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2012年9月14日

栽培技術だけでなく経営感覚に長けた人材を育成する-パソナ農援隊-

キーポイント
  • 生産から加工、販売までと農業ビジネスの基礎を研修
  • 企業経営に近い経営感覚を既存の農業生産者にも伝授

新しく農業生産を始めようとする農業経営者を育成する。それがパソナ農援隊のミッションだ。同社は総合人材サービスを展開するパソナグループの子会社であり、パソナグループが2003年から手がけてきた農業支援事業を継承して2011年12月に設立された。
 「日本の農業は後継者が減少し、耕作放棄農地が広がるなど疲弊する一方です。それをなんとかしたいと2003年からパソナが農業分野への新規就農を促すプロジェクトを手がけてきました。それを中心に農業の活性化をサポートすべく設立したのがパソナ農援隊です」
 そう設立の経緯を語るパソナ農援隊の田中康輔代表取締役社長によれば、同社の事業には3つの柱があるという。新規就農者を支援する「パソナチャレンジファーム」、農林漁業の経営者をサポートする「ビジネススクール」、そして都市化型農場をプロデュースする「アーバンファーム」だ。

新しく農業に従事する人たちを支援する「パソナチャレンジファーム」(淡路島)

新しく農業に従事する人たちを支援する「パソナチャレンジファーム」(淡路島)

農業ベンチャーを支援する

「いま、若者の間で農業への関心が高まっていますが、新規に就農するのは容易なことではありません。そこで農業に携わりたい若者をサポートし、農業ベンチャーを支援するのがチャレンジファームです」(田中社長)
 1つめの事業の柱であるチャレンジファームは、新規就農希望者を最長3年間の契約社員として雇用し、自治体の協力のもと同社が地権者から借り受けた農地で野菜の栽培技術と農業経営(事業計画策定や販売の実践)および地域活性化について学ぶ。現在、同社が所有する農園が兵庫・淡路島(約10ha)と栃木県芳賀町(約2.5ha)の2カ所にあり、そこでは35名の研修生が独立を目指して技術とマネジメントの習得に励んでいる。
 同社では、これからの新規就農者に必要なのは農産物の生産技術だけでなく、加工・販売・マーケティングなどビジネスとして農業を捉えることと考えている。そのため、研修の1年目は栽培技術の習得に集中するが、2年目以降は農園内の加工所でドレッシングやペーストなどの加工技術も学ぶ。さらに生鮮野菜や加工品を地域のスーパーマーケットや直売所などで販売することで、単に農産物を生産するだけでなく加工や販売の実務を通して農業ビジネスの基礎を学ぶ。そして実務を通して築いた地域での販売ネットワークは独立後に活かせるというわけだ。

チャレンジファームを卒業する際、研修生は研修地の地元自治体の斡旋で農地を取得するか、同社が所有する農園の一部を地権者から取得して農業ベンチャーとして独立する。同社は独立後の研修生に対しても、農機・農具のレンタルや栽培技術指導などを通して農業経営を側面から支援する。淡路島の開園は2008年、栃木のそれは2010年だが、研修中に独立していくメンバーも多く、すでに数多のメンバーが農業経営者として一本立ちしている。

他産業から農業ビジネスへの参入を企図する人たちにビジネススクールを開講している

他産業から農業ビジネスへの参入を企図する人たちにビジネススクールを開講している

他産業の従事者も農業へと誘う

農業ベンチャーばかりでなく、他産業から農業に従事しようとする人および既存の第1次産業従事者にとっても経営感覚は重要になる。その観点から同社は2つめの事業の柱であるビジネススクール事業として「Agri-MBA(農業ビジネススクール)」と「農林漁業ビジネス経営塾」を実施している。前者では、農業や関連ビジネスなどに興味のある人を対象に農業経営の基礎や農業に参入する企業の事例などの座学を教え、さらに実際の農業現場の視察や農作業などの実務を通して経営感覚の豊かな農業従事者を育成することで農業分野での雇用創出につなげることも企図している。
 また、後者では農林漁業経営者などを対象に他産業に従事するベテランの経験やアイデアを紹介することで、農林漁業経営者がより企業経営に近い経営感覚を養えることを目指している。

さらに3つめの事業の柱だが、パソナ農援隊の属するパソナグループは、入居するビル内に畑や野菜の水耕栽培設備を設け、自然と共生する空間を演出している。この空間を他社のビルにプロデュースする事業が3つめの事業の柱であるアーバンファームだ。現在、同社は大手総合商社と提携し、マンションなどへアーバンファームの提案を始めている。

チャレンジファームで生産した加工品は通販、直売、卸売と広く販売している

チャレンジファームで生産した加工品は通販、直売、卸売と広く販売している

農業の活性化により広範な雇用が生まれる

既述のチャレンジファームで収穫された野菜は社内および社外で販売される。特に社外での販売では、同社が首都圏の企業のオフィスや工場に出向き、その企業の社員に農産物を販売するサービス「オフィスdeマルシェ」を2012年4月から始めた。いわゆる出張直売であり、出張先に応じて週単位もしくは月単位で実施する。
 また、同社はチャレンジファームで収穫された野菜以外にも、ファーム近隣の農業生産者から集荷した野菜を自社の通販サイトを介して販売している。さらにはチャレンジファームで加工された規格外の野菜によるソースやスープ、ドレッシングなどの加工品も通販での直売のほか、全国の高級食材を扱うスーパーや生協へ卸売している。
 農業は作物を生産するだけでなく、加工や流通など周辺産業と密接につながっているがゆえに基幹産業として重要であり、その意味でも農業が活性化することで周辺産業も含めて広範囲な雇用が生まれ得る。その農業を担う経営者の育成に向けて同社は着実に歩を進めている。

企業データ
企業名 or 店名 株式会社パソナ農援隊
代表者 田中康輔
所在地 東京都千代田区大手町2-6-4

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