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第34回 浜松の餃子と大福を世界へ[マルマツ]

2014年2月12日輸出

浜松餃子で中国での事業展開

餃子といえば宇都宮市が有名だが、家計1世帯あたりの餃子への支出額は浜松市も全国でトップクラスだ。その浜松市で浜松餃子を作っているのが株式会社マルマツである。浜松餃子の特徴は具にキャベツや玉ねぎなどの野菜がふんだんに使われていることであるが、マルマツの餃子は皮にもこだわっており、モチモチした触感の薄い皮を用いている。多いときは日産100万個も生産され、業務用としてレストランなどに提供されていたり、小売店でも販売されている。
 5-6年前から販路を拡大すべく、国内の展示会に出展するようになった。展示会には海外から来日したバイヤーも多く、彼らと商談する機会も徐々に増えていった。味も好評だったため、海外展開も視野に入れるようになっていった。信頼できる会社とのタイアップを考え、パートナーを探した結果、取引先から紹介された中国・青島に本社のある企業と商談を進め、合弁会社を設立し工場を建設することを決めた。

マルマツの餃子の海外展示会出展風景

マルマツの餃子の海外展示会出展風景

餃子の味を再現する苦労

海外で販売されているマルマツの浜松餃子

海外で販売されているマルマツの浜松餃子

中国工場で生産する餃子については、中国国内で食材を揃える方針であった。しかし、日本で使用している小麦粉や調味料と同じのものを探すのに大変苦労した。小麦粉については成分指定をしても、現地メーカーの小麦粉の精製レベルが低いため、日本と同じ小麦粉を作ることはできなかった。苦労の末、ようやく満足できる小麦粉を提供できる取引先を見つけることができた。薄くてモチモチとした食感の餃子の皮を作り出すために、機械は日本から持っていった。
 調味料は日系大手商社からも入手できるが、仕入価格が上がってしまうため小売価格に見合わない。そこで何度もテストを繰り返し、調味料を自社で調合することにした。具材は豚肉、キャベツ、玉ねぎだが、これらは中国でも入手できる。味は日本とほとんど同じだが、取引先のバイヤーからの要望に合わせて具の味を変えることもある。肉製品を輸出できない国もあるため、中国と香港以外の国に流通させる餃子については豚肉を使わない。よって、海外の展示会には最初から肉の入っていない餃子を持っていくようにしている。豚肉の入っていないマルマツの餃子は、ヘルシー感が売りだ。
 また、一般的に海外で流通している餃子は皮の厚いものが多いが、マルマツの餃子は皮が薄いため数多く食べられる。飲食店にとっては、数多く食べてもらえたほうが売上につながるため、マルマツの餃子が好んで使われているのである。さらに、マルマツの工場は静岡県ミニHACCPを、中国の工場はISOを取得しているが、これも海外で商品を流通させることにおいて大きなポイントとなっている。

販路開拓

マルマツの餃子が店頭販売されている中国の百貨店

マルマツの餃子が店頭販売されている中国の百貨店

中国工場の建設時から、中国で生産した商品を中国国内で流通させることを考えており、香港で開催された展示会などには積極的に出展した。
 中国工場で生産した餃子は、中国企業の取引先に卸していった。日系の問屋や商社などへのセールスは毎月1-2週間ほど、マルマツの山下常務自身が中国に行き営業活動を行っている。エンドユーザーは飲食店、スーパー、百貨店だが、流通量が最も多いのは飲食店であり、大口取引先は回転寿司や韓国料理のチェーン店だ。取引先の回転寿司チェーン店は170店舗ほどもあり、月に3トンも納品している。
 韓国料理チェーン店も100店舗ほどあり、月に1-2トン納品している。また、スーパーで試食販売を行ったところ、1週間で日本円で百数十万円の売上があったという。日本食フェアのような催事でも試食販売を行っている。定番商品として取り扱ってもらえるように働きかけをするためだ。
 百貨店には、ネームバリュー維持のために商品を継続して置いてもらっている。また、商品を置いてもらう店は、中国人富裕層も訪れる店を選んでいるという。進出当初は取引先がなく苦労したが、今では、徐々に大口取引先もできて経営も安定してきたという。
 日系の卸売業への営業活動に対しては特に気を配っている。他社と価格争いするような商品は売りたくないという考えであり、話を持っていく順番についてもしっかり考えなければならない。客先が重複する場合は、1つの卸としか取引できないことが多いからだ。よって、取引したい飲食店や小売店には取引している卸を確認するようにしている。
 この事前調査のおかげで、上海では顧客の取り合いは行われず、きちんと住み分けがなされている。このように、現地の商慣習を踏まえて営業活動を行った結果、中国国内での取引先開拓は順調に進んでいった。

中国から世界へ

中国で事業展開してからは、海外の展示会にも出展している。年に1回青島や大連で開催されるシーフードショーでは欧米のバイヤーとも商談するが、欧米マーケットにも手ごたえを感じているという。中国での事業展開のきっかけも展示会であったが、現在は国内で年3-4回、海外で年3回ほど展示会に出展している。
 国内の展示会では金融機関や商工会議所のサポートも受け、助成金も活用している。中国工場で生産した餃子は、中国国内だけでなく香港やオーストラリアにも流通している。
 2014年早々にはフィリピンへ商品が流通することが決まっているが、それもドイツの展示会で知り合ったフィリピンのバイヤーとの商談の結果だ。フィリピンのバイヤーは、大連の展示会に来場したついでに青島の工場見学もしたという。10トンクラスの取引になる見込みだ。
 あわせてロシアへの輸出も決まっており、展示会への出展が確実に海外販路の拡大につながっている。
 今後流通が見込める地域はEUだ。EUに工場を保有している日本の大手餃子メーカーのシェアは80%ほどにも上っており、餃子を知る人はEUにも着実に増えている。だからこそバイヤーは「他の餃子はないのか」と展示会にやって来る。餃子でも数社の商品があったほうが飽きられないに違いない。
 大手メーカーがEUで生産している餃子には肉も入っているが、マルマツの餃子は野菜だけであり、差別化を図ることもできている。EUのバイヤーからは、EU圏内に工場を建設することを勧められている。
 EUだけでなく、海外における日本の焼き餃子の認知度は高いという。中国では日式餃子として飲食店で提供されているため、商談も進めやすかったのだが、それも日本の大手メーカーが数年前から世界各国で餃子事業を展開していたためだ。おかげで今はどの地域のマーケットにも入りやすい状況にあるという。今後は、ニューヨーク、ロシア、ハワイの展示会へも積極的に出展していく予定だ。
 海外の取引先が広がるのは展示会だけではない。既存の取引先が、他の国のバイヤーや関係会社を紹介してくれることもあるという。これも信頼関係がきちんと構築されていることと、商品力の高さが認められているからこそである。

大福も香港へ

浜松にあるマルマツ社の工場には、大福の皮を作ることができる設備もある。このため、総合的に判断した結果、大福での香港展開も行うこととなった。山下常務の10年来の友人である八幡屋菓子舗の耳塚社長と共同出資で新会社が設立され、2013年11月に登記が完了した。新会社の社名は「株式会社やわたや」とし、本社をマルマツ本社工場内においた。
 香港へは、浜松の工場で作った大福を輸出する。香港のバイヤーからは、香港に工場を建設するよう勧められたが、不安も大きいため日本から輸出することにした。大福もマルマツの餃子が流通している飲食店を中心として販売される予定だ。
 山下常務と耳塚社長は、互いの夢の実現のために二人三脚で海外市場に挑んでいる。

企業データ
企業名 株式会社マルマツ
代表者 代表取締役社長 山下 光明
所在地 静岡県浜松市西区雄踏町宇布見1703-1
業種 製造業(チルド餃子、冷凍餃子製造)

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