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第40回 高い製品開発力、現地社員の愛社精神と信頼関係が成長の源[カネパッケージ]

2014年3月24日海外進出

代表取締役社長 金坂良一氏

代表取締役社長 金坂良一氏

カネパッケージ株式会社は、1976年設立の会社であり、精密機器などの緩衝材の企画・開発などを手掛ける。カネパッケージが海外展開を始めたきっかけは、設立20年後の1996年、フィリピンに進出した取引先から、「現地では日本と同じような品質の商品が手に入らない」という話を受けたことだった。同社は今、様々な苦労はあったもののフィリピンで成功をおさめ、ベトナムやタイ、インドネシアに事業拡大を図っている。

フィリピンでの成功のきっかけは現地サプライヤーとの連携

カネパッケージは自社工場を持たないファブレス企業である。このため、フィリピンでは、製品の現地サプライヤーとの連携が最重要項目だった。しかし、当時の現地のサプライヤーは、納期もばらばらである上に、数カ月もさかのぼって価格を引き上げてくることもあった。
 納品された製品に対して、印刷のずれや傷などの苦情を言っても、「納品したのだから」と代金の支払いを求めてくる。これが当時のアジアのパッケージ業界の一般的な状態だった。しかし、フィリピンに赴任した現社長の金坂良一氏は、半年間でこの業界体質を変革することに成功した。
 まず、金坂社長は朝早く起きてサプライヤーの工場に顔を出した。そして生産管理の責任者とコーヒーを飲みながら話をする。その後、カネパッケージが発注した製品に関する生産指示書を責任者から受け取り、金坂社長自ら工場に持って行く。すると、工場ではカネパッケージから発注された製品の生産に朝から取り掛かるようになる。金坂社長は、工場での機械の段取りと実際に製造が開始される様子を見てから、自分の会社に出社するということを続けたのだ。
 仕事が終わると再びサプライヤーを訪問し、生産指示書通りに製品ができているかどうかを確認した。問題があったらそこで作り直してもらうのだが、それを見届けて帰宅すると深夜になっていた。メインのサプライヤーは3社ほどあったが、1人では回り切れない。そこで、帯同させている現地の従業員にも仕事の様子を見せた。食事も一緒にしながら仕事を教える。その手法を理解した現地の従業員が自ら率先して仕事を代わってくれるようになった。
 その後、サプライヤーに自社の社員を常駐させ、工程管理や納期管理、品質管理をサプライヤーの会社側で行うようにした。工場は24時間稼働していたため2-3交代制だったが、これらの取組みにより、顧客にスムーズに製品が納品されるようになった。取引先の日系企業からは、「すぐに納品してほしい」という要望も多いが、この製品供給体制を作り上げたことで、遅くとも翌日くらいまでには製品を納品できるようになったのである。
 ファブレス企業においては、現地の設備をどう活用するかが重要な課題だ。現地企業と競合するというのは長続きしない。現地企業が努力し技術力や品質力が向上すれば、10年後は自社の優位性が保てないかもしれないからだ。そこで、現地のサプライヤーに品質や生産の指導しながら仕事を依頼していくことにしたのだ。その結果、サプライヤーにとっては、自分たちの営業ではなかなか受注できない日系企業の仕事が増えていくため、カネパッケージと一緒に仕事をすると売上が伸びるということを実感してもらえる。これでこそ現地サプライヤーとのWin-Winの関係になる。

金坂社長は、「どれだけ苦労しているかはお客様に見せないようにしよう」と、従業員に伝え続けてきたという。努力していることを認めてほしいという社員は多い。カネパッケージでは、自己評価と上司評価を行い年2回の物価上昇率を加味して昇給させるようにしている。これは現地の感覚を考慮した成果であるといえる。また、部門長に確認した上で、能力の高い社員であれば2-3階級上がる人もいる。努力した人を認めることで社員は成長する。
 モチベーションを高くできる仕組みがこの昇給・昇格制度なのだ。制度だけでなく、毎日の対話も重視している。今苦労してもこれから変わることを伝える。そして、できたら褒め、できなかったときは叱るのだが、褒める割合を8-9割にした。
 驚きを与えるためには感情を表に出すことが重要だったのだが、努力すれば必ず達成できるという自信が彼らについてきた。売上、利益も伸び、次なる海外展開のための人材育成もできた。フィリピンで育った人材は、その後展開した国に派遣した。フィリピン人は英語が話せる上に海外に行きたいという人は多い。日本人の社員を派遣するよりコストも抑えられる。また、生産管理や品質管理などのノウハウはフィリピンの工場で作り上げ、そのスタイルを他の国でも再現している。

カネパッケージがフィリピンで成功した要因は他にもある。取引先のパッキングラインの工場に自社のトレーラーのコンテナを並べ製品を即トラックに積載できるようにし、工業団地間の移動の際の煩雑な手続きをバーコードのチェックだけで済ませる仕組みを取り入れた。
 また、納品先やサプライヤーとはすべてドルで取引を行った。原材料輸入の際にはドルでの支払いが一般的であるため、この取引条件はサプライヤーにとっても有利な話であった。サプライヤーとしてはドルを必要とするため、ドルで支払いが行われるカネパッケージにはすぐに納品してくるようになったという。

カネパッケージはアジアに多くの拠点を持っている。 タイ現地法人(上)、フィリピン現地法人(左下)、ベトナム現地法人(右下)

カネパッケージはアジアに多くの拠点を持っている。
タイ現地法人(上)、フィリピン現地法人(左下)、ベトナム現地法人(右下)

他社の追随を許さない製品開発力と時代の先を読む力をもつ社員の育成

カネパッケージはファブレス企業であり、自社では梱包材の設計、開発、企画、評価を行う。創業当時よりこのような仕組みで取り組んでいるが、自社で生産しないため自由な発想で製品開発ができるという。短くとも1年先の商品の梱包材についてメーカー側に提案するのだが、開発段階から提案することでパッケージのトレンドを自ら作り出している。
 これは国内だけでなく海外でもできる強みだ。3-5年後お客様の商品がどのように変化するかを予測し、それをいかに小さく包んでいくかを考える。小さなパッケージにすることで、出荷や積載、物流効率がよくなり、物流時に発生するCO2の削減にも貢献できる。
 大手企業が、世界中の工場で生産される製品の梱包材をカネパッケージに切り替えることもあるという。過去には、月に10万箱の取引が成立したこともあるという。タイやベトナムでは、大手企業の高い要求に応える製品開発に3週間程度で成功し取引が決まった。
 カネパッケージでは、先を見据えた商品開発を行う社員をどのように育成しているのか。それは、海外の社員も含め展示会に参加させるようにしているのだという。メーカーの新商品を見ることで、翌年以降のトレンドを見極めるのだ。
 また、毎日、新聞を読むことを習慣化させているそうだが、これらの取組みで自然と先を読む力が身についてくるという。単に指示されたことに取り組んでいるのではなく、社員自ら考えながら取り組んでいるからこそ、技術のブラッシュアップが実現できるのであろう。
 また、幹部社員には数値を読む力も身に付けさせる。数値がわかって経営、経済の流れがわかるから、それを元に分析でき施策が打てるのだ。経営の感性が研ぎ澄まされてくるとビジネスチャンスが見えてくる。
 金坂社長は、人材育成にかかる費用は将来への投資と割り切っている。「設備には投資しないが人には投資する。設備は陳腐化するが人は陳腐化しない」というのが持論だ。

ぶれない海外展開の方針

カネパッケージでは海外展開における方針を以下のように定めている。
 1点目は、自社の技術サービスを発揮できる地域にしか進出しないということだ。展開先国の選定を誤ると苦労するだけでお金にならない。カネパッケージでは、投資回収期間を3年程度としており、それで目処が立たないなら撤退を検討する。その決断が重要だ。
 2点目は、海外投資は海外の収益でやることだ。日本からお金を持って行ってはいけない。
 3点目は日系企業を中心に取引することだ。日系企業以外は回収できないリスクが高い。
 4点目は、税制面の優遇措置を徹底的に調べ、それを最大限に利用することだ。

上記のほか、カネパッケージは展開先国では積極的に社会貢献活動を行っている。例えばフィリピンではマングローブを植林し、学校設立のための寄付をしている。これらの活動を通して地元の人も喜ぶが、一番喜ぶのは社員だという。活動に参画することで「この会社はこんなに自分たちの国や国民のことを考えてくれている」と感じることで、愛社精神が湧くという。
 タイで洪水があった時、自宅も被災しているにも関わらず、8名の社員は無遅刻・無欠勤で通勤してきたという。また、デモがあった時には、仕事を止めるように迫ったデモ隊に1人の女性が立ち向かい、彼らを追い返して仕事を続けたという。金坂社長の取組みに現地の社員たちはきちんと応えてくれているのだ。

タイが洪水に襲われたとき、金坂社長はヘリコプターをチャーターして取引先の様子を空撮し、日本の取引先に映像で報告したという。自社も被災していたが、いち早く現地を確認し手を打ったことで、被災した2カ月後には操業できる体制を整えることができ、黒字を維持することができた。
 そして、そのような気配りとスピーディーな取組みがさらなる信頼を集めたという。高い製品開発力に加えて、現地社員の愛社精神と取引先やサプライヤーとの信頼関係がカネパッケージの成長を支えている。

企業データ
企業名 カネパッケージ株式会社
代表者 代表取締役社長 金坂 良一/会長 兼平 作太郎
所在地 埼玉県入間市南峯1095-15
業種 製造業(各種緩衝材の設計・製造・販売等)

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