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第45回 伝統技法の茶筒の価値を海外で受け入れられるような販路開拓を実践[開化堂]

2015年4月13日輸出

京都に創業140年の老舗茶筒店がある。明治8(1875)年創業の開化堂だ。
 開化堂の源は、英国から輸入されたブリキの加工技術を応用して創業者が茶筒をつくったことにある。それまでの日本の茶筒は錫を打ち抜いてつくられていたが、開化堂の創業者はブリキ板を用い、塗装せず地肌を活かした茶筒(生地物)の製法を開発した。そしてその独自の製法が現在へと連綿と伝えられている。

開化堂の茶筒(素材は左からブリキ、真鍮、銅)

開化堂の茶筒(素材は左からブリキ、真鍮、銅)

すべてを職人の感覚でつくり上げる

ところで茶筒とは、抹茶や茶葉を保存する気密性の高い円筒状の缶であり、二重構造のため湿気を帯びにくいという特徴がある。そのため近年は茶葉のみならず、紅茶やコーヒー、パスタなどの保管にも使われる。
 開化堂の茶筒は材質としてブリキ、真鍮、銅の3種類があり、それぞれの茶筒は経年変化で独特の風合いを楽しめる。

年月を経ると素材独特の色に変化する〔左から真鍮(黄色)、ブリキ(銀色)、銅(ピンク色)〕

年月を経ると素材独特の色に変化する〔左から真鍮(黄色)、ブリキ(銀色)、銅(ピンク色)〕

また、開化堂の茶筒は、胴の口部に蓋を載せると蓋がすーっと降りていく。蓋がそれ自体の重みで自然に落下するほど、蓋と胴部の隙間が極小かつ滑らかに仕上げられているということだ。
 「開化堂の茶筒はすべてを職人の感覚でつくり上げるため、蓋と胴との隙間が実際にどれくらのあるのかわかりません」と笑うのが6代目の八木隆裕さんだ。

開化堂の茶筒はすべてが職人の手づくり

開化堂の茶筒はすべてが職人の手づくり

海外でも売れると確信した

いまから15年ほど前、家業を継ぐ前の八木さんはみやげ用伝統工芸品の販売店に勤務していたが、そこで外国人観光客が開化堂の茶筒を購入するシーンを幾度となく目の当たりにした。また、家業を継いだ後の2006年ころ、英国で開化堂の茶筒を販売する日本人のショップが現地の有力ティーショップ(ポストカード・ティーズ社)から注文を受けたと聞き及び、開化堂の茶筒は海外展開できるのではとの思いに至った。

さっそく単身で英国に渡り、ロンドンのポストカード・ティーズなどで実演しながら数十個の茶筒を売った。
 さらに2009年、知人を介してパリの有名百貨店「ギャラリーラファイエット」の地下食品館で実演販売した。そこでは作務衣の着用を要求され、現地の小学生に忍者と揶揄されるほど日本の伝統文化が曲解されていた。それを払拭するため八木さんは普段着に着替え、英語を使い、フランス人の助けも借りながら丁寧に茶筒を説明し始める。すると客も興味を示しだし、1週間で50万円を売り上げた。
 その経験を通して「海外できちんと説明すれば売れる」という確信も得た。それを機に本格的に海外展開に着手し、5年後の売上で海外販売比率を20%にする目標を立てた。

外国から確実に評価される

八木さんはショップや百貨店での実演販売のほかに、展示会も積極的に活用している。
 2009年から3年間、パリの世界的インテリア見本市「メゾン エ オブジェ」に毎年出展。1年目にメディアを介した認知・普及に努めると、2年目からバイヤーとの取引が始まり、3年目で業績が大きく表れるなど出展の効果を実感した。その際、経済産業省の「地域資源活用新事業展開支援事業」の補助金を活用した。

また、2011年に国際家具見本市「ミラノサローネ」、2012年に「100%デザイン上海」と「ニューヨーク国際現代家具見本市(ICFF)」に出展し、2013年にはニューヨークのギャラリーで展示販売するなど継続的に海外への展開を試みる。
 その結果、ICFFでは「ICFFエディターズ・アワード」(職人技部門)を受賞、2014年に英国のヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(ロンドン)のパーマネント・コレクションに認定されるなど開化堂の茶筒は海外で確実に評価されていった。

茶筒の新しいスタイルを目指す

現在、開化堂の茶筒は英・米・台湾を主体に15カ国で販売されている。日本の伝統工芸品はメディアなどで取り上げられると流行にはなるが、持ち主がその楽しみ方や使い方を理解していないと宝の持ち腐れになってしまう。
 また、海外の消費者は商品の成り立ちを知り、さらに自らのライフスタイルに合うか否かを判断したうえで購入を決める。よって、伝統工芸品も暮らしに溶け込んだ商品でないと買ってもらえないことから、ワインクーラーやアイスペール、ピッチャーなども商品化してきた。
 それはすなわち、パリの百貨店で実演販売した時に会得した「伝えれば売れる」ことに重きを置き、茶筒の可能性を世界に提案しようという表れといえる。2009年に立てた5年後の目標(海外売上比率20%)もクリアした。

八木さんは、茶筒以外の商品開発を3-5年後の目標に定めている。そのため昨年から現代アーティストと協業したビジネスを展開している。また、今年からは旧来の茶筒と距離を置き、いまの人が使いたい茶筒のスタイルをつくり上げようとしている。そうした茶筒に対する新しい試みにより、10年後には世界に知られる開化堂会社にしたいと八木さんは意気込む。

企業データ
企業名 開化堂
代表者 代表取締役社長 八木 聖二
所在地 京都府京都市下京区河原町六条東入
業種 茶筒製造・販売

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