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第12回 話題の国ミャンマーで、異業種での進出を図る[三生技研]

2012年12月17日海外進出

三生技研は、井口久生社長が27年前に創業した、建築実験の支援業務を行なっている会社だ。建築に使う建材等は試験にかけて、国が定めた品質をクリアしなければならない。三生技研はその実験を行うにあたっての必要な準備などを請け負っている。主として大手ゼネコン、建材メーカーからの依頼で業務を行なっている。耐震偽装事件などがあったことから、建築に対する品質要求は高まっており、仕事はコンスタントにあるという。

三生技研本社

三生技研本社

ミャンマーでの10年以上に渡る試行錯誤

そんな三生技研がミャンマーへの進出を進めている。井口社長がミャンマーに初めて行ったのは、今から15年ほど前だ。東京商工会議所に勧められて、視察ツアーで行ったのがミャンマーとの出会いだ。当時のミャンマーは世界から経済制裁を受けており、活発な経済活動はなされていなかった。しかし、当時のミャンマーを見て井口社長は「日本が忘れてしまった素朴な雰囲気や、ミャンマー人の素晴らしさが印象に残った」と言う。経済状況を考えれば、「本業で進出できるかどうかと言えば無理だと思った。でも、ミャンマーとは継続して関係を持ちたいとも思った」と振り返る。

その後、何度かミャンマーに行き、なにかビジネスはできないか?と考えた。いろいろ調べると、ミャンマーは「農業国」だとわかった。製造業が中心となる経済発展の前段階だから、国民はまず「食べること」が最優先だ。現地の青果市場や商店に行ってみると、売られている西洋野菜は萎びた物も多く、見た目に新鮮とは言いがたかった。そこで現地で西洋野菜を作ってみようということになった。
 志が同じ日本人経営者がいて、ジョイントベンチャーで野菜栽培をスタートした。具体的に何を作ったのかというと「長ネギ」だ。これは現地の日本人を中心に大変好評を博した。しかし、その後、野菜の種類を増やそうとしたのだがうまく行かず、事業を撤退することとなった。
 その時、井口社長が感じたのは「人の問題」だ。小作農である農業従事労働者は仕事に対してモチベーション高く取り組むということが不慣れであると感じた。作物であれ工業製品であれ、それを生産するのは人間で、生産に取り組む人間の意識が高くなければよいものは作れない。ミャンマーはまだその辺りが難しかったのだ。

いったんはミャンマーから事業は撤退したが、井口社長とミャンマーとの関係は続いていた。たとえば、奨学金を通じてミャンマーの子供達の就学支援を長年行なっている。
 「月々わずかな金額ではあるが、私が出した奨学金で勉強意欲の高い子供たちが、より良い教育を受けることができる。その子たちが一生懸命勉強して、将来のミャンマーを支える人材になればいいと思っている」

ミャンマーでのビジネスチャンス

「現在のミャンマーはとにかくビジネスのスピードが早い」と井口社長は言う。長年ミャンマーとの関わりを持ってきた井口社長のもとには、現地の企業経営者からよく「こういう話があるが、一緒にやらないか?」とビジネスチャンスが持ち込まれる。

たとえば「日本車の輸入ビジネス」の相談をされたことがあった。ヤンゴン市内を走っている車のほとんどが日本の中古車、と言ってもいいくらいよく日本車を見かける。日本の中古車の人気は高いのだ。そこに目をつけた現地の社長が「よい品質の日本車を輸入したい」と持ちかけてきた。井口社長はさっそく日本側で中古車輸出の準備を始めた。「準備に2カ月くらいはかかる」と相手の社長に伝えると、嫌な顔をされた。後からわかったのだが、嫌な顔をした理由は「2カ月も待っていられない。すぐにやってくれないと困る」ということだった。

井口社長はミャンマーとのビジネスに関して「とにかくスピードが大事。意思決定を速やかに行なって、アクションを起こせるかどうかが重要なポイントだ」と言う。中古車輸入ビジネスではチャンスを逃してしまったが、その失敗を取り返すべく、現在、自動車修理工場と修理部品の販売を手がけようと準備中だ。また、その延長線上で建設機械や農業機械の修理ビジネスも展開しようとしている。
 ミャンマーで中小企業がビジネスをやるメリットについて、井口社長はこう語る。
 「乱暴な言い方だが、数億円くらいの規模のビジネスは日系大手商社にとっては商売のうちに入らない。でも、中小企業にとっては非常に大きなビジネスになる。ビジネスチャンスは数多くあるので、中小企業がスピーディーに対応できるならば、そういったチャンスをものにすることは可能だ。こんなに面白い環境はない」

同時に「注意しなければならないこともある」と言う。
 「法律などは、まだ細かく成文化されていない。この点は困っている人も多いようだ。ではどんな解決策があるかというと、『やってみるしかない』ということになる。現地法人を作って日本とお金のやりとりをどうすればいいのか?といったことも、弊社では現地の銀行と相談しながらやっている。試行錯誤してやっていると『こうやればいいんだ』という確実なやり方が見えてくる。そのやり方は、後からミャンマーに進出してくる日本企業の参考にもなると思う」

工場内にはさまざまな建材がある

工場内にはさまざまな建材がある

本業の建築分野での進出はどう考えているのだろうか? 「本業で進出する時期についてはすぐには難しい。建物の建て方についての考え方が、日本とミャンマーでは、まだ大きく違うからだ。遠くない将来に弊社でやっているような建築関係の実験支援サービスが必要になる時期は来ると思うが、今すぐではないだろう」と答えてくれた。
 しかし、前述の修理工場の事業立ち上げだけではなく、井口社長には他にも事業構想がある。
 「それは農業化学の分野。過去に農業は一度失敗している。失敗したがゆえに、この業界のことがよく分かった。消費者のニーズなどを考え、今一度農業関連でビジネスを立ちあげたいと思って、現在準備に取り掛かっている」

本業とは全く違う分野での展開に取り組んでいる井口社長だが、「どれもこれも実験的な要素がある。弊社はもともと『実験屋』。だから私の中ではあまり違和感はない」と語る。
 これからますます経済発展が期待されるミャンマーで、井口社長の異業種でのチャレンジは続く。

企業データ
企業名 三生技研株式会社
代表者 井口 久生
所在地 埼玉県吉川市旭6-1(東埼玉テクノポリス内)
業種 サービス(建築資材評価支援)

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