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JAPANブランドで新市場に臨む 日本の感性はこうして生かされた


顧客の声に応え続け“世界のKATAOKA”に-「ピストンリング加工専用機」片岡機械製作所
片岡機械製作所(愛知県岡崎市)は、ピストンリング加工専用機の後発メーカーにもかかわらず、世界シェア60%を誇る。業界に先駆けて、CNC(コンピュータ数値制御)をピストンリング専用機に導入した。躍進に裏には、常に顧客のことを考え、高い技術的な要求に応えようとする姿勢があった。

専用機メーカーへの転身が海外展開のきっかけに

後発メーカーにもかかわらず、ピストンリング加工専用機の分野で世界シェア60%を誇る片岡機械製作所。そのブランド力は顧客の声に応えることで作り上げられたものだった。

片岡機械製作所が製造業に進出したきっかけは、戦時中に疎開した愛知県岡崎市で軍需工場向けに金属部品加工の下請け工場を始めたことだった。終戦後、民間に払い下げられた機械を修理し、転売をするという中古機械販売業をスタートさせた。事業は順調に拡大していたが、高度経済成長期の産業の復興を確信し、工場を新設。自社ブランド『KATAOKA』を立ち上げ、汎用旋盤の製造を始めた。半自動制御の機械を製造すると、全国各地から専用機の注文が相次いだという。

ピストンリングはエンジン内部の重要な部品

ピストンリングはエンジン内部の重要な部品

ある時、ピストンリングを加工する半自動機を納めていたある会社から「生産量が拡大するからアメリカやドイツのように全自動機でなければならない」と言われた。ピストンリングはエンジンの中の部品である。乗用車や、バイク、タンカー船などに使用されているため、様々な形状やサイズはあるものの部品を作る機械は共通している。ピストンリング製造機の汎用性は高い。そこでピストンリング専用機に特化することにした。

ピストンリングは歴史のある分野であり、限られた会社が専用機を製造していたこともあり、簡単には新規参入できない分野だった。しかし、そのような業界の中でも、後発だった『KATAOKA』ブランドが認められるに至ったことには理由があった。それは、当時汎用機製造の現場では当たり前であったCNC(コンピュータ数値制御)をピストンリング専用機に導入したことだ。

新規参入を決めて既存の競合他社の専用機を見たとき、汎用機で使われている技術が専用機に使われていないことに気付いた。そこで、CNC化を業界でいち早く導入したことが、大きなポイントとなった。ある大手企業の系列会社は、1台だと価格が高く投資効率が合わないため、3台同時に購入してくれた。導入した結果はすぐに現れた。投資効率や製品の品質だけでなく、作業性や稼働性という生産現場の効率改善にも貢献した。すると、他社からも導入したいという話がくるようになった。

海外のマシンが使いにくかったことも、KATAOKAの成長を助けた。元請けがだめでも系列工場に提案するという発想の転換も良かった。顧客のことを考え、こうすればよいのではないかと考えた取り組みと姿勢が、それまでの業界の常識や概念を覆(くつがえ)した。今では海外競合メーカーでもCNCを導入している。

全自動専用機を納品した企業の技術者からは、「なぜこの機械は1本しか加工できないんだ。どうせ加工するなら2、3本加工すればいいじゃないか」という声も聞こえてきた。いくら全自動であっても、これまでと同じく1本しか加工できなければ生産性は変わらない。そこで、部分的に改造して3本加工できるようにした。コストは従来の1.5倍ほどになったが、生産性は3倍になった。

この機械をアメリカやイタリア、イギリスの会社に持って行ったところ、作業効率と品質の高さが認められ、次々と契約が決まった。その後、トラック、建設機械、船舶などあらゆるピストンリング加工専用機を造ることになった。ピストンリングをつくっている会社は国内に数社しかなかったため、海外展開は必須でもあった。

新たなマーケット参入のきっかけは顧客からの依頼

ある時、インドの発電機メーカーから連絡があった。ピストンリングを内製化したいとの相談だったが、その企業の生産量では採算性が悪いと判断し、従来通り外部調達することを勧めた。

同社製の専用機は、さまざまなピストンリングやカムシャフトをつくり出す

同社製の専用機は、さまざまなピストンリングやカムシャフトをつくり出す

しばらく経ち、改めて連絡があった。今度はカムシャフト専用機を開発したいということだった。全く手がけたことのない分野だった。何度も要請があったため訪印したところ、先方の社長はKATAOKAが手がけたことのない分野であることを知っていたうえで依頼してきたのだ。「欧米のメーカーの機械は価格が高く、納期も長い。その上、技術的な要求をしてもあまり受け入れてもらえない。そのことに納得がいかないから片岡機械製作所に依頼したい」ということだった。

相談を持ちかけたインドのメーカーは「ピストンリングを楕円に加工するノウハウをカムシャフトに応用すればよいのではないか」と提案。経験も技術もノウハウもなかったため、開発に時間がかかることも了承したうえで、開発資金を提供し共同開発することを約束してくれた。残念なことに先方の社長が変わったため、結局独力で開発することになったが何とか成功した。顧客の声に応えることで、新しいマーケットに参入することができ、実績を上げることができたのだ。

また、ホームページや商社からの情報でKATAOKAを知ったフランスのカムシャフト専用メーカーからは生産性を2倍にする専用機開発の受注があり、日本の自動車部品メーカーからはストーンツールによる超仕上げ専用機開発の依頼があった。ドイツ製の機械で行うと2台必要で2億円にもなるため、カムシャフトの単価と合わないということだった。ドイツ見本市視察後に同社のイギリス工場も訪ねるなど1年間の構想を重ねてようやく契約した。

クランクシャフト専用機の製造については、意外なことがきっかけだった。会社案内の製品一覧に開発予定としてクランクシャフトを掲載していたところ、それを見た北陸の大手メーカーから「そのとき取引しているメーカーが自社の要望を受け入れてくれないため、他社への切り替えを考えている」という話が舞い込んだ。まだ完成していなかったが、研究開発の結果、コンペで勝ち抜き受注することができた。このことは新聞でも大きく報じられ、その当日から国内外の商社やクランクシャフトメーカーからの問い合わせが集中した。

ただひたすらに顧客の声に耳を傾け、顧客の満足する機械作りを行ってきたことが、ビジネスチャンスを呼び込み“世界のKATAOKA”となったのだ。

KATAOKAが世界のメーカーから支持をされる理由

リーズナブルな価格、短納期、高度な技術的対応が片岡製作所の強みとなっている(写真は同社外観)

リーズナブルな価格、短納期、高度な技術的対応が片岡製作所の強みとなっている(写真は同社外観)

自動車関係については、ドイツやスイスなどEUのメーカーのほうが歴史もあるため、常に競合となる。それでもKATAOKAが選ばれる理由は、リーズナブルな価格で納期も短い上に、技術的な要求を受け入れることだという。

KATAOKAは後発メーカーであるため、単に真似(まね)をするのではなく、競合企業がつくる機械の矛盾点を見つけるようにしている。そうすれば、同じ機械を作っても優位に立てるのだ。仮に、他社の機械で1本しか加工できないのであれば、それと違うものをつくる。これは、相手をよく知らなければできないことだ。

また、専用機メーカーだからと言って汎用機を知らなくてよいというわけではない。関係する業界については積極的な情報収集に努めている。専用機だけでなく、汎用機の展示会も視察する。しかも、国内だけでなく、アメリカでもドイツでも中国などで開催される展示会にも出かける。カムシャフトやクランクシャフトが使われているモーターショーやF1レースも見に行き、常に研究をしている。

KATAOKAが支持を得ているのはハード面だけではない。取引先とのコミュニケーションも非常に重視している。外国から技術交渉に来た担当者とは、滞在中に1、2回は和食や酒を共に楽しむという。そこでは、趣味や家族の話も出て、気心が知れてくるという。

絶え間ない開発

片岡社長は、高い国際競争力や地域経済への貢献により経済産業大臣などから表彰もされている

片岡社長は、高い国際競争力や地域経済への貢献により経済産業大臣などから表彰もされている

今や、ピストンリング業界では、世界で確固たるポジションを確立したKATAOKAだが、開発を止めたら会社は終わると考えている。

片岡勲社長は社員に対し「お客さまから話があったらすぐに断ったらいけない」と言っているという。手がけたことがなくても社内に持ち帰り、検討し取引先に返答する。自社でできる可能性が低ければパートナーと手を組めばよいという考えなのだ。

水素や電気自動車の開発も進んでいるが、今の自動車がすぐになくなるわけではない。大型トラックや船、建設機械など特殊なマーケットで開発をし続けていれば、マーケットを押さえることはできる。

「技術的な要求をされ続ける会社でありたい」と語る片岡機械製作所の片岡社長

「技術的な要求をされ続ける会社でありたい」と語る片岡機械製作所の片岡社長

ある航空機会社に見学に行ったところ、自分たちの技術を活かせる機械があった。そこで航空関係の展示会に出展したところ、3カ月後に大手企業から共同開発の申し出があった。大手企業側の都合でプロジェクトは中断したが、常に新しいことにチャレンジしていれば道が開け、ビジネスチャンスは得られることを確信した。世界的にも名が知れる企業となり、もはや今の事業分野での展示会に出展する必要はなくなったが、新たな分野については積極的に展示会に出展しているという。

「顧客から新しい技術的な要求をされ続ける会社であることが夢だ」と片岡社長は語る。また、利益はその取り組みの結果だと断言する。ある海外の大手メーカーに行ったところ、KATAOKA製の機械の隣に歴史ある大手競合メーカーの機械があったが、一目で基本的な構造がコピーされていたことが分かった。大手にコピーされたことで自社の製品開発に対する考え方の正しさが証明されたと感じたという。

片岡機械製作所は2013年に67周年を迎えた。絶え間なく開発を続ける限り、その歴史は続いていく。

企業データ
会社名 株式会社片岡機械製作所
代表取締役社長 片岡勲
所在地 愛知県岡崎市美合町字京ヶ嶺7-1
業種 各種エンジン部品加工用専用工作機械製造
掲載日:2014年1月20日


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