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地域資源活用チャンネル

いきいき活用事例

高知

安全指向と地産地消の風をとらえる

農事組合法人 苺倶楽部・池田典子代表理事(左)、中野ひとみ副代表理事(右)

農事組合法人 苺倶楽部・池田典子代表理事(左)、中野ひとみ副代表理事(右)

「もったいない」が原点

 高知県高岡郡中土佐町。静かな漁港の一角に苺倶楽部が経営するケーキ店「風工房」はある。イチゴのマークをあしらった碧色のペイントが、眼前に広がる太平洋の大海原にとけ込むようだ。店内に入るとイチゴの甘酸っぱい香りが立ちこめ、ショーケースのイチゴショートが食欲をそそる。奥の厨房では、婦人たちが慌ただしく仕込みに追われている。

 小粒だったり、形が悪かったりして市場に出荷できないイチゴを、何かに利用できないか。苺倶楽部は30年程前、イチゴ生産農家の主婦たちの「もったいない」から始まった。趣味の延長線上でジャムやゼリーに加工し、朝市や産業祭りで販売した。

 それが行政の目にとまる。過疎に悩む中土佐町では、温泉施設「黒潮本陣」を建設し、交流人口を増やす構想が持ち上がる。それには地の物を生かした土産がいる。イチゴという町の特産品を使った洋菓子ならいける、と踏んだ。

 高知県産のイチゴは、交通の便の悪さという地理的なハンディキャップを抱えている。徳島県産や香川県産に比べ、大消費地の大阪から遠いため、流通コストが高くつき価格競争力でどうしても劣る。「よし、それなら私らが一踏ん張りしなければ、との思いもあった」と、苺倶楽部代表理事の池田典子さんは話す。こうして平成7年度の高知県地域特産起業化支援事業に採択され、事業化に向け第一歩を踏み出す。

 それからというもの、フードコーディネーターの大原一郎さんを招き、洋菓子作りのイロハから猛特訓が始まる。「家庭用オーブンを農協の炊事場に持ち込み生地を焼いた。毎月一週間、夜は連日講習。この状態が10カ月続いた」と、副代表理事の中野ひとみさんは当時を懐かしそうに振り返る。「プロの作ったケーキでなければ食べられたものではない」。大原さんは指導の手を緩めなかった。

鮮度第一で販路拡大には慎重

風工房の店舗。2階は久礼湾を一望できる喫茶コーナー

風工房の店舗。2階は久礼湾を一望できる喫茶コーナー

 平成9年12月、風工房はオープンにこぎつく。「当初は業務用オーブンに馴染めず、焼いては捨て焼いては捨ての連続だった」(中野さん)。それでも、女性による共同経営という物珍しさも手伝い、テレビや雑誌で紹介されたことから、洋菓子は作るそばから飛ぶように売れた。スタッフは半年間にわたり、睡眠2時間という多忙な毎日が続くことになる。

 現在は開業当時のような賑わいはないが、甘さを控えた新鮮な手作りケーキが食べられるとあって、カップルや観光客の人気は定着している。通信販売では、北海道や九州など全国から注文が寄せられるようになった。

 顧客の心を掴むには、デザインも重要な要素になる。苺倶楽部では専門家の指導を受け、パッケージのマーク一つにも拘った。キャッチフレーズの「苺一会」は、「イチゴも、お客様も出会いは一度きり。愛しみ、思いやる心を忘れないで」という意味を込めている。

 課題もある。地元産・生イチゴへの徹底した拘りが、イチゴの非収穫期(7月〜11月)には裏目に出る。とくに夏場は生イチゴが使えないことから、減収は避けられず、他の原材料を使った新商品の開発が急がれている。幸い町内には小夏やキウイ、ブルーベリーを栽培している農家もある。「正規雇用を考えると、年間を通じ安定収入をあげることが大事」と、池田さんは地の果物や野菜を使った商品開発に知恵を絞っている。

 「イチゴから手作りの店というところに、とことん拘っています」(池田さん)。苺倶楽部の真骨頂はイチゴ生産農家の婦人たちがケーキをつくっていることにある。添加物はいっさい使わず、生菓子を販売させてほしいと他店から頼まれても、「鮮度が第一」と販路拡大には慎重な姿勢を貫いている。地元限定への拘りもある。風工房は南国土佐の澄んだ風だけでなく、「食の安全・安心」や「地産地消」という時代の風もとらえている。

【コメント】池田典子代表理事
全員がイチゴ栽培と掛け持ち

苺を使ったケーキ

苺を使ったケーキ

 共同経営に参加している6人は、40代から60代まで年齢はさまざま。子育て中の人もいれば、子育てが終わった人もいます。時には喧嘩もしましたが、基本的にうまくやってこられたのは、互いに助け合いながら信頼関係を育んできたからでしょう。

 開業資金を50万円ずつ出し合ったことで、危機感を共有できたことも大きいと思います。身銭を切っているから、事業に失敗すれば、自ら損害をかぶらなければなりません。行政や農協に頼り切りにならなかったことが良かったのでしょうね。

 代表、副代表は3年任期の持ち回りで務めます。全員がイチゴ栽培と掛け持ちのため、代表を固定すると、その人に過度に負担が掛かることになります。これもチームワークが保たれている理由のひとつと考えています。

会社概要

団体名:農事組合法人 苺倶楽部(店舗名は風工房)
住所:高知県高岡郡中土佐町久礼6782‐1
業種:食品製造販売
電話:0889‐52‐3395
URL:http://www.mantentosa.com/shop/shopping/mshop019/index.shtml