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第32回 ウクライナと日本の懸け橋に[サードウェーブグループ]

2014年1月27日海外進出

コンピューター機器の販売やパソコンショップ「ドスパラ」の運営などを手掛けるサードウェーブグループは、東日本大震災を機に安全環境事業部を立ち上げ、ウクライナ支店を開設した。

震災直後にウクライナへ

サードウェーブグループの代表、尾崎健介氏

サードウェーブグループの代表、尾崎健介氏

2011年3月11日に起きた東日本大震災により、福島第一原子力発電所事故が起きた。サードウェーブグループ代表の尾崎健介社長はこの事故を重くとらえ、知人の紹介を受け5月上旬にウクライナに飛んだ。
 ウクライナはチェルノブイリ原子力発電所事故が起きた国である。1週間程度の滞在で、商工会議所や原子力関連の研究所のトップ、当時の事故処理担当責任者、放射能関連機器メーカーなど、現地で次々と紹介を受け、話を聞いた。当時、日本からウクライナに情報収集に行った人はいなかったため、ウクライナの関係者たちは尾崎社長を歓迎し、さまざまな情報を伝えてくれた。
 尾崎社長は当初、「放射能汚染問題に対応するために、ウクライナから放射能測定器を調達して販売しなければならない」と考えていたが、さまざまな人に話を聞くにつれ、「単に商品を販売するだけでは役に立たない」と考えるようになった。そして、「放射線自体に対する教育方法や知識、機器の取扱い方法なども合わせて日本に持ち込まねばならない」と考えるようになった。

サードウェーブグループは、ウクライナの商工会議所に数少ない日本企業として入会し、かつ、同会議所内に支店を構えている。写真右は、ウクライナ商工会議所ヴィクトル・ペトローヴィチ・ヤノーフスキ副所長

サードウェーブグループは、ウクライナの商工会議所に数少ない日本企業として入会し、かつ、同会議所内に支店を構えている。写真右は、ウクライナ商工会議所ヴィクトル・ペトローヴィチ・ヤノーフスキ副所長

尾崎社長の熱意を感じたウクライナの関係者たちは、自らが経験してきたことや研究してきたことなどを日本に伝えたいと考えたのだろう。通常では考えにくいことだが、サードウェーブグループは、ウクライナの商工会議所に数少ない日本の企業として入会。同会議所内の一室を借りて支店を設立することができたのだ。ウクライナ支店で有識者や関係各社とタイムリーに情報交換できる体制を整えた上で、放射能測定器を日本で販売するという仕組みが作られた。
 帰国した尾崎社長は社員に自分の想いを伝え、6月には放射能測定器関連の販売や情報提供を行うための部署として安全環境事業部を設立した。安全環境事業部は、単に販売をするだけでなく、放射能に関する情報発信を行うことも目的としていたため、専門の資格を有しているスタッフや販売ルートに習熟したスタッフを加えたチームも編成された。
 サードウェーブグループは「人をつくり 価値を生み出し 社会に貢献する事業を行う」という経営理念を掲げている。環境問題への関心も高くCO2削減にも積極的に取り組んでいる。そのため、安全環境事業部の創設と新たな事業への進出は、社員に自然に受け入れられた。

ウクライナ支店の活動

ウクライナ支店では、放射能に関する有識者等との情報交換もなされている。写真はウクライナ国立アカデミーでの会合

ウクライナ支店では、放射能に関する有識者等との情報交換もなされている。写真はウクライナ国立アカデミーでの会合

ウクライナ支店にウクライナ語のわかる人材が派遣されたのは7月のことだった。ウクライナ支店は、放射能測定機器メーカーとの交渉以外に、外部貢献の一環として日本から勉強のためにウクライナへ行く議員たちのコーディネーター業務も引き受けている。勉強のためには原発関連施設の視察だけは不十分であると考え、現地の学校や市場での取組みなども視察のプログラムに含めている。
 メールやテレビ会議、電話など、海外から情報収集する方法はいくつもあるが、情報を正しく収集するためにはやはり自分の目で見て、直接話をして、思いを共有することが必要だと考えている。それだけでなく、日本の情報をウクライナの関係者にタイムリーに伝えるためにも支店と常駐スタッフが必要だった。
 放射能測定器メーカーとの取引においては苦労もある。放射能測定器は受注生産だが、納期通りに納品してもらえなかったことがあった。また、日本とウクライナでは機器に関するガイドラインが異なるため、改善案を出すこともあるが常に説明を求められ、なかなか受け入れてもらえないこともあった。
 ウクライナでのビジネスは顔を合わせていないと信用してもらえず、商談が進みにくいという。現地スタッフがいることでメーカー担当者とも頻繁に打ち合わせできる。文化の違いや商慣習の違いを埋める役割も果たしており、支店開設でウクライナの関係機関とのパイプは一層太いものとなっている。

日本での事業展開

原発由来の放射能を判定するためには特殊な機器が必要だ。安全環境事業部ではウクライナのメーカーと独占契約を締結し、土壌や水、食品中に含まれる放射性物質を測定する放射能測定器や空間線量測定や物品の表面汚染検査のためのガイガーカウンターやサーベイメーターなどの販売を開始した。
 放射能測定器は他国でも製造されているが、研究用が多い。ウクライナのメーカーの機器は民間レベルで活用できるものだ。ウクライナでは市場にラボが併設され、オペレーターが市場の商品の放射線量を測定している。その検査で合格しなければ市場で販売することはできない。
 検査に合格した食品には認証シールが貼られる。ウクライナでは、市場に並ぶ食品の多くが地元産だ。そのため毎日販売前に検査を行っているという。
 被ばくには、外部被ばくと内部被ばくがあるが、放射能性物質が含まれている食品を摂取した場合に起きるのは内部ひばくだ。市場に流通させる前に検査することの意味は、この内部被ばくを防ぐことである。食べ物から放射能を体内に取り込んでしまうことがあるため、定期的な検査が必要であるということには社員も驚いた。ウクライナから得た情報で知ったのだ。
 機器を購入するのは、食品管理や衛生管理をしなければならない食品加工会社や市民団体などだ。中には子供の健康を心配する医者が購入し、病院に設置して測定できる環境を整えているケースもあるという。

被災地の市長からの依頼により、市職員に対し放射線測定方法の指導なども行っている

被災地の市長からの依頼により、市職員に対し放射線測定方法の指導なども行っている

放射能に関する情報発信の一環として、ウクライナの商工会議所のメンバーや研究メンバーを日本に招いて講演を行ったり、現地の様子を理解してもらうために彼らと福島を訪れたりしている。
 社員がボランティアとして機械を持参し、民家の除染活動を支援している。安全環境事業部のメンバーは、ウクライナのキャンプで半月ほど講習を受け、田畑や土地の放射線量の正確な測定手法を学んでいる。
 被災地の市長からの依頼により、市職員に対して測定方法の指導やフィールドワークを行っている。また、評価後の対応についてもアドバイスを行っているという。
 セミナーには、食品衛生管理者や経営者などさまざまな人が参加している。サーベイメーターを納入した公的機関では、使い方を指導するためのセミナーを全国で開催している。

ウクライナ支店を設立してから2年が経過したが、日本で事業を手掛けることによりウクライナの企業が気づいていない技術があることを知った。日本で培ったノウハウや技術をウクライナで広げることにも着手したいと考えている。
 国内においても、がれき処理や中間処理場施設などいまだ多くの問題を抱えている。サードウェーブグループは、これからも社会貢献の理念に基づき、国内外の課題解決に取り組んでいく。

企業データ
企業名 サードウェーブグループ
代表者 尾崎 健介
所在地 東京都千代田区外神田2-14-10
業種 小売業(放射線測定機器販売、コンピューター機器販売)、製造業(コンピューター機器製造)

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