本文とサイドメニューへジャンプするためのナビゲーションスキップです。

中書企業の農業ビジネスに挑むトップに戻る

2013年6月 3日

海外輸出で紫蘇(しそ)のブランド化に挑む-青紫蘇農場-

キーポイント
  • 商品の値段は自ら決める
  • 海外では高級店で販売してブランド化を図る

日本のハーブ「紫蘇(しそ)」をアジア、欧米にガンガン輸出する会社がある。農業生産者の吉川幸人さんが経営する青紫蘇農場(熊本県合志市)だ。
 吉川さんは1980年代半ばから本格的に家業の農業を継ぎ、92年に法人化して有限会社吉川農園を設立した。その前年の1991年、国内市場に流れ込む安い外国産野菜の生産現場を見てみたいと渡航、数か国をめぐってみた結論は、外国の野菜に比べて日本の野菜や果物は味が濃くておいしい、ならば、逆に日本の野菜、果物こそ海外で十分に販売できるのではないかということだった。

海外にガンガン輸出される青紫蘇農場のしそとその加工品(ドリンク) 海外にガンガン輸出される青紫蘇農場のしそとその加工品(ドリンク)

海外にガンガン輸出される青紫蘇農場のしそとその加工品(ドリンク)

経営を安定化させるために…

ただし、海外に挑戦するためには企業経営を安定させなければならない。苦労して1年間働いても、年末には資材を調達するために借金しなければならない。そんな豊作貧乏を地でいくような農業ではだめだ。それから脱するためには、生産した農産物の値段を自ら決められる農業に変えなければならない。そこで1994年から栽培品目をしそだけにした。毎日出荷でき、軽量ゆえに輸送コストも安いからだ。さらに、ブランド化と差別化を図るため有機栽培に替えた。当時のしそは残留農薬がもっとも高い野菜だったが、これを根本から変えた。
 また、有機栽培だと虫食いや穴など品質を揃えるうえでデメリットもあるため、生鮮野菜だけでなくドリンクやそうめんなど加工品の開発にも着手した。そして1998年から国内各地の商談会を巡り、有機栽培のしそと加工品を売って歩いた。それによってイトーヨーカドーやサニーなど大手量販店との取引が始まった。さらに吉川農園が生産したしそを売り、かつ自ら加工品を製造・販売するための会社として1999年に青紫蘇農場を設立した。

海外の富裕層をターゲットにブランド化を図る

大手量販店との直接取引をはじめとして有機栽培のしそとその加工品の安定供給によって経営を安定化させた吉川さんは、輸出に向けて2004年に本格的な市場調査を始めた。ちょうどこの年、自民党内で農産物輸出促進研究会が発足し、それを機に熊本県にも「くまもと県農林水産物等輸出促進研究会」が設立され、その会長に就いたことも吉川さん自身が輸出に踏み出すきっかけになった。
 同年、くまもと県農林水産物等輸出促進研究会を率いた吉川さんは上海、米国(ロサンジェルス、ニューヨーク)、香港、シンガポール、韓国などを駆け巡った。さらに2005年にはロサンジェルス、ニューヨークで日系スーパーの購買担当者や現地のバイヤーを集めて商談会を実施。同様に香港、シンガポール、韓国でも商談会を催した。そして2006年、いよいよ吉川さんは香港へしその輸出を始めた。取引相手は現地の最高級小売店「シティスーパー」だ。
 「少量のしそを地元の最高級レストランやスーパーだけに卸すことでブランド化を図ろうと思いました」
 最高級店に来る現地の富裕層をターゲットにブランド化を図る。つまり、安く大量に売るのでなく、品質の高いしそを高所得層に販売することでブランド品へと育て上げる。それが吉川さんの輸出戦略だ。
 その後も青紫蘇農場は2007年にシンガポールへしそとドリンクを輸出。さらに2008年には米国へしそ、ついで2010年にドバイの最高級日本食レストランへしそ、ドレッシング、ドリンク、めん類、調味料というように毎年販路を拡大し、2011年には英国、フランスにしそと香料を輸出した。
 青紫蘇農場にとって海外輸出のファースト・ステップが現地での商談会だが、それについて吉川さんは、常に現地のジェトロ事務所や日本人会や県人会、量販店、日系レストランの関係者に声をかけて集客を図る。また、市場調査の際の情報収集では、現地の領事館、ジェトロ事務所、県人会などの関係者の間に構築したネットワークをフルに活用する。それが海外開拓における吉川さんのビジネススタイルだ。

香港の販売会でしそと加工品を売る

香港の販売会でしそと加工品を売る

独自のシステムで商品を安定供給

既述のように海外および国内でビジネスを遂行するためには、年間を通してしそを安定供給できるシステムが重要になり、吉川さんも独自にそのシステムをつくり上げている。
 それは生産から出荷までをITで統合管理するシステムで、従来のように習慣や勘に依る栽培ではなく、ハウスの気温、土壌温度、土壌水分など生育の要因を細かく測定、管理しながら栽培し、栽培後に人手で収穫したしそは画像処理器で選別して出荷するというように、生産から出荷まで全工程のデータ・情報をITで一元管理し、それにより生産から出荷まですべて段階の商品情報を把握することでトレーサビリティも確立させたシステムを構築している。
 ちなみにこのような独自システムの構築により、青紫蘇農場は2006年、施設野菜では日本で初めて「生産情報公表JAS規格」認定を取得している。

ブレない信念

現在、青紫蘇農場の年商は約1億8000万円で、そのうち約1000万円を輸出で稼いでいる。
 「これからは熊本のしそだけでなく、九州で生産されるさまざまな農産物、加工品を一堂に集めて海外で売れば、九州ブランドとしてビジネスができますので、販路はまだまだ開拓できると思います」
 そのためには実行あるのみ。それが吉川さんの信念だ。
 「海外で勝負して果たして儲うかるの?と悩んでいるだけでは海外ビジネスは拓けません」
 考え悩むのでなく実際に海外に出てみる。それにより自らの皮膚感覚で海外市場を計ってみる。それこそが重要であり、各種の調査データのみならず自ら得た皮膚感覚があるからこそビジネス展開を考えられる。その信念が現在までの青紫蘇農場の海外ビジネスをつくり上げてきた。そしてこれからもその信念はブレることなく貫かれていく。

企業データ
企業名 or 店名 青紫蘇農場株式会社
代表者 吉川幸人
所在地 熊本県合志市野々島5472-7

このページの先頭へ