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第4回 現地ユーザーの声を聴くことの大切さ[セラコート工業]

2012年7月 2日輸出

中国、インドから本格的に海外展開を始めたセラコート工業

中国、インドから本格的に海外展開を始めたセラコート工業

セラコート工業株式会社(以下、セラコート)は、1971(昭和46)年に創業した「はんだごて」のコテ先専門メーカーである。とくに、「産業ロボットはんだ付け自動機用コテ先」の市場占有率は80%を超え、業界第1位を誇る。まさに「キラリと光る日本の中小製造業」の典型と言える会社だ。

セラコートが海外進出を考えたきっかけはひょんなことからだった。多くの企業がインターネット上にホームページを開設し始めた2003年、セラコートも独自のウェブサイトを立ち上げた。すると、海外に進出した日系企業の現地工場の責任者からメールで問い合わせが入った。当時の様子を北見取締役は以下のように語る。
 「そのメールは当社のコテ先を使ってくださっている工場からのもので、消耗品であるコテ先が使えなくなり補充したいのだが現地の販売代理店に在庫がなくて困っている、というものでした。他にもセラコートのコテ先は値段がとにかく高い、もう少し安くならないかという値引きの依頼も複数社からありました」
 コテ先の価格が高いという話を聞き、北見取締役は詳しく値段を聞いてみた。すると、同社が販売代理店に卸している価格の5-10倍でコテ先が売られている事実を知らされた。
 「高いところだとそれ以上の価格で売られていました。当社はエンドユーザーがどんな方なのか、そして当社の商品をいくらで買ってくれているのかを知らなかったので、その事実を知って衝撃を受けました」
 エンドユーザーの顔が見えていないメーカーは多い。
 「当社もビジネスで直接相手をするのは大手メーカーや販売代理店・商社ばかりで、自社の商品がどのように売られているのかを知らなかったのです。流通コスト等が商品価格に上乗せされるのは当然なのですが、とはいえ当社が販売した価格の10倍にもなっているとは思いもしませんでした」
 さらに外国企業のユーザーからはこんな要望も受けた。
 「当社と直接取引をして欲しい。わが国に進出は考えていないのか? ニーズはあると思う」

海外ユーザーの声を直接聞こう

これらユーザーの声(現実)を知ってから、北見取締役はじめセラコートの経営方針が変わった。まず海外のユーザーの声をしっかりと聞こうと考えた。セラコートのコテ先は、日本をはじめ各国の製造業で使われている。世界を見渡せば、大きな経済成長を遂げている国は多い。経済成長を遂げているということは、その国の製造業も大きく成長しているということだ。つまり、セラコートの商品が使われるマーケットが日々拡大している、ということを意味する。
 「日本国内だけで商売をしていてもさらなる成長は見込みづらい。しかし経済成長が始まった国では当社の商品を使う製造業が伸びている。このビジネスチャンスをしっかりと掴もうと考えたのです。そのためにはお客様を知らなければ海外進出はできません」
 そう考え、まずはエンドユーザーの声を聞くための手段として2009年、中国上海で開催されていた展示会「Nepcon CHINA 2009(上海)」に参加することにした。中国ではコテ先の需要が増えており、セラコートとしてまず押さえるべきマーケットと考えたからだ。
 この展示会への出展を皮切りに、中国以外も含め延べ13回の展示会に出展した。すると予想以上の反響があり、今まで聞けなかったユーザーの悩みや要望を聞くこともできた。
 「それは本当に貴重な情報でした。展示会への来場者の中には、ぜひ中国に進出すべきだと熱心に語ってくれた会社が何社もありました」

セラコートは展示会で生まれた人脈などを使い、各国の製造業の現場を視察することにした。中国・上海はもちろんのこと、大連や深セン、そして香港、台湾、韓国、マレーシア、タイ、ベトナム、インド、北米など、北見取締役が訪問した国は最近1年間で7カ国にのぼる。
 「展示会ではさまざまな情報が得られるのですが、とはいえ時間的にも限りがあります。そこで展示会で名刺交換した企業を中心に工場訪問をして、当社の商品がどのように使われているのか、製造現場でどのような悩みがあるのかを聞きました」

足と時間を使った調査の結果、北見取締役は本格的な海外展開先を絞り込んでいった。
 「どの国も経済成長を遂げているとはいえ、製造業の水準はさまざまでした。当社の商品をよく使ってくれる製造業は、ある一定以上の工業化が進んでいなければなりません。当社の商品がよく売れるという状況に至っていない国も多かったのですが、そういう状況も含め社内で検討した結果、中国とインドにマーケットを絞りやっていこうと決め、動き始めることにしました。今、中国では17社と新規の取引がスタートしています」

初めての展示会出展から数えて、わずか3年。短い間でここまでスピーディーに戦略を変更できたポイントを尋ねた。
 「中小企業であれば、社長が海外を知らなければ話になりません。最初の頃は私が海外に行っていましたが、すぐに当社の社長に依頼をして一緒に海外の展示会や視察に行ってもらうことにしました。そうやって最高責任者に現状の理解をしてもらうことで、会社としての経営戦略を一緒に考えることができたのだと思います。他社を見ていると、肝心の経営者が展示会に来ておらず、担当者が(トップの無理解に)困っている会社は多いですよ」
 また、アジア各国を見て回るなかで、日本の中小製造業の現状を振り返り歯がゆく感じることも多いそうだ。
 「中国をはじめアジア各国で製造業が伸びているということは、その周辺の中小の製造業も必要とされているということです。大企業1社だけで商品を完成させることはできません。ここに大きなビジネスチャンスがあります。情報収集をしっかりやるところから始めれば、どんな中小製造業でも海外進出は可能だと思います。確かな技術を持っている日本の中小製造業ならなおさらです」
 セラコートの海外展開は中国とインドからスタートしたが、それ以外の国への展開もすでに視野に入れて動き始めている。北見取締役の話からは、今後の展開が楽しみで仕方がない様子がよく伝わってきた。

企業データ
企業名 セラコート工業株式会社
代表者 安藤 昭一
所在地 神奈川県横浜市鶴見区江ヶ崎町5-5
業種 製造業(はんだごてのコテ先の製造)

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