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地域資源活用チャンネル

コラム

●科学的根拠に基づいた商品開発を

 今年は日本製のプラモデルが誕生してちょうど50年になる。今はなきマルサン商店がドイツ製の彫刻機で金型をつくり、米社製の「原子力潜水艦ノーチラス号」を複製したのが事始めらしい。ラーメン一杯30円の時代に250円もする高級玩具だった。

中小企業が集積している荒川区にある童友社。内田社長は、お客からのクレーム内容も様変わりしたという

中小企業が集積している荒川区にある童友社。内田社長は、お客からのクレーム内容も様変わりしたという

 復刻版を販売したプラモデルメーカーの童友社(東京都荒川区)を取材した。社長の内田守さんから頭の痛い問題は消費者対策だと聞かされ、プラモデル誕生50年の感慨に浸っている場合ではなくなった。
 半世紀の間に変わったものは、プラモデルの精度と顧客のクレームとか。金型加工技術の進歩により精度は当時とは比較にならないほど向上したが、クレームの内容も様変わりしたという。内田さんによれば、わがままでモノづくりのイロハを知らない顧客が増えたという。

 「先日、怒った様子で電話をかけてきた顧客がいました。部品が接合できないって。どんな糊をお使いですか?聞いてびっくり。でんぷん糊を使っていたのですから…。」
 このときばかりは内田さんも開いた口が塞がらなかった。

 町のカメラ店を振り出しに創業から20年で年商1,000億円企業に急成長した通信販売のジャパネットたかた(長崎県佐世保市)。社長の高田明さんにとっても、消費者対策は厄介な問題のようだ。
 福田政権が進める消費者や生活者が主役の国づくりについて、こんな感想を漏らす。「お客さまが神さまですというのは一番簡単なことですが、お客さまの使い方が間違っていたら、こちらから間違っていますと言える勇気のある社会をつくっていかなければなりません。」

 高田さんは消費者の安心・安全意識の高まりを、むしろビジネスチャンスととらえている。6月2日、福岡に第2のコールセンターとして「テクニカルサポートセンター」を開設したのも、そうした戦略的な狙いがあってのことだ。センターで収集したクレームは、分析結果をメーカーにフィードバックする。ジャパネットたかたのオリジナル商品の開発だけでなく、より安全で使い勝手のよい商品作りをメーカーに提案することで、メーカーとの関係強化に役立てようとしている。

 食品偽装事件や製品欠陥事故が多発する事態を受け、福田政権は来年度に内閣府の外局として「消費者庁」を創設する方針を打ち出した。経済産業省や農林水産省、厚生労働省などから消費者行政に関する法律と組織を切り出し、消費者庁に一元化しようというものだ。地方財政の悪化を受けて廃止や縮小が進む消費生活センターについても、国の支援により機能を強化するという。

 消費者庁が消費者行政の司令塔として機能するようになれば、縦割り行政の弊害もなくなり、消費者や生活者が主役の国づくりは実現するのだろうか。どこか隔靴掻痒の感がある。消費者問題の本質的な部分には「製品の使い方に不慣れになっている」という消費者の未熟さや常識の欠如があるのでは。

 年初から自民党の消費者問題調査会や政府の消費者行政推進会議は、消費者行政の一元化に向けて精力的に議論を進めてきた。だが、この間の流れを見ていると、消費者保護にばかり目が行き、消費者教育の視点が抜け落ちていたように思える。政府が6月13日にまとめた「消費者行政推進会議取りまとめ」でも、消費者教育に関する記述はごくわずかである。「消費者教育や啓発に係る地方支援(中略)に取り組む」とあるだけだ。

 地域資源再生に取り組む企業においても、消費者対策はこれから大きな課題となろう。各地域が保有する豊かな文化や食材などを活用するには、クレームの試練に耐えられるよう、エビデンス(科学的根拠)に基づいた商品開発やサービス創出に力をいれる必要がある。でんぷん糊でプラスチック部品を接合することに疑問を感じない、そんな消費者まで想定しながら事業を進めなければならない、厄介で危うい時代がきた。

 参考リンク  消費者行政推進基本計画について(平成20年6月27日閣議決定)
 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/shouhisha/kakugi/080627honbun.pdf

(日刊工業新聞社 岡田 直樹)