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地域資源活用チャンネル

コラム

●埋もれた宝を掘り起こし地域活性化につなげよう

 政府は「中小企業地域資源活用促進法」を制定、地域資源を基にしたビジネスを掘り起こし、地域の活性化や格差是正の一助にしようとしている。すでにノミネートされた地域資源は全国で1万件を上回り、事業認定も200件を超えた。さらに、シンポジウムを開いたり、サポーターを募集したり、アンテナショップを計画したりと、さまざまな施策を繰り出している。

「宝石の街 甲府」の看板がひときわ目につく甲府駅前のロータリー

「宝石の街 甲府」の看板がひときわ目につく甲府駅前のロータリー

 各地とも観光資源、農水産品、工芸品・工業製品など地域独自の資源をビジネスにつなげている。しかし、これらは氷山の一角であり、せっかくの地域資源という「宝」をもちながら、ビジネスのツールとして役立つと気付いていないケースも多いようだ。また気付いてもビジネスに結びつけるアイディアが生まれず、そのまま放置している場合もあると思われる。

 先頃、甲府市を初めて訪れた。甲府駅を降りると武田信玄の銅像があるが、「風林火山」のTV放映が終わったためか銅像を見上げる人も少ない。銅像の向かいのロータリーには「宝石の町 甲府」という看板が目をひく。ところが、駅前の通りは県庁所在地にしては喧噪感がない。目抜き通りの商店街は、どこの地方都市でも見られるようにシャッターを降ろした店が散見される。宝石店どころか土産物店も見あたらない。

 近くの甲府城跡に足を向けても周辺に土産物店はない。それではと駅北口に行くと、宝石会館があるはずだが看板も見えない。今は水晶や金などの採掘もほとんど行われていないらしいが、宝石加工は一大地場産業を形成しているだけに、宝石店が軒を連ねている風景を想像していた。もちろん、武田神社や昇仙峡などの観光地に行けばこうした光景が見られたかもしれない。

 山梨県は富士山を筆頭に南アルプス山系の北岳・甲斐駒ヶ岳、八ヶ岳など名峰に囲まれており、日本100名山にいくつも名を連ねている。また昇仙峡など渓谷美や忍野八海に象徴される湖沼群がある。こうした「自然の景観」に加え、水のおいしさは全国一だという。富士山の伏流水や南アルプスなどから生まれたミネラルウオーターは、全国シェアの40%に達する。この名水を使った日本酒の蔵元も多い。

 甲府盆地を中心に果樹栽培も盛んでブドウをはじめモモ、スモモ、サクランボなどが栽培されているし、ワインも地元のブドウを使用し醸造しており、最近は本場フランスにも輸出するようになった。さらには野菜類も豊富で、県では地産地消を推進している。

 温泉や景勝地、文化遺産、産業遺産など観光資源は他県に比べて多い方ではないだろうか。そして「山梨と言えば水晶」というほど水晶は全国に鳴り響いている。その流れを受けた人工水晶の育成と加工は地場産業を形成し、水晶振動子や水晶発振子などの水晶デバイスメーカーが集積しているし、製造装置メーカーも多く立地している。山梨がもっていないものは唯一「海」くらいだろう。県内にあるものすべてが地域資源と言える。これだけ地域資源に恵まれている地域は全国的にも珍しいと思うほどだ。

甲府市内で開かれた「やまなし中小企業活性化フォーラム」では甲斐シルクを使った製品が展示された

甲府市内で開かれた「やまなし中小企業活性化フォーラム」では甲斐シルクを使った製品が展示された

 「中にいると、もっているものの良さが分からない」と言われるが、恵まれた資源を多くもっているが故に、その中に埋没し、十分にビジネスとして活かし切れていないのかもしれない。

 その中で、古くから伝えられている甲斐絹(かいき)を使った織物を地場産品としてビジネス化しようと、前田源商店など地元の繊維関連業者4社が立ち上がり「甲斐絹座」をスタートさせた。新しい感性でアレンジした甲斐絹をネクタイや傘などにして世の中に送り出そうというプロジェクトで、地域資源活用プログラムの認定を受けている。

 山梨はトマトの産地。中央市商工会青年部のメンバーが、地元特産のトマトを使って何かできないかと考えた。その中で生まれたのがトマトコロッケ。「とまコロ」のネーミングでネット販売を始めている。そしてスイーツだ。試行錯誤を繰り返し、フルーツトマトを使ったスイーツもできあがった。トマトは山梨の地域資源としてノミネートされているが、トマトを用いたビジネスはまだ事業認定の申請が出されていない。

 最近訪れた山梨を例にしたが、全国どこでも同じようなことが言えるのではないだろうか。地元にいると気がつかない地域資源を活用するには、業種や地域などを問わず多くの人が連携する必要がありそうだ。「三人寄れば文殊の知恵」と言うが、甲斐絹やトマトの例を見ても分かるように、新たなものを作り上げるために、複数の企業が業種を超えて連携し、試行錯誤を繰り返している。また、自分たちでは気がつかないことを補うために、大学や行政機関、アドバイザーなど外部の知恵を導入する必要があるかもしれない。

 そうすれば水晶などの宝石加工技術が活きてくるかもしれないし、水が単なる水ではなく付加価値を生むかもしれない。「宝の持ち腐れ」という言葉があるが、地域資源はすべて宝石の原石であり、知恵を出し合いながら磨くことにより、地域に新たなビジネスが生まれ、活性化の切り札ともなるだろう。

(日刊工業新聞社 山ア 和雄)