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農商工連携パーク

認定事業計画の事例紹介

農商工等連帯促進法に基づき、国の認定を受けた事業計画申請事業者の活気ある声をお届けします。

北海道

鮮度劣化の離島ハンディ克服へ 新冷凍保存技術で活路拓く

漁業工業
中小企業者 株式会社おくしり桜水産、株式会社Thermodynamic Systems
農林漁業者 木村清美
島の経済を支えるホッケ漁。輸送コストなどのハンディで年々厳しさを増している。連携事業は奥尻経済の救世主となれるか。(写真:奥尻町提供)

島の経済を支えるホッケ漁。輸送コストなどのハンディで年々厳しさを増している。連携事業は奥尻経済の救世主となれるか。(写真:奥尻町提供)

おくしり桜水産(北海道奥尻町)は、奥尻漁で獲れた魚の高付加価値化を目的に、2008年6月に設立された。高品質冷凍保存技術により、鮮度とうまさを保持して、これまで捨てられることもあった魚を“値打ちもの”に変身させるのが事業の狙いとなる。「出口は見えた。あと、ひとふんばり」(越森修平おくしり桜水産社長)のところまでやってきた。

島の厳しい現実に一念発起

島(奥尻島)の経済を支えているのが真ホッケ(函館近海でとれる、身が薄く小ぶりなホッケ)やイカ漁だ。しかし、北海道本土への運送コストや鮮度劣化をはじめとする離島ゆえのハンディキャップから、奥尻の漁業は年々厳しさを増している。そんな現実を目の当たりにして、魚の高付加価値化をめざす新規事業を立ち上げた。

新事業を簡略に表現すると、真ホッケなどのとりたての魚を特殊な方法で冷凍保存することにより、解凍後も鮮度が損なわれず、しかも、臭みが取り除かれ、生のままでも食べられるようにするという内容。場合によっては捨てられることもある魚を高付加価値商品へと変身させる取り組みでもある。07 年から越森社長が経営する別会社の一つのプロジェクトとして実験的運用を進めてきたが、このほど「おくしり桜水産」を興し、事業化へ向けた体制を確立した。

生命線は2つの急速冷凍技術

臭みを取り除く効果もある人工海氷「シーアイス」

臭みを取り除く効果もある人工海氷「シーアイス」

同事業の生命線となる冷凍保存法とは、いったいどういうものか。越森社長は「シーアイスという人工の海氷の活用と急速冷凍技術の2 つが核になる」と説明する。

シーアイスは氷点がマイナス1℃台で、シーアイスに真ホッケを漬け込むと、身が凍結する寸前のマイナス1.7〜 1.8℃帯に一定時間保てる。これにより鮮度が保持され、また、ホッケ特有の臭みがなくなるメリットも生じる。さらに3日間かけてつくるという特殊な塩水に漬けることで、皮膜がつき耐性が強まり、冷凍劣化を防げるようになる。

もう1 つの核となる急速冷凍は、ベンチャー企業、Thermodynamic Systems(札幌市)などが開発・実用化した技術。「緩慢冷凍はある意味、未熟な技術で、うまみ成分や水分が流出するなど品質が劣化しやすい。その点、急速冷凍は鮮度・品質を保持でき、解凍後も生のものと比べ遜色がない」(越森社長)。同社はマイナス70℃まで一気に凍らせる冷凍庫を開発済みで、事業推進の一環として同冷凍庫の活用を各方面に促していく考えだ。

真ホッケの刺身やしゃぶしゃぶで全国展開へ

Thermodynamic Systemsが開発した急速冷凍庫

Thermodynamic Systemsが開発した急速冷凍庫

今回の農商工連携に伴う補助金は、刺し身やしゃぶしゃぶ用の真ホッケの普及浸透に向けた取り組みに充てる。ホッケの定番料理と言えば開きの焼き魚だが、北海道の一部では刺し身で食べている。弱点である臭みが取り除けることで、真ホッケの刺し身やしゃぶしゃぶの全国展開をめざす。ただ、食文化、食習慣を変えるのは容易ではない。そのためのPR・啓蒙活動などに補助金を有効活用する意向だ。

すでに、奥尻島内におくしり桜物産ともう1社が、真ホッケを加工・冷凍保存するための工場をそれぞれ建設し稼働させている。主婦ら数十人規模の従業員が働いており、経済活動の停滞が続いている島で、貴重な働き場の提供にもなっている。

奥尻発の冷凍ホッケは北海道の地場スーパーなどで出回り始めているが、越森社長らが見据えているのは、首都圏、関西圏など巨大消費地である。そのため、大手食品問屋や外食店チェーンなどへの売り込みにも力を入れていく。そうした場面で、奥尻の冷凍ホッケが“真の値打ちもの”であることをアピールするには、より詳細な科学的データが必要とみて、Thermodynamic Systemsの協力のもと各種データ取りに余念がない。

越森社長は「しっぽをつかんだこの事業を農商工連携の支援制度の活用などで、何とかモノにしたい。過疎化が進み、疲弊・困窮している奥尻を活性化させる新産業として発展させたい」と、事業に寄せる思いを熱く語る。

コメント

奥尻島の経済を支える漁魚を復活させたい

おくしり桜水産・越森修平社長

おくしり桜水産・越森修平社長

奥尻島の経済を支える漁業をなんとかしなければ、買いたたかれている魚の値段を何とか回復させられないものか…。そんな思いから、ホッケやイカの冷凍保存による高付加価値化に必死になって取り組んできた。その成果として、ホッケの刺身をはじめとする独自商品の開発はゴール目前の段階までこぎつけた。

今後の課題は、新市場開拓に向けて“おくしり桜”のブランドを広く浸透させること。そのために農商工連携制度の活用などにより、多方面の人たちとの協力・連携関係をさらに深めたい。

連携体代表者の連絡先

会社名:株式会社おくしり桜水産
住所:北海道奥尻郡奥尻町字奥尻741
電話:01397-3-2090