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JAPANブランドで新市場に臨む 日本の感性はこうして生かされた


世界に羽ばたく少数精鋭の開発型メーカー-「電子・無線通信機器」ファースト電子開発
従業員5人の町工場が、世界シェア7割を誇る電子・無線通信機器を世に送り出している。ファースト電子開発(東京都北区)だ。アマチュア無線製品の開発からスタートした同社は、今では南極昭和基地で使われる低雑音増幅器や、人工衛星用無線送受信ユニットなどの精密機器を手がけるまでに成長した。

多品種少量生産を徹底

「自分のやれることをやろう」と独立し、ファースト電子開発を設立した伊藤義雄社長

「自分のやれることをやろう」と独立し、ファースト電子開発を設立した伊藤義雄社長

ファースト電子開発(東京都北区)は、従業員5名の会社。この小さな会社が驚くべきことに世界7割のシェアを誇る電子・無線通信機器を世に送り出している。

ファースト電子開発は、1967年に伊藤義雄社長によって創業された。伊藤社長は、芝浦工業大学卒業後、沖電気工業に入社しレーダーの設計、開発を担当した。その後、「自分のやれることをやろう」と独立し、アマチュア無線製品の開発に乗り出した。同社のユニークな製品がアマチュア無線の雑誌に掲載されると全国の販売店から注目を集め、開発型メーカーとして順調なスタートを切った。

同社は社名の通り、常に最先端の技術力で、新製品を次々と開発していった。経営は順調に進み、海外からも問い合わせがあり、アメリカやヨーロッパ、アフリカにまで輸出するようになった。しかし、新製品を開発しても、すぐさま他社にマネをされてしまう。そのため、経営方針を大きく変え、他社が簡単にマネをできない高い技術力で、ニッチな製品を開発する多品種少量生産に徹することとした。

転機となった「競技用タイム計測装置」

世界シェア70%を誇る競技用タイム計測装置

世界シェア70%を誇る競技用タイム計測装置

1989年、ヨーロッパのスキー連盟が無線式スポーツ競技用タイム計測装置の開発を世界の企業に向けて公募した。「計測精度を100分の1秒から1000分の1秒にまで上げたい。そのデータを無線で送れるようにしたい」という内容だった。スイスの高級腕時計メーカーであるタグ・ホイヤー社から、日本の代理店を通じて伊藤社長に開発依頼が舞い込んだ。

ファースト電子開発での研究開発の結果、マイナス30度Cの雪の中で1000分の1秒を計測する無線計時装置が完成、同装置はヨーロッパのスキー競技用タイム計測装置として公式採用された。

この競技用タイム計測装置はその後、陸上競技や自動車レースなどの競技のほか、警察庁・警視庁や宮内庁の白バイ隊競技などでも使用されるようになった。現在では4000台以上を出荷、国内シェア90%、世界シェア70%を誇る。

基礎があればこそ

基礎研究を大事にしてきたことが幅広い製品開発につながった(写真は、南極昭和基地用低雑音増幅器)

基礎研究を大事にしてきたことが幅広い製品開発につながった(写真は、南極昭和基地用低雑音増幅器)

ファースト電子開発の競技用タイム計測装置は、製作から20年以上経った今でもほとんど壊れていないという。もちろん、粗雑な扱いなどでの破損はあるかもしれないが、正常な使用状態下ではその正確さは健在だ。

高品質な製品を生み出すファースト電子開発の製品は、私たちの生活の身近にある。例えば、高速道路の渋滞・凍結・事故などの情報を的確に伝えるシステムや、東京メトロ地下鉄などで使われている非常時用電源装置などである。最近では、南極昭和基地の大型大気圏レーダーの低雑音増幅器を開発している。これらのファースト電子開発が開発製造した製品は、経済産業省の「ものづくり白書2013」にも掲載されている。

これだけの高性能な製品をつくる背景について、伊藤社長は次のように話す。

「創業当時から基礎をしっかりと持ち、無線については、かなり幅広い範囲でやってきました。そうした基礎研究があるからこそ、確かな性能の物をつくることができるのでしょう」。

ファースト(1番)でいられる秘訣

一人の担当者がゼロから考え製品開発する仕組みが技術力を高める(写真は、社内の開発用電子計測器郡)

一人の担当者がゼロから考え製品開発する仕組みが技術力を高める(写真は、社内の開発用電子計測器郡)

創業当時から、ゼロからの開発、設計、製造まで一貫して行ってきたファースト電子開発。この姿勢を貫くことで、基礎から応用までの幅広い技術力が培われる。伊藤社長が言うには、日本のメーカーの95%は設計図面を基に製品を作る製作型メーカーであり、一から自分で考えた製品を製造する開発型メーカーは5%しか存在しないという。

ファースト電子開発は数少ない開発型メーカーとして、上述の製品以外にもさまざまな製品を開発してきた。例えば、マイクロフォンで拾った音を圧縮増幅する装置、受信した再生音の中で目的の信号だけを引き出すような装置や、無線機の出力を増幅するブースターなどがある。

ファースト電子開発の武器は幅広い技術力にある。同社はこの強みが引き継がれるように、技術のすべてを若い人たちに伝承している。また、一人の担当者がゼロベースから考え、製品を生み出し商品化するところまで、責任を持って行う仕組みを構築している。大企業のような分業はない。一人で幅広く深い技術を勉強することが、世界トップレベルの高い技術力の開発につながっている。

舞台は宇宙に

JAXAの人工衛星に採用された無線送受信ユニット。宇宙にかかわる仕事は伊藤社長の夢でもあった

JAXAの人工衛星に採用された無線送受信ユニット。宇宙にかかわる仕事は伊藤社長の夢でもあった

伊藤社長は、小学4年生のころに宇宙を舞台にした映画を観て、「将来は宇宙にかかわる仕事がしたい」という夢を抱いた。当時はボール紙で筒をつくって、虫眼鏡のレンズで望遠鏡をつくり、天体観測をして夢を膨らませていた。この夢は近年、ファースト電子開発製の通信機器が宇宙航空研究開発機構(JAXA)の人工衛星に採用されたことで叶った。

伊藤社長は現在72歳。「創業50周年の成功を目指してこれからも日々勉強し、世界に貢献していきたい」と、バイタリティーにあふれている。従業員数5名の町工場ではあるが、それぞれの人が勉強を続け、高い技術を後の世代に伝えていくなら、ファースト電子開発は、今後もファースト(1番)であり続けるだろう。

企業データ
会社名 ファースト電子開発株式会社
代表取締役社長 伊藤義雄
所在地 東京都北区上十条4-15-5
業種 電子・無線通信機器の開発製造
掲載日:2014年2月 5日


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