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第64回 日本最古の瓦メーカーの海外展開[丸栄陶業]

2016年3月28日輸出

江戸時代から続く丸栄陶業の『栄四郎瓦』

丸栄陶業の創業は古く、享和元年(1801年)、丸栄陶業の初代社長、樅山(もみやま)金造氏が屋根瓦の製造を始めたのが起源である。当時、江戸では大火が相次ぎ、政府は火事による家屋の類焼を防ぐため、屋根瓦の普及を推奨していた。初代社長が屋根瓦の製造を始めたのは、丁度、瓦製造の気運が高まっていた頃でもあった。そして、3代目社長である樅山栄四郎氏が、(文久元年)1861年に、同社の屋号を「丸栄」と定めた。丸栄陶業は、創業以来、一貫して瓦メーカーとして瓦の製造販売を続けてきており、現社長である樅山朋久氏は8代目の社長にあたる。丸栄陶業の瓦は3代目社長の名を取って広く「栄四郎瓦」と呼ばれている。

丸栄陶業が得意とする瓦は、「銀いぶし瓦」である。これは、粘土を燻製させて瓦を銀色に変色させたものであり、主に寺院などで使用されている。同社は、この「銀いぶし瓦」で国内シェアトップの企業であるが、この他にも、一般家屋で使用される平板瓦やS形瓦など、幅広い品揃えで瓦を製造しており、国内では、主に大手ハウスメーカーなどに製品を卸している。

台湾に出張所を置き、現地での販売拠点に

同社は現在、売上規模で国内第3位の瓦メーカーであるが、そのマーケット環境は決して安泰というわけではない。近年、国内の瓦消費量は減少の一途をたどっている。その背景には、大家族世帯数の減少に伴う住宅着工戸数の減少と、新築家屋の小型化がある。加えて、ソーラーパネルの普及もあり、屋根瓦の国内市場は年々縮小してきている。
 国内市場が飽和する中、多くの企業が海外に目を向けているが、丸栄陶業の海外展開のきっかけは、台湾現地の人からの誘いによるものだった。その誘いに応じ、2003年、台湾に出張所を構え、そこを台湾への販売拠点とすることとした。台湾では、住宅用の瓦が出荷製品のメインである。台湾の住宅用瓦は、競合他社も多く、現在、価格競争の状態に突入しつつあるため、同社は、自社の強みを活かして、寺院向けの瓦に注力し、台湾市場を開拓している。

丸栄陶業の瓦が使用されている香港の慈山寺

丸栄陶業の瓦が使用されている香港の慈山寺

丸栄陶業は、台湾だけでなく中国への展開も行っている。中国では、寺院向けの瓦が出荷製品のメインである。中国展開のきっかけも、現地からの依頼によるものだった。中国の大寺院から直接、数十万枚という大量の瓦の注文を受けたのである。中国では、その後、同社の瓦の高い品質の話が口コミで広がり、他の寺院からも、依頼が次々に舞い込むことになった。現在、中国向けに関しては、屋根材を扱う上海の業者と提携し、その業者を介して、中国国内に瓦製品を販売している。
 台湾、中国ともに、現地からの依頼をきっかけに海外展開を始めた丸栄陶業であるが、自社独自でも、上海で開催される展示会や博覧会に製品を出品し、自社のアピールを積極的に行っている。

高い技術力で国内外の信頼を得る

同社の強みは、日本最古の歴史や実績だけでなく、その高い品質と技術力にもある。たとえば、瓦に着色する場合、一般には塗料を吹きつけたり塗料に浸したりして着色するものであるが、同社は、金属酸化物を粘土に配合したり、また、焼き方の工夫だけで、塗料を使わずに瓦に色を付けることができる。また、瓦の製造工程では、湿度や気温、焼き窯に入れるタイミングと時間、そして焼き窯の中の雰囲気に至るまで、全てが完成品の品質を大きく左右する。このため、一定水準以上の品質の瓦を安定的に製造するためには、機械による自動化だけでは対応できず、一枚一枚に応じた職人の技というものがどうしても必要となる。着色の技術、そして、焼き方の技術、いずれも簡単には、他社に真似のできないことである。

同社の瓦は、設計事務所など、建築の専門家(プロ)の間で評判が大変良く、その品質と技術力が、同社の歴史や実績と融合して、総合的に「栄四郎瓦」のブランド力を高めることにつながっていった。当然、このブランド力が海外からの信頼を得ることに大きく貢献していることは言うまでも無い。
 さらに、丸栄陶業は2013年、粘土会社をM&Aで獲得している。これで、瓦製造に必要な3要素「土、火、技」のうちの「土」も手に入れたことになる。より良質な土を安定的に手に入れることができるようになり、より品質の高い製品を今後も造り続けることができる。今、丸栄陶業はまさに「鬼に金棒」の状態になったと言える。

上海での展示会「中国国際建築装飾展覧会EXPO BUILD CHINA」で紹介された同社の瓦製品の数々

上海での展示会「中国国際建築装飾展覧会EXPO BUILD CHINA」で紹介された同社の瓦製品の数々

日本の瓦を世界中に轟かせる

丸栄陶業の売上高全体に占める海外向け瓦の売上の比率は、未だ低い状態ではあるが、樅山社長は、「今後は、この比率を20%以上に引き上げていきたい」という。また、「海外では、寺院向けは強いが、住宅向けにはまだまだ開拓の余地がある。住宅用瓦の販売も、今後は強化していきたい」という。

「また、オーストラリア、フィリピン、ベトナム、アメリカなどにも過去の販売実績があるため、これらの国の市場も積極的に開拓していきたい」という。
 瓦の製造技術の高い国は、日本以外ではヨーロッパなどに多いが、決して日本の製造技術がヨーロッパに劣っているわけではない。現在の「ジャパン・ブランド」の潮流もあり、積極的な海外展開は可能なはずだ。

丸栄陶業の「銀いぶし瓦」は、皇居吹上御所でも使用されている。丸栄陶業の瓦が海外に広く普及すれば、日本の瓦の高い品質と技術力の評判が、世界中に轟くことになるだろう。

企業データ
企業名 丸栄陶業株式会社
代表者 代表取締役 樅山 朋久
所在地 愛知県碧南市白沢町1-38
業種 瓦製造販売 等

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