本文とサイドメニューへジャンプするためのナビゲーションスキップです。

中書企業の農業ビジネスに挑むトップに戻る

2012年9月 3日

年間50億円を売り上げる6次産業化の先駆け企業 -伊賀の里 モクモク手づくりファーム-

キーポイント
  • 付加価値の高い農産品だからこそ価格は農家が決める
  • 若者が働きたくなる農業経営を実践

いまや農業も農(畜)産物をつくるだけでは成立しない。加工・販売まで自らの手でやる。それが農業の生き残る道であり、その方途を確立することが農業で若者が生活できる環境を整えることになる。いま話題の6次産業化を20年以上前に始めていた会社がある。三重県伊賀市で体験型ファクトリーファーム(農業公園)「伊賀の里 モクモク手づくりファーム」を経営する株式会社伊賀の里モクモク手づくりファーム。直営農場・農産加工工房・ファクトリーファームの運営および農産物の通信販売などを事業の柱とし、年間売上50億円、社員150人(ほかにパート150人、アルバイト500人)を誇る農業法人だ。

敷地面積14haのファクトリーファーム「モクモク手づくりファーム」には年間50万人が訪れる

敷地面積14haのファクトリーファーム「モクモク手づくりファーム」には年間50万人が訪れる

同社が推進する農業の6次産業化(生産・加工・販売)には独自の理念がある。それは、原料や味および安全・安心に徹底的にこだわった付加価値の高い農産品を消費者に提供し、その際の価格は付加価値を生み出した農家自らが決めるということだ。かつて、地元ブランド豚のハムを市場で売ろうとした際、大手流通のバイヤーに価格決定権を握られ、安価に卸さざるを得なかった苦い経験から得た理念だった。
 そして、その理念を理解・支持してくれる消費者を「仲間」と位置づけ、同社の農産品やサービスを楽しんでもらいながら、農と食の関連を学んでもらい、日本における農業の大切さを知ってもらおうとしている。

消費者ニーズはそこにあった

同社が付加価値の高い農産品の重要性に気づいたのは1988年のことだった。その前年(1987年)に前身の「ハム工房モクモク」を設立し、地元の銘柄豚「伊賀豚」を使った手づくりハムの生産を始めたが、自慢のハムはさっぱり売れず、赤字経営の厳しい船出となった。が、翌年秋に地元PTAの要請でウインナーづくりを体験する教室を設けると大盛況となり、さらに口コミで評判が広がって半年先の予約までいっぱいになった。予想外の反響を目の当たりにしながら、ウインナーづくりを体験するという行為(=付加価値)に消費者ニーズがあることがわかり、それを事業の主体として1995年に設立した体験型ファクトリーファームが現在のモクモク手づくりファームというわけだ。

手づくりウインナーの体験教室は大人気

手づくりウインナーの体験教室は大人気

ファクトリーファームとは、農業や農村について学びながら余暇を楽しむ農業公園のことだが、敷地面積14haのモクモク手づくりファームには、ウインナーづくり、乳しぼりなど食農について体験できる設備が5つあり、さらにレストラン、直売所、宿泊施設、貸し農園などがある。そして年間の来場者は50万人を数える。
 モクモク手づくりファームの体験設備はただ遊ぶだけでなく、自然環境と農業と食物の関連性を学べるように工夫している。例えばハウスでのいちご狩りの場合、モクモク手づくりファームでは食べ放題のいちご狩りはしない。食べ放題にすると、料金分の元を取らなければと一心不乱に摘み取り、間違って摘んだ未熟のいちごもその場で捨ててしまうなど、おおよそ食物への感謝や敬意とは大きくかけ離れ、食物の大切さを学ぶのとはま逆の場となってしまうからだ。そこで食べ放題ではなく、いちごについて実のつけ方やミツバチを介する受粉など自然と食物の関連と大切さを学んでからいちごを摘み取るようにしている。
 その根底にあるのは、消費者に農と食のつながりを知ってもらうことが農業を元気にするという考え方だ。その考えに基づき同社は食育にも取り組んでいる。2005年には食育の拠点として滞在型食農学習施設や牧場、ミルク工房を開設し、子どものみならずその親の世代にも実体験を通して食と農の大切さを知ってもらおうと努めている。

生産・加工・販売を自ら行う。それがモクモク手づくりファームの事業の根本

生産・加工・販売を自ら行う。それがモクモク手づくりファームの事業の根本

次代を担う若者が門戸をたたく

同社の理念および食と農の大切さを知ってもらうための行動は、消費者に確実に根付いている。それは年間50万人という来場者数ばかりでなく、モクモク手づくりファームのファンクラブである「ネイチャークラブ」の会員数4万2000人にも表れている。
 さらに、消費者の理解が広がると同時に、同社の理念と行動に共鳴する多くの若者がモクモク手づくりファームで働きたいとその門戸をたたきに来るようになった。最近は毎年300-500名の就職希望があり、最終的に15名が採用されるが、東大を始めとした大学卒の若者も多数集まっている。
 「加工・販売までを農業としてとらえることで、多くの若者たちが農業でめしを食っていける環境を整えること。これが、農業者としての私たちモクモクが考えている『ロマンと夢のある21世紀型農業』です」(同社ホームページ「社長あいさつ」より)
 まさに、同社の理念が消費行動だけでなく、次代の農業を支える人材の掘り起しにもつながっている。今年も6名の若者が社員としてモクモク手づくりファームの事業の担い手としてスタートを切った。

企業データ
企業名 or 店名 株式会社伊賀の里モクモク手づくりファーム
代表者 木村修
所在地 三重県伊賀市西湯舟3609

このページの先頭へ