本文とサイドメニューへジャンプするためのナビゲーションスキップです。

中書企業の海外展開入門トップに戻る

第36回 うずらの卵関連商品からビジネスモデルまでの輸出を目指す[浜名湖ファーム]

2014年2月28日輸出

浜名湖ファーム 近藤哲治社長

浜名湖ファーム 近藤哲治社長

浜名湖の西側に位置する静岡県湖西市はうずらの産地としても有名である。この湖西市で養鶉業を手掛けているのが浜名湖ファームだ。
 浜名湖ファームの2代目社長である近藤哲治氏は高校と大学で建築を学び、卒業後、現場監督を10年以上経験した後に会社の跡を継いだ。異業種からの参入であったため、業界の慣習を打ち破るさまざまなアイディアを用いて、高品質なうずらの卵を作り出すことに成功した。そして今、海外展開の経験から新たな可能性を見出している。

健康なうずらの育成にこだわる

近藤社長は両親の跡を継いで養鶉業に取り組んだが、自然を相手にする事業ではまったく予想外の苦労があった。うずらはとても小さい鳥で、環境変化によるストレスに弱い非常に繊細な鳥である。現在、浜名湖ファームでは8-9万羽のうずらが飼育され、日量6万個の卵が生産されるが、ストレスは産卵率にも影響し、産卵率はそのまま収入に直結する。
 生き物相手の養鶏業に休みはなく、餌も与えなければならない。鳥インフルエンザやそれによる風評被害などへの危機感も常に隣り合わせだ。近藤社長は、「オリンピックで金メダルを取れるくらい丈夫で健康なうずらを育てたい」という想いを強く持つようになり、その飼育方法を見直すことにした。
 最初に着手したのは餌の改善だ。うずらに長生きしてもらうためには健康で丈夫な体作りに取り組まなければならず、そのための餌が重要だ。そこで色々と調べて考案したのがもろみ酢のような発酵資材を与えるという方法だった。天然のミネラルを豊富に含んでいる発酵資材を与えると、うずらの腸内細菌が育ち、体の内側から健康な状態になる。それで腸内に蓄積される悪い成分を自ら殺菌することができるようになるのだ。
 とくに乳酸菌他(養玉菌類)を基本とし自社培養されたものは、農業にも畜産にも使用できる培養液であるが、菌を培養するためには、杜氏が日本酒造りで用いる発酵作業のような感性が重要だ。自然と対話するという感性がなければできない。教えてもできるわけではないというのが、この手法の難しさだ。
 苦労して餌の改良に取り組んだ結果は、うずらの体に顕著に表れた。羽の付け根にまでしっかりと産毛が生えてきて、体格もよくなった。生まれた時からうずらにもこのエキスを与えることで腸内環境が整い、元気で健康な体が作られるようになる。
 こうして近藤社長は「殺菌剤や抗生物質を使わない、化学栄養剤を使わない、ワクチンもほとんど使わない」という飼育方法を確立させた。その発酵資材は養鶉飼育所内部の洗浄にも使われており、鳥インフルエンザの感染を防いだり、家畜特有のにおいを消す効果もあるという。

浜名湖ファームのうずらの卵関連商品

浜名湖ファームのうずらの卵関連商品

流通構造を作るために国内外の展示会へ出展

浜名湖ファームから出荷されたうずらの卵のほとんどは燻製として市場に流通される。生卵で流通するのは全体の1%程度しかない。浜名湖ファームでは、餌や飼育環境へのこだわりを伝えるため、自社での消費者への直接販売も行っている。作り手のストーリーを理解してもらうことができれば、より多くの人に食べてもらうことができるはずだ。この直接販売が功を奏し、浜名湖ファームから出荷したうずらの卵を使って作られた燻製「たまごくん」が売れるようになったことをきっかけに、展示会にも出展するようになった。
 まずは都内で開催された物産展に出展した。隣のブースに出展している人からは「うずらの卵でわざわざ出展するなんて」と笑われた。わざわざ物産展に出展して販売するような商品ではないと思われたようだ。展示会場では燻製卵と生卵を展示し、試食を勧めた。いずれの試食者からも美味しいと高評価をもらえたが、驚くことに生卵に関しては試食した人全員が購入したのだ。出展を笑った隣のブースの担当者にも食べてもらったところ、その味に納得してもらえた。近藤社長は、この物産展への出店で改めて自社の商品力に自信を持ったという。
 「たまごくん」の国内での高評価を背景に海外展開を考えるに至り、シンガポールと香港の展示会に出展した。都内の物産展同様、同行した関係者や近隣ブースの人からは「なぜ卵で出展するのか」と言われたが、予想通り反響は大きかった。
 シンガポールの展示会では多くの商談の結果、オーガニックのビスケットを作っている会社との契約が成立したが、検疫を通すための書類作成や手続きに膨大な手間がかかり、残念ながらシンガポールへの展開は中断せざるを得なかった。
 香港の食品展覧会でも1社との契約が成立した。香港では、店頭でのテスト販売が行われた結果、浜名湖ファームの商品の売れ行きは好調だった。このため、日本から定期的に燻製卵を送ることになった。現在、香港の日本人向けスーパーに、浜名湖ファームから出荷されたうずらの卵の燻製が並んでいる。

海外展開商品に関する現在の課題は、現地商品との差別化だ。展示会で面談したベトナムのバイヤーからは、「富裕層向けに販売することを考えているが、ネームバリューがないためこのままでは普通の卵と見られてしまう」と言われたという。現在の品質でも十分に自信はあるものの、今はさらなる改良を行うタイミングと方法を考えているところだ。

近藤社長は国内外の展示会へ積極的に参加することで海外展開のビジネスチャンスをつかんだ

近藤社長は国内外の展示会へ積極的に参加することで海外展開のビジネスチャンスをつかんだ

循環型農畜産システムを海外へ

海外の展示会では、商品の流通に関する商談以外にも様々な相談が寄せられる。インドネシアの農家からは、「化学肥料や農薬を使えば大量にできるがおいしくない。農地も痩せてしまう。だから発酵資材を使いたいと考えているがうまくいかない」という相談があった。その他にも「新たな農業技術を求めている」という話や「家畜のにおいを何とかしたい」という相談まで持ち込まれる。そのため、近藤社長はうずらの飼育を軸とした農畜産サイクルを作る必要性を感じているという。
 うずらの糞はボカシ肥料(発酵肥料)になる。その肥料を使って野菜を作る。作られた野菜はそのまま販売したり、加工食品にする。あるいは飲食店や食品工場で使用してもらう。これが近藤社長の考える農畜産サイクルだ。このサイクルはお金をかけることなく実現できるうえに、ビジネスが成り立つようになれば関係する事業主も潤う。さらに近藤社長が与えている餌を使用し、環境を整えることで家畜特有のにおいを消すこともできる。展示会で寄せられた問題を1つひとつ解決することができるのだ。
 近藤社長は、このサイクルを地元の浜名湖ブランドとしてパッケージ化したいと考えている。地元の農畜産業者、小売店、飲食店、食品加工業者などの連携により効果的な循環型のシステムを作り、それをビジネスモデルとして国内外に提案していきたいと考えている。また、海外では毎年のように鳥インフルエンザが発症しているため、自らが使用している餌を使った飼育法や環境を整える手法を伝えることにもビジネスチャンスがあると感じている。

近藤社長のモットーは「皆大歓喜」。皆が大喜びすることをしたい。食べている人も、関わっている人も幸せになるというサイクルを作りたいという願いだ。近藤社長の構想が完成した日には、世界中の農畜産業者の模範となるだろう。

企業データ
企業名 有限会社浜名湖ファーム
代表者 近藤 哲治
所在地 静岡県湖西市白須賀5991
業種 畜産農業(うずらの飼育販売、うずらの卵の生産及び加工販売等)

このページの先頭へ