HOME > 事業を広げる > 技術開発を支援する!SBIR[中小企業技術革新制度] > 企業レポート

技術開発を支援する!SBIR[中小企業技術革新制度]

企業レポート 特定補助金等 活用企業

神奈川県

レーザーがゆがまない蒸着膜

企業名 有限会社岡本光学加工所
テーマ 低応力高耐力真空蒸着薄膜の開発
特定補助金等の名称 中小企業・ベンチャー挑戦支援事業のうち実用化研究開発事業に係る補助金
岡本光学加工所で開発した干渉計

岡本光学加工所で開発した干渉計

物質を構成する原子同士がぶつかり合って反応すると大きなエネルギーが生じる。これを核融合と呼び、それで生じたエネルギーを利用する技術が世界中で研究されている。大阪大学は強いレーザー光で原子を閉じこめて核融合を起こす「レーザー慣性核融合」を研究している。強いレーザー光をつくるには光を圧縮しなければならず、そのためには反射率が高く光がゆがまない光学素子が必要だった。この光学素子の開発に、レンズやレーザー用光学素子製造の歴史がある岡本光学加工所が乗り出し、基板上でひずまない蒸着膜の開発が始まった。

高反射には平らな表面が重要な条件となる。同社は基板表面を超平面にする研磨技術を持つが、問題は長さ920mm×幅420mm×厚さ90mmという、通常では考えられない基板の大きさだった。レーザーの反射率を高めるため、基板には0.2μmの蒸着膜を40層も重ねる。膜は真空中で蒸着するため空気中に出すと引っ張る力が強くなり、ひずんでしまう。極大サイズの基板ではわずかなひずみも大きく響く。そもそもそんな大きさに対応する蒸着装置はなく、その装置から開発する必要があった。

購買の需要に応えるためにSBIRを利用

岡本隆幸社長

岡本隆幸社長

できあがった基板にひずみがないかを調べる検査装置の干渉計もつくらなければならない。しかし、2つの装置を同時に開発するのは資金的にかなりの負担だった。
 「蒸着装置ができたら買うという引き合いはあったが、製品を検査できなければ何もつくれない」(岡本社長)
 そこで2005年に中小企業技術革新制度(SBIR)対象の補助金(特定補助金等)を活用し、干渉計の開発を始めた。
 干渉計とは、基板に研磨や蒸着した後に、光を分散するための回折格子を作成した後の凹凸を検査する装置。大阪大学が持つ従来の干渉計と比較しながら開発を進め、3つの比較対象から標準品をつくる3面合わせの手法を利用して装置を完成した。この干渉計を元に蒸着方法の検討を始め、イオンプラズマを金属粒子と一緒に飛ばして基板に打ち付けるイオンビームアシスト蒸着(IAD)技術や、大きな基板に対応する特殊なチャンバーの導入などにより技術を確立することができた。

岡本社長はSBIR対象の特定補助金等を、「採択ジャンルが広く、金額も大きかったのでとても助かった」と評価する。ほかの補助金事業も候補に挙がったが「光学開発分野はニッチな市場で、合致する採択基準がなかなか見つからなかった」(同)。金額が大きい制度も少ない。技術の転用も狙う同社には、実用化を目的とした開発支援という点も1つのポイントであり、「将来のニーズを見据えた投資として、助成金はありがたい」(同)。
 岡本社長は「技術は当社が光学素子をつくる上で、他社と差別化できる大切な要素」と力を込める。事実、これだけ大型の光学素子製造装置は例がなく、海外も含めて素子や装置の引合いは多い。ただ、課題は販路開拓にある。先端技術を担う特殊分野の製品で、かつ海外が相手となると1社単独での対応は難しい。「他企業とのネットワーク構築支援があれば利用したい」(同)と、海外も見据え、さらなる事業展開を目指す。

会社概要

会社名:有限会社岡本光学加工所
代表取締役 岡本 隆幸
住所:横浜市磯子区原町8-34
電話:045-752-2233