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JAPANブランドで新市場に臨む 日本の感性はこうして生かされた


考える力鍛えリサイクル分野でオンリーワンに-「産業用電磁石」植松電機
鉄スクラップが高価だった1970年代、植松電機(北海道赤平市)はトラックのバッテリーを電源とするマグネットシステムを開発。発電機の搭載を不要にした同システムは現場の作業効率を高めることに貢献した。植松清社長がリサイクル現場を見学した時、あるアイデアが浮かんだ。常に思考をめぐらす姿勢が海外から指名買いされる製品を生み出した。

車載バッテリー電源のマグネットシステム

1950年代に石炭産業で栄えた北海道赤平市。同市に本社を置く植松電機には、毎年約1万人の修学旅行の生徒が体験学習に訪れる。体験学習を通じて「考えること」を教育しているという。考える力を鍛え実践してきたことが、植松電機を産業用電磁石の分野で世界のオンリーワン企業に成長させた。

年間約1万人の生徒が体験学習に訪れる植松電機社屋(北海道赤平市)

年間約1万人の生徒が体験学習に訪れる植松電機社屋(北海道赤平市)

植松電機は1962年に現社長の植松清氏が創業した。鉄のスクラップが高価だった1970年代に、トラックのバッテリーを電源とするマグネットシステムを開発した。

当時のマグネットは工場などの固定設備で使用されるのが一般的で、電源は商業用交流電源を直流に変換し、200ボルト程度で動作するようにつくられていた。産業用マグネットをトラックなどに搭載する場合には、200ボルトを出力できる発電機を搭載する必要があったが、トラックは積載重量が制限されている。クレーンとマグネット、発電機を搭載してしまうと、肝心のスクラップの積載量が大幅に減ってしまう。この点、植松電機が開発したマグネットは、トラックのバッテリーを電源とするため作業効率が良いと好評だった。

その後、鉄スクラップの価値は下落したものの、2000年に施行された建設リサイクル法により、それまで廃棄物とされていた木材やコンクリートをリサイクルすることが定められた。木材やコンクリートなどの資源を有効活用するために、混入している鉄くずを100%除去しなければならない。この2000年の法改正を契機に再び、植松電機のマグネットシステムが脚光を浴びることになった。

新型マグネットシステム開発

一般的なリサイクル作業は、油圧ショベルに大きなマジックハンドを取りつけて鉄の分別作業を行う。植松努専務はリサイクルの現場を見学したとき、ある考えが浮かんだ。

植松電機が開発した軽量なバッテリー式マグネットシステム「GRMS」

植松電機が開発した軽量なバッテリー式マグネットシステム「GRMS」

「木材やコンクリートなどの再生資源の中に存在する鉄くずの量は2%程度。わずかしかない量を除去するために大きな機械は必要ない。作業と同時に木材やコンクリートをハンドリングできるとさらに効率がよいのではないか。鉄をハンドリングするマグネットと、木材やコンクリートをハンドリングするマジックハンドを合体させた機械を開発できないか」と、植松社長は考えた。

油圧ショベルは、やじろべえのような構造になっている。ショベルが100キログラムであれば、クレーン本体に100キログラムの重りをつけなければバランスがとれない。そこで、マジックハンドに組み合わせるマグネットをできるだけ軽くしようと考えた。また、油圧ショベルはトラックよりも多くの電気を消費するため、マグネットの省エネ化も重要なテーマだった。

植松電機は、マグネットの磁気の流れについて独自に研究を行い、従来のマグネットの約半分の重量と消費電力でも鉄くずの吸着性能は変わらない新型マグネットの開発に成功した。

アイデアを具現化するのには1週間程度しかかからなかった。しかし、壊れない製品づくりと、仮に壊れても購入した顧客自身で直すことができる整備体制を整えるまでに4年かかった。宇宙開発の研究過程で講じられてきた振動対策などを盛り込んだ制御装置は、油圧ショベルの振動や衝撃にも耐えられる。万が一、故障した場合は自己診断機能が交換箇所を表示するため、その表示に従って構成部品を丸ごと交換すれば誰でも修理ができる仕組みになっている。

発電機不要の軽量マグネットは、導入コストが他社製品の半分以下、燃料費などのランニングコストもほとんど必要としない。用途をかなり制限して設計したことで、顧客にとってメリットの大きな製品をつくり上げた。新製品は現場を歩いてヒントを得たが、そのアイデアを具現化できたのはトラブルの際には自ら利用者を訪問し修理対応することで、多くのノウハウを蓄積してきたからだ。

海外ユーザーもコストパフォーマンスを高評価

植松電機は電源内蔵型のマグネットシステムも開発している(写真は電源内蔵型リサイクル用マグネット「HIMAT-R」)

植松電機は電源内蔵型のマグネットシステムも開発している(写真は電源内蔵型リサイクル用マグネット「HIMAT-R」)

植松電機のマグネットを採用しているのは、油圧ショベルに取りつけるマジックハンドを製造販売する「アタッチメントメーカー」がほとんどだ。その油圧ショベル用アタッチメントメーカーが植松電機のマグネットシステムを装備したアタッチメントを海外の展示会で披露したことがきっかけで、同社のマグネットは海外にも広く流通するようになった。

海外ユーザーの大半は建物の解体業者やリサイクル業者だ。北米やドイツに加え、東南アジア、韓国にも流通している。

海外ユーザーから評価されている点は、油圧ショベルへの取りつけや修理が容易なことだ。故障した場合は、日本同様に、販売主のアタッチメントメーカー経由で、交換補修パーツを配送している。海外ユーザーは日本以上にコスト意識が高いため、同製品のコストパフォーマンスも高く評価している。その結果、指名買いされるケースも多いという。成長著しいアジア地域においては、高温多湿という気候に加え、技術者が不足し、物流環境も決して良いとは言えない。だが、植松電機製の機械は故障をほとんどせずに稼働しており、とくに評価が高い。

年間7万人の子どもたちと出会う

植松電機は宇宙航空関連機器の開発にも取り組む。植松清努専務(=写真)が手にしているのは、同社が研究開発に参加したハイブリッドロケットの模型

植松電機は宇宙航空関連機器の開発にも取り組む。植松努専務(=写真)が手にしているのは、同社が研究開発に参加したハイブリッドロケットの模型」

植松電機はユニークな人材育成に取り組んでいる。会社見学や年間100校ほどの学校に招かれて行う講演会などを通じて年間約7万人の子ども達に直接、会社のことを伝える活動を行っている。最近入社した社員の中には、講演を聴いて入社した社員もいるという。まじめに取り組む若者が増えてきており、意欲を持って入社した社員への技術継承のサイクルができつつあるという。

植松努専務は、マグネット開発の事業の将来についてはシビアな見方をしている。仕事の寿命は年々短くなっているため、現在のマグネット事業をいかにして生きながらえさせるかということではなく、新しい事業を生み出すことが重要であると語る。それも誰も歩まぬ道に一歩を踏み出さねばならないというのだ。

指示された通りに動く人材は、新しいものを生み出すことはできない。日本から海外に製造拠点が移転している状況で、日本が生き残るために最も重要なのは「考える人」を増やすことだ。今、植松電機では誰もが無理だと思っている宇宙開発に取り組んでいる。同取り組みを通じて、「考えること」の大切さを子供たちに教えている。

「仕事とは社会のために役に立つこと、という原点を忘れずに真理探究すべきである」と考える植松電機からは、これからも考える“人財”が輩出され、日本発の知的アイデアに満ちた製品が開発されていくに違いない。

企業データ
会社名 株式会社植松電機
代表取締役社長 植松清
所在地 北海道赤平市共和町230番地50
業種 車両搭載型低電圧電磁石システム設計・製作・販売
掲載日:2014年2月 7日


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