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第60回 茶禅一味、茶の王道をゆく「寿月堂」[丸山海苔店]

2015年12月21日海外進出

丸山海苔店は、1854年(安政元年)に海苔の問屋業として創業した会社である。創業当時は海苔の仕入れ卸といういわゆる問屋を専業としていたが、現在は海苔、お茶の仕入から商品開発、販売まですべての工程を手がけている。
 同社の販売ルートは、寿司店をメインとした業務店を始め、自社店舗、ダイレクトメール、そして自社ECサイトなどによるものである。流通のすべてを自社で押さえているため、顧客との結びつきも強く、また顧客のロイヤリティも高い。30年来の常連客も多いという。

フランス・パリへの出店

丸山海苔店は、日本でトップクラスの海苔ブランドであるが、海外展開は日本茶で果たした。2008年、フランス・パリに日本茶喫茶・茶葉の専門店「寿月堂」をオープンさせた。海外展開の陣頭指揮をとった丸山副社長は、出店場所をフランス・パリにした理由のひとつとして、パリの文化的背景を挙げる。「ヨーロッパ、とくにフランス人は文化に対する意識が非常に高い。また、日本の文化に対する興味も他国と比較して強く、海外展開の1号店はパリと決めた」と言う。

丸山海苔店「寿月堂」パリ店

丸山海苔店「寿月堂」パリ店

丸山海苔店の戦略は、「まずは最高級のプロに使ってもらうことで、上から下へと商品を浸透させていく」というものである。すでに日本では、ミシュランガイドで評価されている高級寿司店や日本料理店から圧倒的な支持を得ておりファン層も幅広い。

パリでの展開も同様である。地元の最高級フランス料理店やラグジュアリーホテルの中にあるレストランと取引が生まれた。
 「パリの料理人は皆、勉強熱心ですから、トップクラスのレストランが寿月堂の茶を使って、お客様から好評を得ているということは、瞬く間にクチコミで広まっていきましたね」(丸山副社長)

寿月堂パリ店は、日本の茶と禅の精神を体現した店舗であり、内装には「自然の中で自然のものを飲む」というコンセプトで、和のもの(竹、ひのき、和紙など)を使っている。店内には、店舗スペースのほか、茶室、飲茶スペース、和の雰囲気を体験してもらえる空間(場)も設けられている。そこでは、茶器の展示会や「茶のたて方教室」など、茶に関する様々なイベントを通して日本の文化や日本茶の魅力を海外に伝えている。

丸山海苔店「寿月堂」パリ店の店内

丸山海苔店「寿月堂」パリ店の店内

パリ出店のきっかけ、そして学び

フランス・パリに店舗を持つに至ったきっかけについて、丸山副社長はこう語る。

「川上のみで付加価値付けが終わってしまいがちな第一次産業的な分野において、川上から川下までの全ての活動を自社で管理することで、付加価値の連鎖を起こし、他に無い自社のブランドを創り上げることを日本ではある程度実現できました。この自社独自の日本のブランドを、海外でも通用するブランドに育ててみたいと思ったのです。
 また、もはや経済大国ではなくなった日本が、今後ますます世界において求められること、アピールできることは、日本にしかないもの=文化です。大げさかもしれないが、お茶などの『日本人の心』を具現化した(食)文化を海外に広めていくことは、日本の国力を世界にアピールし、外交力を付ける上で重要なものとして捉えており、その重要な活動に間接的にも携われるような『夢』のある仕事をしたいと思ったのです」

寿月堂 銀座 歌舞伎座店

寿月堂 銀座 歌舞伎座店

パリ店での活動を通じて学んだことも多いという。国内市場は成熟化してしまっているとはいえ、海苔も茶もその良さを広く知らしめようという積極的な活動はなされていなかった。その反省もふまえて、丸山海苔店は日本でも「日本文化の美しさと和の心」を広く発信する場として、2013年4月、「寿月堂 銀座 歌舞伎座店」をオープンさせた。歌舞伎座店では、パリ店同様、煎茶教室や和菓子教室といったイベントなどを行っており、とくに海外から来た人に対して日本茶の素晴らしさを伝える場としての役割を持たせている。また、最近のインバウンドの波は築地にある寿月堂本店にも押し寄せており、今や外国人に大人気の状態となっている。

寿月堂 銀座 歌舞伎座店の店内

寿月堂 銀座 歌舞伎座店の店内

さらなる世界展開

丸山副社長は、「今後もブランド力を保ちながら、商品開発を行い、さらなる世界展開を進めていきたい」という。
 そのための前段階のプロジェクトとして、現在行っているのが日本茶の有機栽培である。今後、茶を広く海外展開させていくためには、「有機栽培は絶対条件」と言う。各国の農産物輸入基準をクリアするためには有機栽培は避けて通れない。おいしい日本茶の有機栽培が可能になれば、世界中どこにでも進出できる可能性が拓けてくる。そのために、今、土の診断士(土壌医)の協力も得ながら土壌づくりから研究を始めているという。

「これは、長い期間をかけて、茶のメーカーとして取り組もうと思っています。海外展開先国・地域については、ヨーロッパはまだまだ市場が伸びる見込みはあります。北米においては、“カジュアル・スタイルの新しい日本茶のお店”というコンセプトも有望だと考えています」

日本での歴史とブランドにあぐらをかくことなく果敢にチャレンジする丸山海苔店が、日本茶のイメージを変えていく日も近い。

企業データ
企業名 株式会社丸山海苔店
代表者 代表取締役社長 丸山 邦治
所在地 東京都中央区明石町1-23
業種 海苔・お茶・自然食品の業務用品及び贈答品の卸売、小売等

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