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地域資源活用チャンネル

コラム

●観光庁ができても…

 観光行政の顔となる「観光庁」が、国土交通省の外局として誕生しそうだ。国交省は観光立国の実現に向け、2008年度概算要求に観光庁の新設を盛り込んだ。人口減少社会の到来で長期的に日本人観光客の減少が避けられないなか、とくに外国人観光客の誘致に期待がかかる。

 国交省は観光政策を担当する総合政策局の6課(観光政策課、観光経済課、国際観光課、観光地域振興課、観光資源課、観光事業課)をそのまま切り出し、観光庁に格上げしたい考え。観光庁ができれば、「他省庁への働きかけを強めたり、外国政府との観光交流を拡大したり、国をあげて観光振興を進められる」(国交省)と説明する。外局の「数あわせ」のため、海難審判庁は航空・鉄道事故調査委員会と統合し、運輸安全委員会にするという力の入れようだ。

 ただ観光地は今後も「お上」を当てにできそうにない。実動部隊となる国際観光振興機構(JNTO)は行政改革の流れの中にあり、観光庁ができても観光政策の強化にはすぐに結び付かないからだ。同機構は政府系機関として13カ国に事務所をもつが、予算は毎年削られ、拠点網の拡大はそろそろ限界にきている。一律削減、縮小均衡の性格が強い行革の影響から、観光振興は国全体として整合性のとれたものになっていない。

 今年は「石見銀山効果」もあり、世界文化遺産暫定リスト掲載に名乗りを上げる自治体が過去最多となったが、名所旧跡だけでは継続的に人を呼べない。世界文化遺産や国宝が集積する京都でも、外国人のべ宿泊者数が6位(07年1〜3月)とは驚く。観光地を抱える自治体は発想の転換が必要だろう。

 国際競争の時代に求められるのは、商工業や農林水産業など異業種との連携である。1次産品も含め地域の魅力を総動員し、固有のおもしろさを作り込む。IT機器や工芸品の購入を目当てに訪日する外国人観光客も少なくないことからすると、工場見学やモノづくり体験といった産業観光との組み合わせも有効だろう。

 そのうえで、ほかの地域と協調関係を築けるか。周遊コースに設定された観光地が相互に観光地の魅力を紹介したり、次の目的地への行き方を案内したりできれば、土地勘の乏しい外国人観光客などには喜ばれよう。「点」ではなく「エリア」で攻める発想が重要であり、「オラが県主義」では早晩、立ちゆかなくなる。国交省も来年度から長期滞在が可能な「広域観光圏」の形成を後押しする考えという。

 自治体の体制も「商業観光課」に代表される従来の縦割り組織では限界があろう。観光振興は誘致活動だけでなく、故郷教育や景観づくり、異業種交流を含んだ総合政策である。スペイン・アンダルシア州の「観光スポーツ庁」のように、海外から観光客を呼び込むための横断的な組織作りがカギになろう。

 入れ込み客数を競うのではなく、特定の国に特化して観光客を呼び込むのも一つの生き方だろう。個性の競演や他産業・他地域との連携で、海外からリピーターを呼び込めれば、観光大国の実現も夢ではなかろう。

(日刊工業新聞社 岡田直樹)