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第19回 海外初展開で最高峰に挑む[ファクトリージャパングループ]

2013年4月 2日海外進出

整体事業を全国にチェーン展開するファクトリージャパングループ。直営サロン148店舗以外にフランチャイズ展開も行っており、美容クリニックや外食なども手掛ける。サロン事業の根幹となっているのは、子安裕樹社長が独自に構築したAPバランス技法だ。その技法は、頸椎と腰椎のバランスを調整することで人間の体幹や四肢のバランスを整え、結果として痛みの緩和などの効果をもたらすものだ。
 2011年の台湾出店を皮切りに、タイ、フィリピンと次々に海外展開を進めてきた同社の子安社長、田中副社長に話を聞いた。

海外は夢のステージではない!

すでに海外との距離感は近い。特にアジア諸国は国内の他県と同じ感覚だと子安社長は言う。海外展開は特別なものではない。サービスを提供するのは同じ人間である。そして、海外展開の理由は、労働賃金が安いなどというものではなく、「アジア諸国の国民に対して日本と同じサービスを提供したい」という強い想いだった。
 日本人の良さは、創意工夫をしながらコツコツと技術革新することだ。正確で忍耐強いし、サービス力も高い。それは例えばねじ製造でも整体でも同じだ。整体とは、人の関節を数ミリ単位で調整するという手先の技術であり、これはある種のテクノロジーである。日本人のホスピタリティやマナーを含めて自社の業態も輸出できるのではないか。「メイドインジャパン」は世界的な評価は高いが、自分たちの技術はどこまで通用するのか。そう考え海外展開を決めた。

台湾の現地店舗

台湾の現地店舗

最高峰に挑む

2011年に海外展開を果たした最初の国は台湾であった。日本に近いよその「県」であり、他の国と比較しても日本文化に共鳴してもらえているのでやりやすいのではないか、と考えたのがきっかけではあったが、特にアジア圏でも台湾とタイは「体をメンテナンスする」ということが日常生活に入り込んでおり、そのレベルは最高峰であるという。
 日常生活に入り込んでいるだけに、出店時のハード面でのハードルは低いと感じていたが、技術・サービス等のソフト面では難しい点があることが予測された。トライアルとしてチャレンジしてみようという気持ちと競争相手の多い中で苦しむことの両面について考え、最終的に海外展開を決意した。競争相手も多い台湾でチャレンジしたい。ここで成功すればどの国でも成功するのではないかというのが台湾展開の決め手であった。
 台湾の店舗の仕様は日本とさほど変わらない。20-40坪程度のスペースでベッド数は6-15台程度。ベッド数×1.5倍のスタッフを配置するのが標準モデルであるため、常時10名程度のスタッフが待機している。
 店舗の内装はクリーンで明るいイメージ。個室ではなく、立てば周りを見渡せる程度の高さのパーテーションで仕切ったスペースで施術している。
 利用客の男女比は、日本が4:6であるのに対して、台湾は1:3と圧倒的に女性の利用客が多い。20代前半の女性客も来店するが、40-60代が中心だ。台湾の1店舗だけだが、ある店舗には日本からの観光客も来店するという。その店舗での日本人観光客の売上は、店舗全体の20%にも達するというから驚きだ。
 また、台湾では日本よりも継続率が高い。初めて来店した客が2回目に来店する確率は日本では60%程度だが、台湾では80%にも上る。リピーターの来店頻度は月に1.5日程度だという。ボディ・メンテナンスの一環なのだろう。
 台湾での展開を山登りに例えてもらった。最初はなだらかだったが、途中からの急こう配が苦しく感じ、あきらめかけようとしたが前進し、ようやく7-8合目くらいに到達したという状況だという。険しい道の歩き方にも慣れ、台湾という山の頂上は見えてきた。
 富裕者層を狙ったビジネスをしているわけではなく、中間層の生活に根付いたサービスをぶつけてきた。頂上に立ったら今度はどう仕組化していくかだが、これが成功すれば面で展開できると確信している

海外展開成功のキーワードは「事業の再現性」

台湾の現地スタッフ

台湾の現地スタッフ

中国で飲食業を手掛けた経験をもつ田中副社長は、さまざまな日本企業の失敗を見てきたという。メーカーとして海外展開し成功している企業は多いが、サービス・小売で成功しているケースは非常に少ない。その理由は「事業の再現性」にあると田中氏は断言する。
 海外で成功するためには、日本で成功しているビジネスモデルをいかに再現できるかが重要だが、実はサービス・小売では再現しにくいという。例えば、中国でラーメン店を開業したとする。スープを取るために取り寄せる豚骨の品質が毎日異なるため、同じ作業を行っても毎日同じ味を出すことが非常に難しいというのだ。これは商品の品質が再現しにくいということである。
 また、従業員のサービス品質も日本と同じレベルで再現するのは非常に難しい。しかし、それら2つの要素を再現できれば、日本国内よりも大きなマーケットを持つ海外事業で成功する可能性は高い。
 この「事業の再現性」という視点で整体事業をみると、ベッド1つ、極端なことを言えば床でも施術ができる。すなわち、原材料ゼロのビジネスであるため、原材料の質の差が商品・サービスに影響することはない。
 しかし、日本の高いサービス品質をそれぞれの国において再現するのは困難だ。それに、サービスを提供される側もそこまで高いサービスを求めているわけではない。その意味からサービス品質を再現するという点では苦労したという。
 ファクトリージャパングループは3年間で15か国に展開する計画だが、指導者を育成するためにまずスクール事業を手掛けている。施術で高い満足を与えるにはコミュニケーションが非常に重要であり、カウンセリングしながら施術をするというのが同社の施術の特徴である。悪い個所や考えられる原因、改善のポイントなどについて施術しながら利用客に指導する。寝てしまう利用客もいるリラクゼーション系マッサージとは大きく異なる。
 施術前に症状や体調を確認し、1つの施術が終わるたびにその効果測定を行うという日本の店舗のサービス品質を再現するために、日本から派遣される指導者は技術だけではなくトークも教えるのだ。現地の患者になじむトークの開発には時間がかかるが、日本のマニュアルをベースに各国で対応できるよう取り組んでいる。
 施術と同じくらいに重要なのがカウンセリングであるため、形から教えるために基本的なトークを丸暗記させる。マッサージは施術者によって品質にぶれが起きやすいが、整体は骨格に直接コンタクトするので施術効果で大きなブレは生じにくい。技術は訓練するほどレベルアップするため、サービス面での教育に時間をかける。日本と同じようなサービスを提供できる人材を育成するために躾から行う。
 指導する上では明確な賞罰と的確な指示が必要であるが、指導する側もお金や時間などに関する約束は必ず守らなければならない。海外店舗のマネージメントは現地の人材が行うのがベストだと考える。技術の半分はトークなので、今後は現地のマネージャーにトークの現地適応化をさせることを考えている。これができれば、日本から派遣した教育スタッフは定期的なチェックだけで済むようになる。
 最近、フィリピンでは地元大手企業がフランチャイザーになったが、1名の日本人スタッフを派遣し、開業までの2カ月間で人材育成を行っている。すでに1店舗がオープンしているが、2店舗目、3店舗目のオープンも決まっている。スピーディな事業展開は指導者を育てているからこそできることである。

一気に海外展開を加速

タイの現地スタッフ

タイの現地スタッフ

現地の人材に日本の技術を伝授するのは、非常に時間もかかり苦労もあった。一方で指導することにより、変わることにも気づいた。そういう意味では、海外展開したこの3-4年で得たものは大きい。出店した国の文化や人間性を加味しつつ、自社のやり方を浸透させていくことができたのは成果だと子安社長は考えている。
 日本において、ホスピタリティやサービスの伝授を軸とした人材を育成するノウハウを積み上げてきた。創業12年で海外展開の体制は整った。海外出店にあたっては各国の資格も必要であるが、合弁会社などを設立することでクリアできる目途が立った。 日本は手厚い医療制度のおかげで安価に医療が受けられるが、海外は医療費が高いため自分の体を自分でケアするという文化がある。海外には整体はないが、ボディケアに対する需要は多い。中華圏の人たちは、家族全員でボディケアに通うこともある。ボディケアは生活に密着しているのだ。
 そこで、これからは一気に出店を加速させたい。現在は台湾、タイとフィリピンに事業展開しているが、今年中にはシンガポールにも展開し、台湾と合わせてアジアのショールームにしたいと考えている。来年は上海、インドネシア、マレーシアへの展開も考えている。
 現在はアジアの展開が中心だが、マーケットの大きい北米にも魅力を感じている。2015年度には1号店を出店する計画だ。カイロプラクティックよりも受け入れられるのではないかと考えている。
 加えて海外の大手企業から、事業への取組みについての問合せがあるという。特に海外向けにアピールしているわけではないとのことだが、インターネットがあればどの国からでも情報収集は可能だ。注目されているのはボディケア事業の将来性の高さもあるのだろうか。中国、マレーシアといったアジア圏だけでなく北欧からも問合せがあるという。

一気に海外事業展開を加速させるファクトリージャパングループ。世界中のどの国でも同社の店舗を目にする日が来るのもそう遠くはないかもしれない。

企業データ
企業名 株式会社ファクトリージャパングループ
代表者 子安 裕樹
所在地 東京都千代田区麹町3-10-1
業種 サービス(整体サロン運営、スパサロン運営、広告代理店事業、飲食事業など)

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