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2013年2月12日

サイエンスを基盤にしたベビーリーフ栽培-果実堂-

キーポイント
  • 経験や勘もすべてデータベース化して栽培技術を確立
  • 常に改善を重ねて生産効率のアップを図る

農業は「ものづくり」なのだから技術力がもっとも大切であり、さらにその技術を裏付けるサイエンス(科学)がとても重要になる。それを信条にベビーリーフを有機で土耕栽培するのが農業法人「果実堂」(熊本県益城町)だ。同社は、ベビーリーフを大規模に土耕・有機栽培する日本でも唯一の農業法人だ。

ベビーリーフは発芽後10-30日以内の野菜の幼葉。抗酸化活性が強く、ミネラルが豊富など栄養価が高い

ベビーリーフは発芽後10-30日以内の野菜の幼葉。抗酸化活性が強く、ミネラルが豊富など栄養価が高い

ベビーリーフは、発芽後10-30日以内に収穫する野菜の幼葉の総称で、100種類もあるといわれ、そのうち果実堂では15種類のベビーリーフを栽培する。
 ベビーリーフは抗酸化活性が強く、ミネラルが豊富など栄養価は親葉に比べて数十倍も高い。また、最短15日で栽培できることから年間で10毛作ができ(土耕の場合。水耕なら24毛作も可能)、生産のメリットも大きい。さらに単価が2000-2200円/kgと高く、潜在市場は200-300億円(現在の国内市場規模は50-80億円)と大きいため、農業経営で取り扱う商品としては有望な野菜だ。

経験や勘もデータ化した

「サイエンス抜きで農業を語ることなかれ」(代表取締役社長・井出剛さん)が信条の同社は、毎日の気候、水質、土壌、肥料などのデータを収集・解析してベビーリーフの栽培に活かしている。また、農業法人では珍しく自前の研究所を備えている。
 「当社は2005年に創業しましたが、当初は農産物の栄養価や機能性などを分析する受託事業からの出発でした」(井出さん)
 創業時の社員は7名。全員が白衣をまとい、試験管や分析器を使いこなす研究者集団だった。それが2年後の2007年、地元の建設業者が撤退したベビーリーフ栽培を引き継ぐことになった。
 しかし、素人集団がいきなり農業を始めたわけだから、当然のごとく栽培はうまくいかない。育つはずのベビーリーフが育たない、台風や寒冷など大きな気候変動へ適切に対処できない。理論理屈だけでは農業はできなかったのだ。
 それを見かねた地元の農業生産者が、土壌の詳細な状態や散水のタイミングなど経験に基づいたアドバイスをしてくれた。それによって2010年からはベビーリーフの栽培でビジネスできるめどが立った。
 「その当時に地元の農家さんから教えていただいた農作業の経験と勘やその後の各種の環境情報をデータベース化することで、当社独自のベビーリーフ栽培マニュアルを確立できました」(井出さん)

現在、果実堂は537棟のビニールハウスで年間360トンのベビーリーフを栽培する

現在、果実堂は537棟のビニールハウスで年間360トンのベビーリーフを栽培する

ビジネスとしての農業に軸足を置いている

現在、同社は537棟のビニールハウス(30ha)を所有して年間で360トン(10毛作)のベビーリーフを栽培する。収穫したベビーリーフは本社工場(有機JAS認定工場)でパッキングされ、全国に出荷される。
 顧客は全国の百貨店・量販店など約140社。すべてが直接取引だ。注文は当日の15時までに受ければ、翌日10時までに配送する。研究から栽培および出荷までベビーリーフの生産にかかわるすべての工程のデータをITで一貫管理しているため、トレーサビリティ(履歴管理)による品質や安全性の保証は万全だ。

「農業は『農』と『業』をわけて考えなければいけません。つまり、自然や文化に重きを置く『農』とビジネスに重点を置く『業』であり、それらは当然異なるものです。そして、果実堂はあくまでもビジネスである『業』に軸足を据えてこれからも進んでいきます」(井出さん)
 ビジネスとしての農業を追求する同社が目指すのは、当て字にはなるが「能業」(品質のよい野菜を効率的に生産すること)と「脳業」(サイエンス・データベースに基づいて野菜を栽培すること)だ。そのためにも5Sやコストダンなど第2次産業の改善手法を農業に導入し、高品質の野菜を効率よく生産することを追求している。

生産拠点を全国へ展開していく

同社は32名の社員を抱えるが、それぞれの出自が医薬業界、IT業界、自衛隊などバラエティに富んでいる。平均年齢も35歳と若い集団だ。第2次産業の改善手法を積極的に取り入れているため、ベビーリーフの栽培マニュアルに対する社員各自の改善提案も活発で、採用されればマニュアルに盛り込まれるとともに賞金も得られる。
 2012年度の同社の売上は約7億円。いまのところ生産拠点は熊本県益城町だけだが、今後は順次全国に拠点を構築していく。実際、毎年全国から耕作放棄地の使用依頼が同社に舞い込んでくる。
 「そのためにもサイエンス、技術がますます重要になります」(井出さん)
 依頼を受けるのが耕作放棄地なだけに土壌の状態がまったくわからない。そのため土壌のデータを収集・分析し、その土壌の成分が植物にどのように代謝されるのかなどを徹底的に調べる。それによって初めて単位面積あたりの収穫量を導き出せ、また、季節によって変動するベビーリーフの栄養価も算出できるわけで、そうしたバックデータがなければ未知の農地を用いてのビジネス戦略も立てられないということだ。
 サイエンスに基づく農業ビジネス。果実堂のビジネスモデルにブレはない。

企業データ
企業名 or 店名 株式会社果実堂
代表者 井出剛
所在地 熊本県上益城郡益城町田原1155-5 熊本テクノリサーチパーク

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