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HOME > 事業を広げる > JAPANブランドで新市場に臨む

JAPANブランドで新市場に臨む 日本の感性はこうして生かされた


沖縄発の紅茶ブランド-「琉球紅茶」沖縄ティーファクトリー
長年、紅茶に携わる仕事を手がけてきた沖縄ティーファクトリー(沖縄市)の内田智子社長は、沖縄の土が紅茶葉の産地で有名なスリランカと同じ赤土であることを知った。地元の人に沖縄での茶葉生産を話しても信じてもらえなかった。だが、スリランカで理想の紅茶の作り方を教えてもらっていた内田社長は成功を確信していた。

名産地スリランカで紅茶の世界を知る

世界三大紅茶といえば、インドのダージリン、スリランカのウバ、中国のキーマンと言われている。その他にもケニアやインドネシアなどでも生産されているが、三大産地に匹敵するほどの茶葉は他に産まれていない。そこに新風を巻き起こしたのが、沖縄県にある株式会社沖縄ティーファクトリーだ。

沖縄ティーファクトリーの内田智子社長

沖縄ティーファクトリーの内田智子社長

沖縄ティーファクトリーの内田社長は、21年前から紅茶に携わる仕事を手掛けてきている。その間、仕事の関係でスリランカにも滞在し地元の言語であるシンハリ語を学んだ。内戦中のスリランカでシンハリ語を話す日本人は非常に少なかったこともあり、紅茶の茶園で地元の言葉でさまざまなことを教えてもらうことができた。世界中の茶工場は両手の動きからできていることを知り美味しい紅茶の作り方の原点である手もみの価値を教えてもらった。

繰り返す紅茶工場でのテイスティングにより経験値が上がり技術となり、紅茶のテイスティングをすれば産地や標高と品種が完璧に言い当てることができた。そこで自分の可能性を直感し、紅茶の世界を探求し点在する茶園を訪ねていった。その経験のおかげで紅茶について書かれた表現を雑誌などで見るだけで、その筆者が流通のどの段階で紅茶の茶葉に触れたかが分かるようにもなった。

同じ産地であっても茶葉の量によって表現が異なるのだという。「20年やっていると分かるようになる」と話すが、これも才能の一つであろう。きっかけはともあれ、シンハリ語を学んだおかげで、ブローカーとしてのキャリアだけでなく、紅茶の川上から川下までを徹底的に学び経験することができた。

沖縄を新たな紅茶の産地に

スリランカから帰国して定住の地と決めたのは出張で訪れたことのある沖縄だった。当時の沖縄には、ホテルが多いにもかかわらず紅茶を専門に取り扱う会社がなかった。取引先は東京にもあったが、スリランカでもできる仕事は沖縄でもできる。運よく、沖縄の取引先が在庫とオフィスを譲ってくれたおかげで、スムーズに仕事をスタートさせることができた。

沖縄ティーファクトリーの所有する茶畑

沖縄ティーファクトリーの所有する茶畑

沖縄で仕事をするようになってあることに気付いたという。それは、沖縄の土がスリランカと同じ紅茶葉の栽培に適した赤土だということだった。紅茶栽培に最適な環境はある、あとは苗。調べ進むと、国内産品種の「農林1号べにほまれ」が古いアッサム種だということがわかった。スリランカと同じ赤土に加え、紅茶の代表的な品種であるアッサムの原種を見つけた内田社長は、沖縄での紅茶栽培の成功を確信した。

このことを沖縄の人に話しても、このままの赤土で価値のある紅茶を生産できるとはなかなか信じてもらえなかった。しかし、スリランカで理想の紅茶の作り方を教えてもらっていた内田社長は成功を確信していた。沖縄ティーファクトリーの基本のビジネスであるOEM生産などの企業から委託を受け商品をブレンドするというビジネスモデルにおいては在庫を保有する必要はないが、自社生産するとなれば在庫が発生する。新しい高級紅茶産地である物語からプレセールスするには看板となるブランドも必要、明らかにリスクは大きいが、長く紅茶業界に携わり紅茶を知る自分だからこそ気づいてしまった可能性に目をつぶることはできなかった。

2000年、内田社長は紅茶の生産を始めた時から、元々ヨーロッパのマーケットを視野に入れていた。ヨーロッパはオールドアッサムの価値を評価してくれる市場。最初は失敗もしたが、日本で最高の栽培適地を探し、2007年に金武町に新しい産地を広げ茶畑ができた。その地を選んだのは、(1)赤土が多く汚染されていない、(2)紫外線量の多い朝日が当たる、(3)ミネラルが豊富な土地である、という条件をクリアしていたからだ。

スリランカ滞在時に、特殊な茶畑のテストで塩を加えて栽培した紅茶とそうでない紅茶を飲み比べたが、前者の方が圧倒的に美味しかった。沖縄には元々ミネラルを豊富に含んだ土地がある。しかも、オーククション価格を長年見ているので平均取引価格の高い紅茶は、高地ではなく海抜500メートルほどの土地で栽培されたものだと知っていた。すべての条件を適えるのは、金武町だった。これで世界に挑戦できると思い、2007年に苗を植えてから2年後の2009年、テスト生産が始まった。国産品種で作られたメイドイン沖縄の紅茶が完成したのは、紅茶づくりをはじめて9年目のことだった。

フランスで認められたニューワールド沖縄

2011年、内田社長は「琉球紅茶」を手に、フランスでのPRに向かった。それは、フランスの三大グルメガイドブックであるピュドロの関係者へのプレゼンテーションだった。直前になり、わかったのは誰も沖縄でできる紅茶に期待をしていないことだ。通訳を依頼していた人でさえ最初は積極的ではなかった。ピュドロのスタッフにやむなく内田社長自身が英語でプレゼンし関係者に紅茶を提供したところ、飲み始めて5分もしないうちに、「1カ月後に開催されるピュドロ・アワード・パーティで沖縄の紅茶を紹介したいので来てくれないか」という話が持ち出された。しかも、入口の一番良いブースを用意してくれる、とのことだった。断る理由は一つもない。

世界の新しい紅茶ブランド「琉球紅茶」

世界の新しい紅茶ブランド「琉球紅茶」

1カ月後、内田社長は再びフランスに向かった。パーティには美食関係者500人、ブースに立ち寄ってくれたパーティの出席者から「ヨーロッパから最も遠い、新しい紅茶の産地の誕生だ」と、お祝いの声が寄せられたことを嬉しく思ったという。

翌年は、ロンドンでPR活動を行った。長きにわたって沖縄の紅茶を応援してくれる人を見つけたいと考え、若くて将来有望な紅茶のエキスパートに鑑定を依頼した。「信じられない美味しさだ」と、彼は「琉球紅茶」を絶賛した。どの国の紅茶とも違う「琉球紅茶」独特の味が彼を惹きつけたのだ。紅茶の本場で沖縄紅茶の未来が開けたのである。

海外でのPRに挑戦できるのは自信があるのではなく、事前にテイスティングし品質を確認しているからだ。ピュドロでの評価とロンドンのPRでグローバルキャリアを積み自信を深めた「琉球紅茶」を今、本格的にヨーロッパにデビューさせようと考えている。また、さらにキャリアを積む上でもう一つ必要なのは国際コンテストのタイトルである。沖縄ティーファクトリーは、2年前から香港で開催される紅茶のコンテストにエントリーしている。ヨーロッパの大手小売店との商談も進んでおり、メイドイン沖縄の紅茶は着実にグローバルキャリアを積み、世界中に広まっていこうとしている。

メイドイン沖縄の新たな紅茶ブランド「琉球紅茶」

「琉球紅茶」は、日本でも大手百貨店の紅茶専門売り場で取り扱われているが、目の高い顧客が内田社長のブレンドする紅茶のファンになっている。沖縄で採れた茶葉だけで作る『月夜のかほり』は、100グラム1万円もする非常に高価な茶葉だが、1年待ちの商品になっているという。沖縄ティーファクトリーのファンは国内外に着実に増えてきている。

沖縄ティーファクトリーの商品群

沖縄ティーファクトリーの商品群

内田社長は、ブランディングのために気を付けていることがある。自分の産み出す紅茶のファンをがっかりさせないために、商品の販売先を絞っているのだ。土産物屋や購買率の低いお店には絶対に出さない、出せない。紅茶の購買率はデータによると100人に3-4人しか買わない商品だが、高級スーパーマーケットやホテルでは20人に1-2名が購買する商品となる。そのような場所にお客さまがいると考えている。

取材においても、媒体やその企画の趣旨を踏まえて引き受けるようにしている。これは沖縄で始まった物語を伝え続けるためだ。内田社長の「沖縄の地で自分が見つけた価値を大事にしたい」という思いが、ここまでの物語を描き上げてきた。この物語は偶然できたものではない。スリランカで積み上げたキャリアと身に付けたスキルが確かな道を作ったのだ。ここまでの道のりは容易ではなかったが、応援してくれる人々がいたからこそできたこと。茶畑は100年持つので、これからも地元の人に作り続けてもらいたいと考えている。

「本当に夢が実現している」と、昔取材で会った担当者に言われることが多いという。内田社長が取材で公言してきたことがすべて実現しているということだが、内田社長にとっては夢を語ったのではなく、その時から実現する姿が見えていたのだという。今は、日本人が活躍する外国の地域一番店に「琉球紅茶」が並べられることを目指している。買い物に訪れた日本人に、「沖縄のこの会社も頑張っているんだ」と思われるようになりたいという。これも数年のうちに実現するはずだ。

企業データ
会社名 株式会社沖縄ティーファクトリー
代表取締役社長 内田智子
所在地 沖縄県沖縄市山内3-23-15
業種 紅茶の製造・販売等
掲載日:2014年1月 8日


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