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水田の一角に設けられたホンモロコ養殖池
鳥取県で、体長約10cmのコイ科淡水魚「ホンモロコ」の生産量が増えている。平成19年度は約5tを収穫した。元来は琵琶湖固有種だが、外来魚増加の影響などで激減している。
養殖事業の中心となっている人物が、内水面隼研究所の七條喜一郎社長だ。2005年3月まで鳥取大学助教授を務め、魚類研究に取り組んでいた七條社長は、大学近くの湖山池で漁獲量が減少しているワカサギの代替としてホンモロコに着目した。生態系に与える影響を懸念し湖山池への放流は実現しなかったが、「米の減反政策や後継者不足で生じた休耕田を、養殖に活用できないか」と思いついた。
養殖先進地である埼玉県から受精卵を取り寄せ、01年に県栽培漁業センターと共同で試験を実施。2年後の03年に4戸が養殖事業を開始し、翌04年に技術指導や販売を手掛ける大学内ベンチャーとして同社を設立した。行政の理解と支援もあり、養殖戸数は04年に13戸、05年36戸、06年から現在まで54戸と順調に増え、全都道府県で最多となった。
養殖池は休耕田の周囲に深さ60cmほどの溝を掘るだけで完成するため、復元が容易で大規模な設備投資も必要ない。作業負担が軽いため高齢者でも取り組みやすく、技術を身に付ければ水稲生産と比べ面積あたり3〜5倍の収入が見込める。
ホンモロコの知名度向上や養殖普及を目指し、07年10月に鳥取市内で「第一回全国ホンモロコシンポジュウム」を開催。全国から約300人が集まり、講演や養殖所見学会、試食会などを開いた。以来、養殖技術の問い合わせが多数寄せられているという。今後も年1回ペースをめどに開催する予定だ。

佃煮などの加工品
現在、養殖池内に合鴨を入れて雑草を食べさせる方法を模索しており、小学校近くの養殖池には児童が描いた「アイガモ」、「ホンモロコ」のイラスト入り看板が掛けられている。この小学校では授業の一環でホンモロコを観察しており、給食にも取り入れているという。
ホンモロコは頭や骨が軟らかいため丸ごと食べられ、「焼く」、「煮る」、「揚げる」などさまざまな調理法が可能だ。臭みがなく、ビタミンAやカルシウムなどの栄養素が豊富な点に着目した県栄養士会が、06年に炊き込みごはんやキムチ和えなどのレシピを収録した「ホンモロコ料理集」を製作。市内のホテルなどでは試食会を開催している。

八頭ホンモロコ共和国
鮮魚や冷凍出荷だけでなく「自分で育てた魚を自分で加工し付加価値を高める」体制を目指し、07年に鳥取県商工会連合会の支援・協力により、県東部の生産者有志による加工グループ「八頭ホンモロコ共和国」を設立した。現在商品化しているのは、小型魚を活用した佃煮。市内の道の駅などで販売しているが、佃煮を食べる習慣がある関東での販路開拓も目指している。同共和国の本拠地は七條社長が自ら建てた小屋。いろりを囲みながら新商品開発などについて話し合っているという。
08年10月にはマリネやお茶漬けなどとともに、県内の豆腐業者と共同で開発したホンモロコ入り豆腐を発売する予定だ。大型魚を塩と米で発酵させた保存食の「なれずし」は、正月向け需要を見込み12月から売り出す考えという。
会社名:有限会社内水面隼研究所
住所:鳥取県鳥取市湖山町西1-751
電話:0857-28-0038
ノウハウを公開し知名度を上げる
七條喜一郎社長
ホンモロコは京料理の食材として重用されているが、よく知られているとは言えない。「八頭ホンモロコ共和国」の掟は「負けるな、嘘を言うな、弱い者を虐めるな」。薩摩藩の教育方針を基にしている。蓄積した養殖ノウハウは、後発の地域・団体に公開するつもりだ。それが知名度向上につながる。競合相手が増える結果になるかもしれないが、負けないようにわれわれがさらに努力すればいい。
養殖の主な担い手は高齢者。若い後継者を育てようとするのは現実的でない。いま養殖に携わっている人が事業を軌道に乗せ、次のリタイヤ組が『楽しそう』、『お金になりそう』と感じれば新規参入者は増えるはずだ。