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HOME > 事業を広げる > JAPANブランドで新市場に臨む

JAPANブランドで新市場に臨む 日本の感性はこうして生かされた


ミクロ発條(長野県諏訪市)は、国内のある展示会がきっかけとなり、中性ゲルインクのボールペンのペン先に入っている微細バネを開発、今では世界トップシェアを握るまでになった。微細バネの技術はブラッシュアップされ続け、同社製のバネは半導体や医療機器などさまざまな分野で使われている。。

ボールペンのペン先のバネを開発し世界のトップに

カメラなどに使用されるバネを製造していたミクロ発條(長野県諏訪市)は、中性ゲルインクのボールペンのペン先に入れる微細バネを開発したことで、その分野で世界のトップシェアを握った。微細バネの技術はブラッシュアップされ続け、今や同社製のバネは、半導体や医療機器などさまざまな分野で使われている。

ミクロ発條が開発した極微細バネ(写真はボールペンチップバネで、世界シェア70%。自社開発のNCマシンにより加工を実現した)

ミクロ発條が開発した極微細バネ(写真はボールペンチップバネで、世界シェア70%。自社開発のNCマシンにより加工を実現した)

ミクロ発條は国内の展示会で小物バネを展示したところ、あるボールペンメーカーの目に留まった。当時、中性ゲルインクを使ったボールペンは、インクが漏れる欠点があった。インクが出る量をコントロールするためには、ペン先に入れるバネの微細化が求められた。ボールペンメーカーは、展示されているミクロ発條の小さなバネを見て、「この会社ならできる」と考えた。

小さいだけのバネなら他社でもできるかもしれない。だが、製品規格への適合性や均一性など、求められる精度を満たすことができる会社は少ない。このバネの開発依頼を受け、小島拓也社長は「数カ月間はバネのことで頭の中が一杯だった」という。

バネがまっすぐボールの先端に当たらず少しでもゆがむと、インクが出ない不良品になってしまう。また、生産されるバネ数百万個が同じ品質を保たなければならない。あまりの生産量の多さに、生産設備を単純に増やしていくだけでは間に合わず、生産しながら設備の改善・増設も同時にして行わなければならなかった。

ミクロ発條はバネメーカーで初めて、NCマシン(数値制御工作機械)を開発した会社でもある。また、バネをつくるための設備も自社開発した。ミクロ発條は既成のマシンを導入しても、用途に応じて自社で調整や変更を加えているという。この工作機械の開発力もミクロ発條の強さの一つだ。

中性ゲルインク・ボールペンに使用されるバネの開発に成功すると、その技術を求める他のボールペンメーカーに対しても同様のバネを提供した。1本100円のボールペンに使用されるこのバネのコストは1円にも満たない。マーケットに広く流通させたことで生産コストを下げることができた。当初のボールペンメーカーが「他社に技術を提供されては困る」と言ってきても不思議ではなかったが、そのメーカーはミクロ発條の考え方に理解を示してくれた。結局はマーケットシェアを高めることができたために、品質も向上しコストメリットも広く提供できるようになった。

技術とは顧客の課題を解決するための力

電子部品等に使用される小物バネの数々。さまざまな形状の小物バネを安定量産している

電子部品等に使用される小物バネの数々。さまざまな形状の小物バネを安定量産している

技術力が高まり世界に進出できるまでのレベルになった時、小島社長は「世界中のボールペン市場を知ろう」と、ドイツの展示会を視察したり、欧米やインド、中国にも行き情報を収集したりした。

ある時、海外の大手文具メーカーのボールペンの先端をつくっている会社を訪問した。自社のバネを見せたところ非常に興味を持ってくれたが、既存の取引先があったため、すぐには取引してもらえなかった。しかし、小島社長は面談の中で、現場で困っている問題があることを知り、解決できる問題だと瞬間的に直感、その会社と改善に取り組んだ。

2週間に1度、相手企業に訪問するペースで6、7カ月の間、取り組んだ結果、見事、彼らの課題は改善された。このことをきっかけに取引が始まり、信頼関係も醸成されていった。小島社長は「顧客の課題を解決できないのであれば技術力ではない」と断言する。

微細加工技術こそJAPANブランドとしての強み

細かいものをつくる技術は、日本がトップだと言われている。小さい部品を必要とする海外メーカーは、まずは日本で部品を探すという。たとえ海外に該当する企業があったとしても、1社独占状態や、コストや品質について他社の要望に応じてくれないケースが多いからだ。

ミクロ発條が開発した極微細バネ(写真は、医療用カテーテルに使用されるバネ。極細線加工ノウハウを活かしどこよりも細い長尺バネの加工を実現した)

ミクロ発條が開発した極微細バネ(写真は、医療用カテーテルに使用されるバネ。極細線加工ノウハウを活かしどこよりも細い長尺バネの加工を実現した)

ミクロ発條のように、微細バネを生産できる国内の競合企業は5、6社程度だが、海外ではもっと少ない。ある海外の展示会で微細バネを展示したところ、「材料メーカーですら見たことがない」というほど細く小さいサイズだったため、来場者は驚いたという。

ミクロ発條が製造する髪の毛一本ほどの細さのバネは、材料の仕入れやメッキ加工もすべて日本で行っている。微細バネにメッキ加工を施すのは容易ではなく、それができなければ製品にならない。ミクロ発條のバネは材料やメッキ加工など、日本の中小企業の総合力がなければできない。

海外からミクロ発條の生産工場の誘致を受けることもあるが、その国でバネをつくることができたとしても、メッキ加工をするために日本に運ばなければならない。結局は日本でつくって送ったほうが安くなるのだ。しかも微細バネは小さな梱包で大量輸送できるため、輸送コストも低い。日本の中小企業の総合力が持つ強みもまた、JAPANブランドの強みだ。

常に世界中から情報を集める

ミクロ発條は、極細ながらも強度や耐久性に優れた世界最微細バネの生産に挑戦し続ける。写真は外径72ミクロンのバネ。現在は外径65ミクロンのバネの量産に挑戦中

ミクロ発條は、極細ながらも強度や耐久性に優れた世界最微細バネの生産に挑戦し続ける。写真は外径72ミクロンのバネ。現在は外径65ミクロンのバネの量産に挑戦中

商社に営業を頼っている部品メーカーもあるが、ミクロ発條では自社ですべての営業活動を行っている。営業を外部に頼ってしまえば、商社から顧客の困っていることやニーズが伝わってこない上に、マージンもかかる。小島社長は「ニーズはあくまでも自分たちで見つけに行かなければならない」と考えている。

ミクロ発條はボールペンから半導体、医療機器分野にまで至るバネの製造を幅広く手掛けている。業界ごとに顧客ニーズや技術的な要求、価格が異なる。そのため、常に世界中から情報をキャッチできるようにアンテナを張っている。

医療機器分野に進出しようと思えば、国内外の医療関係の展示会に足を運ぶ。また、海外では見えるものも異なるため、そこで自分たちの目標を定める。当然、狙うのは世界トップシェアだ。各業界において、「技術力、品質力、コスト競争力」の3つが揃わなければトップシェアを取れないが、ミクロ発條は、あえてさまざまな産業に挑戦することで、自社の国際競争力を高めることに努めている。

生き残るために必要なのは強みと生存領域を知ること

「夢は市場をつくりだす製品を生み出すこと」と語る小島拓也社長

「夢は市場をつくりだす製品を生み出すこと」と語る小島拓也社長

「中小企業が生き残るためにすべきことは、自分たちの強みを知り、生存領域を見つけ出すことだ」と小島社長は断言する。技術力はあっても市場が無くなってしまえば何も残らない。生き残るためには、国内外の市場を見極めることが重要だという。カメラもビデオも携帯電話機も仕様が変わり、部品としてのバネが必要とされなくなってしまうかもしれないという危機感の中で、小島社長はどこに向かうべきかを考え続けてきた。さまざまな分野に進出し微細バネをつくる技術を生み出したことで、ミクロ発條は自社の生存領域を確立した。

小島社長の夢は、「市場をつくりだす製品を生み出すこと」だという。自社の製品が市場をつくり出すことができれば、その市場に集中して取り組むことができるからだ。これまで、さまざまな産業でその技術力を発揮してきたミクロ発條。これからも、新たな市場を見極め、または創出することで、日本のモノづくりの素晴らしさを世界に伝えていく。

企業データ
会社名 株式会社ミクロ発條
代表取締役社長 小島拓也
所在地 長野県諏訪市小和田南22-6
業種 精密小物バネの製造販売等
掲載日:2014年3月28日


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