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第8回 まだ注目されていない国にこそビジネスチャンスがある[トライアジアグループ]

2012年10月15日海外進出

トライアジアグループは、カンボジアにオフィスを構え、2012年11月に首都プノンペンでの飲食店オープンを目指している企業である。横井朋幸CEOに話を聞いた。

勢揃いした社員と店舗スタッフ

勢揃いした社員と店舗スタッフ

日本の中小企業こそ海外に進出するべきだ

横井社長は22歳の時に札幌で起業し、3年ほど事業を営んでいたが、その後、社会保険料のコストダウン事業に取り組み、東京への進出も果たした。札幌で起業した頃から、横井社長の中には海外進出の考えがあった。「少子化が進む日本経済がこの先縮小傾向であることは自明だ。また、日本では、多くの大企業がマーケットを押さえているため、起業から成長を遂げるにはニッチ産業を狙うしかない。しかし、これから経済成長を迎える海外に行けば、ニッチではないビジネスで起業できるのではないか」。このように横井社長は考えていたと言う。
 そこに2011年3月11日の大震災が起こった。震災後の数カ月、横井社長は自らの進むべき道をあらゆる方向から考えたという。そして「今こそ海外進出を図るべきだ」という結論に至った。同時に、東京でそれまで営んでいた事業を売却することにした。
 「東京と海外の二足のわらじではなく、海外で勝負をしようと考えた。現地に行けば、東京と現地を行き来している人と、現地で勝負を賭けている人のどちらが信用されるか。その答えは明らかでしょう?」
 海外進出の資金は、会社を売却して得た金で充分賄えると考えた。震災後の状況もM&Aにはプラスに作用した。しっかりと収益の出ていた会社だから、スピーディーに買い手が見つかったのだ。そして2011年末に売却が完了した。

なぜカンボジアに進出するのか?

進出すべき国はカンボジアに決めた。もともとアジアのどこかに進出したいと考えていた横井社長が結論を出すまでにそれほどの時間はかからなかった。2009年にカンボジアの首都プノンペンを訪れたことのある横井社長は、2011年11月に再びプノンペンを訪れた時、その発展ぶりに驚いた。
 「私が話しても信用してもらえないのですが、プノンペンには東京のタクシーを見かけるのと同じくらいレクサス(高級車)が走っているのです。ビジネスで儲かっている人はもちろん、土地の値段が上がり続けているので、それを外資などに売却して富を得た人たちが増えているのです」
 「しかし、日本人のカンボジアに対するイメージはいまだに内戦、地雷、アンコールワットくらいでしょう?海外進出というと数年前の中国、今ならタイ、ベトナム、ミャンマーあたりが流行でしょうか?カンボジアという名前が出てくることはまだ少ないでしょう。内戦や地雷といったネガティブなイメージを持っている人がまだまだ多いのです。しかし、調べてみると、外資規制が非常に緩やかであるとか、国内の貨幣流通量の9割がドルであるとか、人口動態を見ても平均年齢が23歳で戦後の日本の人口動態に似ているとか、これから海外でビジネスを立ち上げようという人にとっては、非常に魅力的なことが分かりました。まだそれほど注目されていないことも、中小企業が進出するには追い風だと考えました」
 特に人口動態については、ビジネスをする上においてはしっかりと見なければならない視点だと横井社長は言う。
 「カンボジアで言うと、23~24歳がいわゆる第1次ベビーブーム世代。そして彼らがまさに結婚する時期を迎えている。つまり、これから第2次ベビーブームがやってくるということ。大きなマーケットが2つ生まれつつあるのがカンボジアなのです。ここにターゲットを定めてビジネスをやろうと考えました」

プノンペンで立ち上げるのは飲食店

さまざまな角度から事業展開を検討した結果、横井社長は飲食店をやることに決定した。カフェとしても使えるし、食事もできてお酒も飲める「高級感のあるカフェレストラン業態」だ。横井社長は「飲食というものは地場に根ざすものだから、今から始めればカンボジアというマーケットを押さえることができるのではないか」と考えている。
 「我々がやろうとするカフェ業態を見ると、スターバックスはまだカンボジアに進出していません。オーストラリアが本拠地のグロリア・ジーンズというコーヒーチェーンはまだ3店舗しかない。プノンペン最大のカフェチェーンと言われるブラウンは4店舗です。そんな状況なので、今からスタートしても我々がスピード展開を行うことで、大きなシェアを取ることは十分に可能だと考えています」
 横井社長の目論見はしっかりとした計算に基づいている。
 「たとえば、店舗取得や施工にかかる費用は日本の4分の1くらいのイメージで、家賃はそれ以上に安い。安いコストで、日本で言えば表参道や青山のような超一等地が借りられる。人件費は1人あたり1カ月1万円もしません。それなら売上も安いのでは?と思われるかもしれませんが、コーヒー1杯が3ドルで売れるのです。日中の客単価は3ドル、夜は7ドルをイメージしています」
 飲食業ではFL比率と言われる数値がある。売上に占めるF(フード=材料費)とL(レイバー=人件費)の割合を示す数値だ。飲食業の業態によって数値は若干上下するが、一般的にはFL比率が60%を切っていると、売上もきちんと上がってコストコントロールもできている状態と言われ、数値が55%を切ると「非常にうまく運営できている」状態だと言われる。横井社長がオープンするプノンペンの店舗では「FL比率は25%くらいになると見込んでいます。もちろん、売上はかなり固めに読んだ上での数字です。それくらい高収益なので、オープン後4カ月間で投資回収できると見込んでいます」。
 これらの数字は飲食業を営む経営者が聞いたら、にわかには信じがたい数値だ。その理由を横井社長は語る。
 「来店客は地元の富裕層と海外からの観光客を想定しています。観光客は2000年で10万人でしたが、2010年に250万人まで増えました。カンボジア観光省は2020年までには750万人まで伸びるだろうと予測しています。まさに爆発的な増加です。観光客はそれなりの金額を払ってくれますが、首都プノンペンですら観光客の受け皿になるカフェやレストランがまったく足りない状況なのです」

中小企業にとってのカンボジア進出

オープンを間近に控え準備が進む店舗

オープンを間近に控え準備が進む店舗

カンボジアは他のアジア諸国と比べるとマーケットが小さいのではないか?と尋ねると、横井社長はこう答えた。
 「海外で一から事業を立ち上げるにあたり、国の大きさは実はあまり関係がないと思っています。逆に、それなりに大きなマーケットのある国は大手企業も目を付けていますから競争が激しくなる。中小企業にとっては実は厳しいのです。しかし、カンボジアのような国はこれからさまざまな産業が立ち上がってくる状況なのに、大手企業はほとんど進出していません。私は勝手に、今のカンボジアは昭和30年代の日本と同じだと言っています。ここからさらに経済が成長していくのです。中小企業が活躍できる場はとても大きいと思います」
 横井社長の飲食店は1店舗では終わらない。すでに決定しているものだけで、2013年度中にさらに6店舗の出店を決定している。
 「もちろんその次の展開も考えています。ベビーブーム世代向けの業態も考えています。また、カンボジアでもようやく証券取引所が開設されました。我々は株式上場も目指します」
 現地で働く人材はどうやって採用したのだろうか?
 「社員は私以外に11名います。全員が新規採用です。5名が日本人で6名がカンボジア人。ほとんどが20代半ばの若い社員です。日本人社員は大手メーカー、都市銀行、大手外食企業出身と経歴はバラバラです。私が言うのもなんですが、みんな優秀ですよ」
 今回採用活動をしてみて横井社長が感じたのは、「若い社員に対してワクワクするようなキャリアを提示できない大企業の問題」だ。
 「狭い日本にとどまらず海外で挑戦したいと思っている若い子はたくさんいるのです。しかし、そういった非常に前向きな若い社員のヤル気を活かすキャリアを提示できていない」
 「そんな状況でくすぶっている若者が膨大な数いるのではないか」と横井社長は言う。
 今回の社員募集に際し、応募してくる人間のヤル気を見ようと思い、今年5月、採用説明会をプノンペンで開催した。
 「当社で働きたければプノンペンの説明会に来て下さい、ということですね」
 結果、説明会には8名の若者が日本からはるばるやって来た。
 「どの子も非常に優秀で、海外で自分の力でチャレンジしたいという気持ちを強く持っている。日本人が苦手な外国語も、英語ならまったく問題ありませんでした。こんなに優秀な人材が集まるのか!とびっくりしました」

カンボジア進出のリスクと、今後について

横井社長に、カンボジア進出に関してどんなリスクがあるのか、を聞いた。
 「実は中小企業の海外進出は非常にリスクが低いのです。リスクの中で最大のものは『お金を損する』というリスクですが、先ほど申し上げたようにカンボジアの物価は非常に安いため、同じ事業を日本でやる時の数分の一の投資で済みます。ですから、仮に事業がうまく行かずに撤退することになっても、痛手は小さい」
 「それだけではありません。カンボジアのお金はドルが主体であり、海外への持ち出しもやりやすい。簡単に国外にお金を持ち出せない国はたくさんあります。また、弱い現地通貨となると不安定な為替リスクがありますが、ドルならそのリスクも下げられます」
 海外進出しやすい業態について尋ねると、「一般消費者向けの業態は可能性があると思います。私達がやる飲食業においては、カンボジア向けにローカライズしない方が良いと考えています。カンボジアは親日的な国なので『日本から来た』『これが日本のスタイルだ』と正面から勝負した方が良いと思います」と答えた。

今後の展開について語る。
 「私達の事業は11月オープンのカフェレストランが基点となり、横展開として、飲食の他業態への展開を考えています。また、飲食店だけではなく、たとえばコーヒー豆の生産にも乗り出したいと考え、すでに準備を始めています。カンボジアは良質なコーヒー豆の生産地なのです。コーヒー豆農園を自ら運営して、そこで採れたコーヒー豆を自社のカフェレストランで使い、海外へも輸出したいと思っています」

何もないところから1人でカンボジアに乗り込み、一緒に働く人材をいちから採用し、今まさに事業を立ち上げようとしている横井社長。数年後にカンボジアで株式上場することも視野に入れ、猛烈なスピードで事業を展開していくことだろう。

企業データ
企業名 Triasia Group
代表者 横井 朋幸
所在地 No.198, St51 Corner St.370, Sangkat Boeung Keng Kang I, Khan Chamkarmorn, Phnom penh, Cambodia.
業種 飲食業

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