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JAPANブランドで新市場に臨む 日本の感性はこうして生かされた


日本のワインが世界へ-「甲州ワイン」中央葡萄酒
中央葡萄酒(山梨県甲州市)が世界を目指したきっかけは、ある大手ワイン製造会社の元醸造責任者から「日本のワインづくりには厳しさがない」との指摘を受けたことだった。厳しさを求め、三澤茂計社長は外に目を向けた。世界のワイン市場に対して、正真正銘のメイドインジャパンのワインの挑戦が始まった。

アジア最大のワインコンクールで金賞を受賞

2013年、香港で開催されたアジア最大のワインコンクール(Decanter Asia Wine Awards)で、『グリド甲州2012』が金賞を受賞した。同コンクールで、アジアのワインが金賞を受賞したのは史上初の快挙。生産したのは1923年に山梨県甲州市で創業した中央葡萄酒。同社は1983年に日本で初めて原産地認証ワイン(山梨県勝沼町で収穫されたぶどうを勝沼町の自社で醸造したワイン)を生産した会社でもある。今、甲州ワインのパイオニアが世界のワイン市場で注目を集めている。

海外進出を決意したきっかけ

数々の表彰を受けてきた中央葡萄酒の三澤社長

数々の表彰を受けてきた中央葡萄酒の三澤社長

4代続くワイナリーのオーナーが海外進出を考えるきっかけとなったのは、メルシャン・ワインの元工場長 麻井宇介氏から「日本のワインづくりには、厳しさがない」との指摘を受けたことだった。16世紀以降にワインづくりが始まったアメリカ、チリ、オーストラリアなど、いわゆるニューワールドと呼ばれる産地から素晴らしいワインが続々と生まれているのは、輸出して海外で鍛えられたからだと言われた。しかし、日本にはその厳しさがないというのだ。そこで、三澤茂計社長は海外に目を向けるようになった。

ロンドンにはワインのジャーナリストが多く集まっており、世界の7割のワイン情報が発信されている。三澤社長は、このロンドンに行きたいという思いを強く持っていたところ、2003年に東京都内のある酒類輸入販売会社社長から「輸出用ワインを造らないか」という話を持ちかけられた。そして、輸出するのであれば、『甲州』というアイデンティティのあるぶどうを使ってオリジナリティを追求したほうが良いとも言われた。『甲州』は1000年以上の歴史を持つ日本固有のぶどう品種。それを使ったワインを造るべきだというのだ。

日本国内をみると、流通しているワインの三分の二が輸入品である。残り三分の一は日本で瓶詰めされた国産ワインであるが、日本のぶどうを使って造ったワインはそのうちの15-20%程度である。つまり日本のぶどうを醸造して作られた日本のワインは日本に流通しているワイン全体の5-6%程度でしかない。

ワイン生産国として有名なフランスやイタリア、スペインなどEUにおいては、紀元前からワインづくりが始まっており、ワイン生産量は全世界の約60%を占めている。残りはニューワールドのワインだが、アメリカ、チリ、オーストラリアは既にブランディングがなされている。ニューワールドの中でも平均価格が最も高いのはニュージーランド・ワイン。20年以上かけてブランディングされてきた。そんな世界のワイン市場に対して、正真正銘のメイドインジャパンのワインの挑戦が始まった。

ワイン情報発信の中心地ロンドンへの挑戦

輸出用ワインの話を受け、甲州ワインプロジェクトがスタートした。ロンドンへの挑戦を決意し、ボルドー大学の教授をコンサルタントとして迎え入れた。教授は『甲州』というぶどう品種で造るワインに一定の評価はしていたが、EUで通じる最低限の条件として、次の2つを提示した。

(1)『甲州』がワインになった時に香り(アロマ)があるかどうか
  (2)『甲州』種がワイン用のぶどうかどうか

教授の研究室での研究成果により『甲州』には、注目すべきアロマプレカーサー(香りの前駆体)があることが分かった。また、カリフォルニア大学で『甲州』種の遺伝子を調べたところ、日本固有のぶどう品種である『甲州』はワイン専用の品種であるヨーロッパ系ヴィニフェラ種に属し、約8割の遺伝子がワインに向いているという結果が出た。

三澤社長は、KOJの活動を通じて、ロンドンからワイン情報を発信してきた

三澤社長は、KOJの活動を通じて、ロンドンからワイン情報を発信してきた

教授の示した2つの条件は無事クリアできた。2004年から、EUの基準に基づいたワインづくりが始まった。アロマを大事にする方法として空気と触れさせないために、炭酸ガスを使うという手法が用いられた。ドライアイスを使うことで酸化を防止することができる。さまざまな取り組みが奏功し、世界で最も著名なワイン評論家が中央葡萄酒の生産したワインに87-88点の高評価を与えた。日本のワインにとって初めてのことで、これにより国内外からの問い合わせが相次いだ。

中央葡萄酒の生産したワインは、2009年には、ロンドンや香港のワインコンペティションで表彰されるまでになった。この年、山梨県内のワイン生産者などが集まって「甲州オブジャパン(KOJ)」を設立した。ここで、『甲州』によるワイン醸造事業が、ヨーロッパへの輸出プロジェクト事業(支援事業)としての認定を受けた。また、EUへの輸出を推進するために『甲州』を品種登録することも決定し、研究所への分析依頼、ぶどう・ワイン国際機構(OIV)への登録申請も並行して進められた。その結果、2010年にOIVのぶどう品種に『甲州』が登録され、EUへの輸出の足がかりとなった。

EUでは、ワインのトレンドは変わり、重厚な赤ワインからロゼ・白といった爽やかな飲み口のワインが脚光を浴びていた。その新たなジャンルの中に、甲州ワインは切り込んでいった。

輸出がスタートした2010年からは、ロンドンで1週間、KOJによるプロモーション活動が行われた。プロモーションでは、トップワインジャーナリストやトップソムリエ、インポーターを150名ほど招いた試飲会が開催された。また、甲州ワインと和食との相性の良さを知ってもらう会を日本料理店で行った。初めて甲州ワインに触れる人も多かったが、「爽やか、繊細、ヘルシー」といった感想が聞かれ、また、今後の拡販に向けたアドバイスなども得ることができたという。

翌年には、メーカーズディナーやワインパーティ、外国のワインジャーナリストによる甲州セミナーなども開催。このような地道な活動が続き、甲州ワインの良さを理解する人が徐々に増えてきた。ロンドンの高級スーパーのワイン売り場に甲州ワインが陳列されたほか、ロンドンで人気のある日本食レストランのほとんどのワインリストに甲州ワインが掲載されるまでに至っている。

『甲州』が世界に羽ばたく

中央葡萄酒のワインは、ガルーダインドネシア航空のファーストクラスにも採用されるなど、海外で高い評価を得ている

中央葡萄酒のワインは、ガルーダインドネシア航空のファーストクラスにも採用されるなど、海外で高い評価を得ている

KOJの活動を通じて、ロンドンからワイン情報を発信してきた結果、『甲州』でつくられるワインは、アルコール度数がやや低めでヘルシー感もあるワインとして、世界のインポーターやジャーナリストに知られる存在となってきた。パリ・ミラノなどのEU圏内だけでなく、オーストラリア、シンガポール、香港、バンコク、上海にも流通するようになった。シーフード料理の多い北欧の企業からも引き合いが来ているという。

中央葡萄酒が生産するワインの5%程度が今では海外に流通しているが、三澤社長は、これを15%くらいまでに引き上げたいと考えている。競争の激しい海外市場の評価では、同社のワインは割高感を否めないが、今は、甲州の美点を共感してもらうために、良質のワインを適正なマーケットに流通させたいと考え、主にソムリエのいる店舗などに卸しているという。

甲州ワインをもっと世界に

中央葡萄酒では、契約農家からぶどうを仕入れるだけでなく、自社農場で12ヘクタールに及ぶ栽培を手掛けている。また、ぶどう栽培に強い関心を持つワイン愛好家達による会員制の「栽培クラブ」を同農場で2007年に発足させた。このクラブでは、ぶどう畑での農作業、自分たちが栽培したぶどうで造ったワインの試飲会、ワインパーティなどのイベント、ワインを広く知ってもらうための情報発信などを行っている。

中央葡萄酒はそれ以外にも、大手百貨店のワイン売り場でのプロモーションや飲食店でのメーカーズイベントなどを開催し、海外だけでなく日本国内でももっと甲州ワインに親しんでもらいたいという思いを伝えている。和食が世界無形文化遺産に登録されたのも後押しとなって、世界の人々が和食と一緒に甲州ワインを楽しむ様子を目にする機会もきっと増えてくるに違いない。

企業データ
会社名 中央葡萄酒株式会社
代表取締役社長 三澤茂計
所在地 山梨県甲州市勝沼町等々力173
業種 果実酒類、リキュール類の醸造販売等
掲載日:2014年1月14日


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