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金子 卓也社長
もったいない精神。毎日、スーパーにはたくさんの魚が整然と並ぶ。大きさや数が揃って、見た目もキレイだ。その影で、消費者のニーズに形や数が合わずに廃棄、または養殖用の飼料としてタダ同然で消えていく魚が漁港にあふれている。だが、佐世保魚市場では、本来なら流通しない規格外の魚を有効活用して一般の食卓へと“よみがえらせている”。
佐世保魚市場は約6年前から雑魚(ざこ)と呼ばれる規格外や季節はずれの魚を使った加工食材を製造している。豆あじの場合、頭と内臓、うろこをとる。その後、たたき身にして真空パックで包装する。食品会社がたたき身を使った「お魚ギョーザ」を発売して学校給食の人気料理になっているという。

豆あじのたたき身を利用した「お魚ギョーザ」
魚市場には毎朝、漁師が狙った魚とは違う多種少数の「色物」が水揚げされる。知名度が低い魚や数がバラバラのため、色物が量販店に並ぶことは少ない。そこで佐世保魚市場は、色物のウロコや内臓をとって真空パックで包み「もったいないセット」として売り出したところ、自然食レストランを中心に引き合いが多いという。
一方、課題もある。魚の加工のほとんどが手作業のため、加工賃が高くつく。同社では冷凍機メーカーなどと共同で、加工ラインの機械化に乗り出した。
頭や内臓を取り除く1次処理から真空パック包装、冷凍処理まで一貫の自動加工ラインを導入した。既存のフィレーマシンや皮すき機、ヘッドカッターを利用。生産ラインの機械化によって、作業の効率化や鮮度の高い加工品の提供につなげる。
現在、豆あじはたたき身での販売が主。だが、鮮度を落とさない冷凍法を確立できれば、「下ろした状態で冷凍できるため、回転すし店などの大口需要がある」と、井上正人専務は連携事業に大きな期待を寄せる。

豆あじのたたき身の真空パック
また、販路拡大の戦略もある。当面は、国内の販売網を固める考えだが、中国やロシアからの引き合いも徐々に出てきた。10月には中国・北京で長崎県主催による県内の特産品などを集めた展示、商談会がある。佐世保魚市場も現地バイヤーとの取引を視野に入れて参加する予定だ。加えて「ロシアは刺し身の人気が出てきており、中国と並ぶ巨大マーケットだ」と位置付ける。中国は日本食への信頼が高いと見ており、海外事業の展開に大きな期待を寄せる。
卸売りである佐世保魚市場が、魚の1次処理にまで踏み込む理由は国内の小売店事情も関係する。経済産業省の07年商業統計によると鮮魚小売店は1万9,709店で、02年と比べて約6,000店も減少した。スーパーなど量販店に押され、統計開始以来、初めて2万店を割り込んだ。
顧客と対面する町の鮮魚店は、魚の量り売りや調理法をアドバイスするなど規格外の魚の受け皿となっていた。しかし、鮮魚店が減少を続ける今、規格外の魚は価格が10分の1にも下がっているという。
さらに近年の不安定な気象状況の中、漁獲高は年々変化している。限りある資源を有効活用する「佐世保の取り組みを“全国の浜”に広げていきたい」(井上専務)。
会社名:佐世保魚市場株式会社
住所:長崎県佐世保市相浦町1563
電話:0120-58-0343
URL:http://www.sasebo-uoichiba.co.jp/index.html
われわれが成功することで、生産者の保護につなげたい
井上正人専務
連携事業で、生産ラインの自動化を確立できれば大きなコスト削減が期待できる。中国だけでなく、ロシアも刺し身の人気が出てきている。この巨大マーケットへの進出は手続きが難しいなどの問題はあるが、現地商社と手を組み販路を開拓していきたい。今は価値観の違いで新鮮で味も確かな規格外の魚の市場価値が低くなっている。これが市場の現実だが、あくまで生産者あっての市場。今のままでは漁業の未来は厳しい。当社の取り組みの成功で、適正価格を保ち生産者の保護につなげたい。