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農商工連携パーク

認定事業計画の事例紹介

農商工等連帯促進法に基づき、国の認定を受けた事業計画申請事業者の活気ある声をお届けします。

 島根

畜産農家の負担軽減へ IT活用で飼育頭数引き上げる

農業商業
中小企業者 株式会社ワコムアイティ
農林漁業者 あおぞら農業協同組合
カメラで牛の動きを常に遠隔見守り。牛舎に行かなくても、パソコンや携帯電話で様子や鳴き声を確認でき、分娩の予兆や事故の見逃しを防げる。

カメラで牛の動きを常に遠隔見守り。牛舎に行かなくても、パソコンや携帯電話で様子や鳴き声を確認でき、分娩の予兆や事故の見逃しを防げる。

BSE問題などの影響で和牛人気が高まっているが、作業負担が大きい畜産農家のなり手は減少傾向にある。特に分娩時や発情期には、長時間立ち会う必要があるほか、逆子(さかご)や骨折などの事故により牛が死んだり、人工授精のタイミングを逃したりすると損失も大きい。島根県松江市のITベンチャー企業、ワコムアイティが開発した「牛分娩見守りシステム」「牛発情検知システム」は、こうした畜産農家の負担を軽減するシステムとして期待されている。

2007年に発売した「牛分娩見守りシステム」は、牛舎に取り付けたカメラを通じて牛の様子や鳴き声を、パソコンや携帯電話の画面で確認できる仕組みだ。分娩の兆候をチェックしてから牛舎に駆け付ければよくなり、牛の異常を見逃すことも減らせる。一方の「牛発情検知システム」は、牛の胴体に取り付けた傾斜・加速度センサーで発情期特有の行動を検知し、携帯電話に通知するシステム。発情期を目視で把握するのは難しく勘に頼っていたが、的確な時期に人工授精を実施できる。受胎の成功率向上とコスト削減につながる装置として開発中だ。

多頭飼育めざし分娩・発情をITで見守る

牛舎から離れた場所からパソコンで動きや鳴き声がチェックできる

牛舎から離れた場所からパソコンで動きや鳴き声がチェックできる

ワコムアイティの拠点の一つがある岡山県新見市は、ブランド牛である千屋牛の産地であり、現在、市内で約3,000頭の黒毛和牛が飼育されている。市はさらに1,000頭増やす計画を立てているが畜産農家の増加は期待できないため、1生産者あたりの飼育頭数を増やす必要がある。

ワコムアイティが、市から「ITで畜産の作業効率を高め、千屋牛を増やす方法を考えて欲しい」と依頼を受け、現地調査を開始したのが03年。畜産農家の負担が特に重い分娩・発情に注目し、「牛分娩見守りシステム」と「牛発情検知システム」の開発に取り組んできた。

大規模牧場経営のモデルとして鹿児島で試験導入

発情検知センサー。牛の胴体にセンサーを入れたベルトを巻きつける

発情検知センサー。牛の胴体にセンサーを入れたベルトを巻きつける

08年、ワコムアイティは鹿児島県志布志市有明町のあおぞら農業協同組合(JAあおぞら)に連携をもちかけた。有明町では、年間3,000頭以上の子牛を出荷しており、生産者あたりの飼育頭数が多いのが特徴だ。JAあおぞらは09年4月に、約240頭の肉用牛を飼育する繁殖実験センターの完成を予定しており、大幅なコスト改善を実現し、大規模牧場経営のモデルにしたい考えがある。その中核手段として、JAあおぞらはIT技術の導入に乗り気になった。

「牛分娩見守りシステム」を試験導入した農家からは「事故が減った」「牛の様子が簡単にチェックでき、ストレスが減った」との声が寄せられ、JAあおぞらはシステムの効果に手応えをつかんでいる。「連携当初は畜産とITという異業種間で、話が噛み合わないこともあったが、畜産の負担軽減を実現するという目標に向け、話し合いをするうちに相互理解が深まった」(多久和厚ワコムアイティ社長)。

今後JAあおぞらは、地域で繁殖実験センターの牛の様子をパソコンで見守る仕組みを設ける予定で、分娩見守りを主婦などに委託する「牛見守り代行サービス」を確立し、雇用創出に役立てる。さらに導入事例として同システムのメリットを公開し、ほかの産地での活用につなげる。

連携を販路拡大につなげる

今回の連携により、ワコムアイティはJAの協力を通じて販路を拡大できる。JAあおぞらの導入は、営業的にも大きなインパクトがあるほか、全国にシステムを広める足掛かりとして、JAあおぞらから営業オフィスの提供を受けている。

今後は、牛のセリ市にシステム展示ブースを設けるなどの宣伝活動を行って、各地のJAにシステム提案していく方針だ。開発中の「牛発情検知システム」も岡山や島根の畜産センターで実証実験をしており、製品化をめざしている。

コメント

畜産業にもっとITを活用したい

ワコムアイティ・多久和厚社長

ワコムアイティ・多久和厚社長

畜産業は高齢化が進んでおり、ITに抵抗を示す人もいる。まずは仕組みが分かりやすいカメラを薦め、センサーなどのツールを徐々に提案していきたい。当社の強みはトータルソリューション。状況に応じて多様なシステムを構築できる。
 豚や鶏への応用も考えており、豚に関しては既に鹿児島の養豚業者の協力を得て開発中だ。マーケットを増やす気構えがなければ挑戦した意味がない。他社の事業の下請けや受注ではなく、自社で創造した商品として、営業の人数を増やし販売に力を入れる予定。和牛増産や農家の負担軽減に寄与する点で、やりがいがある事業だ。

連携体代表者の連絡先

会社名:株式会社ワコムアイティ
住所:島根県松江市北陵町43
電話:0852-20-7200
URL:http://www.wacom-it.co.jp/