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2013年2月 4日

生産者と料理人をつなぐ青果の架け橋-マチルダ-

キーポイント
  • 産直青果の情報をこまめに顧客に伝える
  • 市場流通の商品も扱い事業を拡大

1994年に公開されたアクション映画「レオン」。ジャン・レノ演じる殺し屋レオンと12歳の少女の純愛をアクションシーンを織り交ぜながら描き大ヒットした。この映画で女優ナタリー・ポートマンが演じた愛らしいながらも気丈な少女の名が「マチルダ」だった。
 「映画レオンのマチルダが大好きで、その名前を会社名として頂きました」
 映画の中の少女同様に気丈で快活に話すのが青果卸会社「マチルダ」の代表取締役・田川浩子さん。2006年秋の29歳に個人で青果卸事業を起し、翌年に株式会社マチルダを設立した。

つねに生産現場で青果および生産者と対話する田川さん(左)

つねに生産現場で青果および生産者と対話する田川さん(左)

ならば自分で始めよう

田川さんは栄養士専門学校を卒業後、イタリアンレストランのサーブ(接客)を経て大手商社に入社するも、食肉卸で起業する知人に誘われて脱サラ。その卸会社で顧客のレストランシェフから「野菜も卸してほしい」と請われ、産地に直接買い付けに赴いた。それが青果と関わるきっかけだった。
 「やがてその食肉卸会社の経営が悪化したため退職し、青果の卸会社に転職しましたが、その会社も短期間で事業を閉じてしまいました」
 その時点で田川さんは無職になってしまった。
 「ただ、青果卸会社では産地と直接ビジネスをしていたため、仕入先として50軒の農家さん、お客さまとして100軒の飲食店さん、小売店さんを抱えていました」
 ならば自分で事業を始めよう。そう田川さんは決意した。2006年9月だった。そこで田川さんは、かつて勤めていた大手商社の倉庫(埼玉県)の一角を間借りし、農業生産者から直接仕入れた青果を顧客の飲食店や小売店に販売する卸売事業を1人で始めた。
 事業を始めた当初から、オリジナルのビジネスツールとしているのがA4判のフライヤー「マチルダ プレス」(毎月発行)だ。そこには商品(青果)の特徴や生産者の思い、栽培方法などが写真と共に記されている。産地を巡る田川さんが生産者から直に見聞きした情報が掲載される、生産者から顧客へのインフォメーションツールにもなっている。

独自のWeb受発注システムで注文から12時間以内に配達

2007年4月に法人組織としてマチルダを設立。ビジネスは比較的順調に推移し、会社設立の初年度から年商1億円を越え、2009年には独自のWeb受発注システムを開発した。このシステムでは商品の入荷・在庫情報(毎日更新)を顧客が瞬時に読め、また商品を発注できる。さらにマチルダが産地から直接収集した情報も掲載されている(会員のみ利用可)。
 「お客さまからは配達当日の午前0時30分まで注文をお受けし、当日の午前中までにお届けします」
 産直の青果をこれだけ短時間で受注・配送するためには、それ相応の在庫を抱えているのだろうと思いきやさにあらず。在庫は必要最小限に留めている。
 「お客さまの前週の注文数量から翌週の注文数量を予測し、契約農家さんには週単位で見込み発注しています」
 その予測はほぼ外れることはないという。また、契約農業生産者とはシーズン前におおまかな作付け計画を詰めておき、産地から入荷した青果は倉庫に一時保管しておくが、顧客の多くが「おまかせセット」(マチルダが選んだ青果のセット)を注文するため、ここで多少の在庫調整ができ、在庫も2日ほどで一掃してしまう。
 むしろ、独自のWeb受発注システムを導入以降、問題となったのが物流経費だった。
 「産地の農家さんからは宅配便で当社に青果が送られ、当社からはお客さまに宅配や委託配送で商品を届けていましたので、物流の経費が大きくなっていきました」
 起業からしばらくは、倉庫を間借りしていた大手商社の物流網を利用して顧客に配達していたが、やがて大手商社も青果卸に進出したため物流網の利用を差し止められてしまった。そこで複数の運輸会社の共同配送を用いる物流ルートを築いた。

会員に登録すると産直青果の入荷・在庫情報の確認と発注ができるマチルダのWeb受発注システム

会員に登録すると産直青果の入荷・在庫情報の確認と発注ができるマチルダのWeb受発注システム

ビジネスの拡充と物流網の改革

さらに2011年に築地卸売市場に倉庫と事務所を移し、物流網のさらなる改革とビジネスの拡充を図った。
 「起業した頃から市場外流通が伸びていたので市場は必要ないと考えてきました。しかし、お客さまが増え、それに従いご注文も多様になっていきましたので、産直の青果だけでは対応しきれず、市場からも商品を調達するようになりました」
 従来は、雪割り人参(新潟のブランド野菜)や温海かぶ(山形の伝統野菜)など産直ならではの青果を販売することがマチルダの特徴だったが、顧客が増えるにつれ、だいこん、キャベツなど市場で頻繁に流通する青果も求められていった。それに対応するため市場に流通する青果も扱い始めてビジネスを拡充し、調達の利便性のため卸売市場の中に拠点を構えた。
 さらに物流網も改革し、卸売市場内の荷受と連携し、産地から卸売市場へ向かう輸送便にマチルダの契約農業生産者の青果を同梱してもらい、顧客(飲食店、小売店)への配送も市場が都内を回るトラックに載せてもらうことで物流経費を1/10に圧縮させた。

2012年5月には大田卸売市場に倉庫とオフィスを移転し、さらに同年8月から大手外食チェーンとの取引が始まったことで、売上が月商2000万円超と従来に比べて倍増した。
 「起業からしばらくはものを持たない主義で、他人のフンドシで相撲をとっていましたが、最近は変わってきました」と田川さんは苦笑いしながら話す。
起業当初はオフィスや社員など有形無形の資産は持たず、旧知の大手商社の物流網を拝借しながら産地と顧客を仲介する身軽なビジネスを身上してきた。が、独自のWeb受発注システムを導入し、多品種少量の商品を多数の顧客に配達する中に独自の物流網が必要となり、さらに顧客の要望に応じて市場流通の青果を扱ううち、ビジネスが大きく育つにつれ身軽なビジネスから脱却する必然性を理解した。

現在、マチルダは社員5名、アルバイト3名の陣容で、400軒の飲食店や小売店と100軒の個人顧客を抱え、120件の農業生産者と契約している。取り扱う青果の6割は市場からの調達、4割が産地からの直接調達だ。
 契約農業生産者とは、市場の価格情勢を勘案しながら取引価格を双方の納得できる線で調整している。
「片手間で市場外流通に出荷するのではなく、本当に品質のよい商品をマチルダに納品してくださる農家さんとだけお付き合いするようにしています」
 その農業生産者にとって自ら栽培した野菜が誰に買われてどのように食べられるのか。それを具体的に知ることが生産するうえで大きなモチベーションになる。だから、マチルダでは生産者を卸先の飲食店に連れて行き、そこで実際の料理を口にしてもらう。また、料理人にも生産者を知ってもらう。そんな仲介も積極的にしている。
 「それによって産直のおいしい野菜が増え、それを料理する人や飲食店がさらに増えてくれればうれしい」
 将来の希望を口にする田川さんの瞳は、映画の少女・マチルダと同様しっかりと前を見据えていた。

企業データ
企業名 or 店名 株式会社マチルダ
代表者 田川浩子
所在地 東京都大田区東海3-2-7 大田市場内関連棟A-15

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