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アイガモより首の長い「薩摩鴨」。水田や茶畑で働いて無農薬農法に一役買った後は食肉用に加工される。クラシック音楽を聴かせるのは肉質がよくなるためだという
鹿児島県曽於市。県の東部を形成する大隅半島の北部に位置する同市は、自然環境に恵まれているのが特徴。町中を抜け山林をくぐり抜けると、クラシックの音楽に合わせた鴨の鳴き声が聞こえてくる。通常の鴨よりも首が長い薩摩鴨が40ヘクタールの土地に約200羽放し飼いにされている。
日本有機は薩摩鴨を活用した薩摩鴨農法を推進。これは鴨を茶畑や水田などで放し飼いにし、鴨が害虫や雑草を食べることで農薬を使用しないという農法。また鴨のフンを肥料としていかすことで化学肥料も使用しない。食の安全・安心の関心が高まる中、完全有機栽培を実現する循環型農法だ。
薩摩鴨の魅力はこれだけに止まらない。野口愛子社長は「茶畑は鴨の飼育にとって最良の場」と表現する。放し飼いされた鴨は自然の中ですくすくと生育する。数ヶ月後、柔らかく引き締まった鴨肉となる。まさに育てて便利で、食べてもおいしい理想の鴨だ。

さつまいも澱粉を使った日本初の麺「さつまいも冷麺」。さつまいもが鹿児島に伝来した1705年からちょうど300年目にあたる2005年に発売を開始した
同社の歴史は「産学官連携の歴史そのもの」(野田社長)だ。もともと人や作物に優しい有機肥料の製造・販売を手がけていた同社。有機肥料の拡販を目指す中で、産学連携を推進し、業容を拡大してきた。
薩摩鴨もその一環だ。鹿児島大学農学部の萬田正治教授から技術移転を受け、97年に薩摩鴨の飼育、ひなの販売を開始。だが「設備も何も無いところからの挑戦だった」(同)ため困難を極めた。生き物という特性上、餌代も人件費も膨大にかかる。だが、「絶対にやり遂げないといけない」(同)という一念で事業化にこぎ着けた。今では31道府県、33万戸のアイガモ農法農家に薩摩鴨3万羽を出荷するまで成長した。
「さつまいも澱粉(でんぷん)で麺をつくりませんか」―。鹿児島県農産物加工研究指導センターから技術移転の依頼の電話が入ったのは04年のこと。「有機肥料が使える。また将来性もあって地域貢献もできる」。野田社長は直感で快諾した。
ただ、商品化には苦労はあった。それを乗り越え、日本初のさつまいも澱粉100%の冷麺の商品化に成功。つるっとした食感と222kcalという低カロリーが特徴でヘルシーな商品として販路も広がっている。

いまでは日本の種苗会社が新品種の開発や種苗の生産の主導権を握っているといわれるトルコギキョウの生産にも着手している(花色遺伝型交配法による種子生産体系の構築研究)
野口社長は「小さな企業の大きな夢物語」と表現する。会社の指針は「ココロ・カラダ・環境にやさしいモノづくりを目指して」だ。事業が拡大する中でも、その指針にブレはない。
また国内に止まらず海外も見据えている。シンガポールを始め、トルコ、台湾などの海外展開も推進し、タイの国立大学、カセサート大学とは10月をめどに共同研究を始める。薩摩発の文化を世界に。地域に根ざした循環社会の実現という理想に向けて今日もまい進している。
会社名:日本有機株式会社
住所:鹿児島県曽於市末吉町諏訪方4122
電話:0986-76-1091
URL:http://www.e-kamo.co.jp
産学連携で業容の拡大と成長をめざす
野口愛子代表取締役社長
心のこもった本物の商品作りに心がけています。当社の歴史は産官学連携の歴史そのものです。産の人脈、官の情報収集力、学の知識。常にニーズを情報発信することで出会いがある。これまでの事業も自然に形になっていきました。
ただ技術移転を受けたものもすべてが簡単だったわけではありません。技術移転を受けたからには簡単にはやめられない。私の気質として放り出せませんでした。結果として苦労してでも、ものにしています。しがらみのない素人の強みかもしれません。
環境や食の安全・安心に注目が集まる中、今まで通ってきた"道"は間違っていなかったと自負しています。これからも歩みを続けていきます。