本文とサイドメニューへジャンプするためのナビゲーションスキップです。

中書企業の海外展開入門トップに戻る

第59回 クールな日本酒で世界への扉を開く[久家本店]

2015年12月 7日輸出

大分県臼杵市の久家本店は、万延元年(1860年)創業の老舗蔵元だ。清酒「一の井手」をはじめ清酒、焼酎、リキュールを製造・販売する。
 少子高齢化社会により国内のアルコール総消費量が2000年前後をピークに減少に転じた。そのため同社は海外に市場を開拓すべく、2011年から挑戦を始めた。
 まずは2011年10月、ジェトロ主催の「食品輸出商談会 in大分」に初めて参加し、以降、2012年6月の「香港食品ビジネスセミナー」、同年7月の「食品輸出商談会 in大分」へと立て続けに参加。7月の商談会では韓国の酒類専門のバイヤーと商談し、その後、ジェトロ大分などの仲介で同バイヤーを工場に招いたり、継続的な商談を重ねた結果、そのバイヤーと輸入代理店契約を結んで韓国市場への足場を築いた。
 そして2012年11月に「韓国Food Week2012」のジャパン・パビリオンに出展し、代理店のバイヤーと共にレストランや小売店に営業をかけることで受注を獲得。初めて韓国へ焼酎を輸出した。

清酒「一の井手」をはじめとした久家本店の商品群

清酒「一の井手」をはじめとした久家本店の商品群

フェイスブックに入ったコメント

同年8月、久家本店は「香港FoodExpo2012」で大分県のブースに参加して自社製品を出品。そこで中国人のバイヤーと知り合うが、発注を得るまでには至らなかった。ところが翌2013年、同社のフェイスブックに香港から1つのコメントが入った。
 「現地のバイヤーからでした。その年の香港FoodExpoの会場で会いませんかといメッセージでした」(久家本店代表取締役・久家里三さん)
 コメントの主は、香港で卸小売を営む3人の共同経営者だった。同年の香港FoodExpoに出展予定の彼らは、現地で日本酒も販売しているという。そして、今後の取扱い商品として久家本店の清酒に興味を抱いたようだ。それを知った久家さんも、好奇心から彼らのブースへ足を運んでみることにした。
 そこで出会ったのは、男性2人、女性1人の30代前半の若手経営者たちだった。彼らは現地で日本酒をネット通販したり、飲食店へ卸売していた。久家さんは3人といろいろ話し合う中に「彼らとならうまく付き合える」と直感した。
 前年に知り合った中国人バイヤーは、商談に持ち込もうとしてものらりくらりとはぐらかすだけで、一向に発注する気配を見せない。どことなく胡散臭い相手だった。しかし、3人の若手経営者たちはそれがない。ビジネスに対する誠実さが感じられたのだ。
 香港FoodExpo で知り合った翌年の2014年には、久家さんは香港の若手経営者たちと現地のクリスマスセールで一緒になって日本酒を売り、また、2015年の香港の展示会「ワイン&スピリッツ・フェア」でも共に出展した。そうした共同行動を重ねる中に久家さんたちは相互信頼を高め、2014年に香港への日本酒の輸出が始まった。
 香港への輸出については、久家本店と香港バイヤーとが連携して知恵をしぼることで輸送費を抑える方法を考案した。それにより、通常の輸入では香港で高価になりがちな日本酒もリーズナブルな価格で販売でき、その価格面での優位性が功を奏して香港での顧客獲得につなげられた。

「香港クリスマスセール2014」では香港の若手経営者たちと共に日本酒を販売

「香港クリスマスセール2014」では香港の若手経営者たちと共に日本酒を販売

北米・カナダへ

2011年から4年間で韓国、香港への輸出に成功した久家本店は、この間、北米・カナダへも日本酒を輸出している。それは、2012年10月の「日本酒・焼酎輸出商談会in大分」でカナダ人のエージェントと知り合ったことがきっかけだった。
 カナダは各州政府の専売局が酒類の販売を取り仕切っている。そのため毎年各州で販売する酒類の入札制度がある。それに応札するよう働きかけたのが彼のエージェントだった。彼は入札の書類作成方法などをアドバイスする専門家だった。そのエージェントのサポートが奏功し、2013年の落札に成功し、カナダへ日本酒を輸出した。
 2014年以降は応札していないが、今後はカナダへの輸出にもチャレンジしていくという。

次なる海外への販路

現在、同社の年商の3%が海外での売上だが、それを10%まで伸ばしたいという。そのためにも、現在継続している香港への輸出を中心にカナダへの再輸出、タイへの販路開拓を予定している。
 そのうちタイへはリキュール(梅酒)の輸出の準備を進めている。かつて同社は、日本酒造組合が実施する国内空港での試飲販売で梅酒を販売したことがある。その際、梅酒はタイ人にしごく好評だった。その梅酒には地元産のかぼすを混ぜてあり、通常の梅酒に比べて酸味の強いのが特徴だ。
 「このかぼすのすっぱさの利いた甘酸っぱい味がタイ人にはうけたようです」
 地元・大分に在住のタイ人に試飲してもらうと「これは売れる」とお墨付きを得られた。さらに、地元には立命館アジア太平洋大学(APU)の留学生が多いため、タイからの留学生に協力を求め、ラベルのデザインなどタイ人の好みに合う商品化に向けて研究している。

海外へ向ける基本戦略

これまでの韓国、香港、カナダへの輸出実績から、同社は基本的に現地人のバイヤーや代理店と契約して輸出するという戦略を取る。将来的には広大な市場である中国へも輸出したい意向はある。ただし、中国輸出だけは基本戦略を取らず、リスクを回避するために日本の輸出業者を介して市場開拓に取り組むという。
 輸出は基本戦略をベースに相手国の事情によって臨機応変に手段を使い分けるが、日本酒の海外市場での反応につては国に関わらず一貫した印象を持つ。
 「日本人が想像する以上に海外の人にとって日本酒、さらには日本の製品や文化などはクールでかっこいいと思われています」(久家さん)
 ユネスコ無形文化遺産として和食が世界に浸透するいま、久家本店はそんなクールな日本の伝統酒である日本酒、焼酎で世界への扉を開いていく。

企業データ
企業名 株式会社久家本店
代表者 久家 里三
所在地 大分県臼杵市江無田382番地
業種 醸造業

このページの先頭へ