒蔵も地元にこだわって酒を造っているが、大手の意識変化は福岡オリジナルソフト清酒の販売にも追い風だ。

 清酒製造は米などの農産物が原料のためリスクも伴う。これから地域資源を活用しようと考えている皆さんは、できるだけ個人・企業がリスクを負わないよう、行政と一体となった連携活動が大事だろう。

会社概要

会社名:大賀酒造株式会社
住所:福岡県筑紫野市二日市中央4-9-1
業種:清酒・焼酎製造
電話:092-922-2633