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地域資源活用チャンネル

コラム

●地価の上昇から見る地域の活力

 地域の活力は、地価動向にはっきり現れるものらしい。国土交通省がまとめた「2007年地価公示」は、全国平均で住宅地・商業地とも16年ぶりにわずかな上昇に転じ、景気回復や都心回帰を裏付けるものとなった。注目したいのは地方圏の動き。中心市街地整備や観光振興、成長分野のモノづくりなどに取り組み、土地の利用価値が高まった地域では、地価の上昇が見てとれる。それらに共通するのは地域固有の資源を活用しながら、創意工夫と自助努力でオンリーワンの生き方を探り当てたこと。地域間格差がますます拡大するなか、地価下落のスパイラルから抜け出せないでいる地域にはいっそうの奮起を望みたい。

 札幌や函館など一部を除き全体的に低迷が続く北海道にあって、伊達市は一昨年から地価上昇が続いている。キーワードは高齢化対応。「高齢者安心生活まちづくり」という基本構想のもと、高齢者向け医療・福祉サービスの充実に努めたことで、道内外から高齢者の移住が進んだ。総合病院が整備された中標津町でも道内から高齢者が移り住むようになり、今年から地価は平均で上昇に転じている。

 歴史的な資源の活用により活性化した地域もある。愛媛県松山市は高い地価の上昇地点が現れた。ロープウェイ新駅舎とともにロープウェイ商店街の道路景観を整備したほか、道後温泉や歴史小説「坂の上の雲」(司馬遼太郎著)などの地域固有のソフト資産を生かした街づくりが奏功した。長野市はダイエーやそごうが撤退した後、長野駅から善光寺へ向かう人の流れを活かす形で千歳町通りなどをリニューアル。既存商店街との親和性も生まれ、地価の上昇地点が出ている。

 変わりダネは著名出身者を活用した町おこし。鳥取県境港市は漫画家、水木しげる氏の故郷である。境港駅から「水木しげる記念館」まで延びる800mの歩道は「水木しげるロード」として整備され、人気漫画「ゲゲゲの鬼太郎」に登場する妖怪たちのブロンズ像が並ぶ一大観光スポットになっている。これが日帰り客を中心に人気を呼び、地価下げ止まりの背景になっている。

 しかしながら3大都市圏を除くと、上昇圧力が強まっている地域はごく一部に限られる。長野市と松本市の関係に象徴されるように、同一県内において一番手と特色の薄い二番手以下の都市で地価動向を巡り明暗が分かれてきているのも、今回の調査から浮かび上がる特徴点と言える。多くの地方都市が高齢化や市街地の空洞化に悩み、効果的な対策を打ち出せないでいる様子がうかがえる。

 富山市が整備を進める「コンパクトシティ」は、そうした地域の手本になりそうだ。地価下落は続いているものの、減少の一途にあった市街地人口は昨年9月から増加に転じている。「コンパクトシティ」は公共交通機関を軸に都市機能の総合的な魅力を高め、お年寄りがクルマに頼らず歩いて暮らせるようにした街。富山市は全体像を「串とお団子の関係によるまちづくり」というイメージでとらえ、富山ライトレール(次世代型路面電車)の沿線に、商業施設や住宅などの誘致を進めている。富山ライトレールは生活拠点(団子)を貫く串にあたる。

 戦後一貫して郊外部の開発を進めてきたため、市街地の人口密度は県庁所在地で最下位。マイカーの依存度は7割強と高いが、最近は郊外部にクルマを運転できないお年寄りが増え、行政コストの増加も懸念されるようになった。そこで赤字路線のJR富山港線を引き継ぐ形で、昨年4月に富山ライトレールを開業。中心市街地への移住者に対しては、家賃や住宅建設費の補助を実施している。

 郊外部から市街地へ人口流入が起こり、効果が出始めたのは、富山ライトレールの整備を先行し、コンセプトのイメージを可視化することで、多くの住民の共感を得たことが大きい。「串とお団子」という単純明快なキャッチフレーズに住民参加の姿勢が良く出ている。

(日刊工業新聞社 岡田 直樹)