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2012年8月28日

建材メーカーが農業で新しいビジネスモデルを確立 -横須賀軽金-

キーポイント
  • 農産物のつくり手・買い手を組織化
  • 飲食店の食品残渣を堆肥に再生利用

建築事業・施工企業の横須賀軽金は、農産物における自立循環型リサイクルループ「ヤサイクル」を第2の事業の柱として手がけている。
 ヤサイクル事業とは、飲食事業者から排出された調理くずや残飯などの食品残渣(同事業では食品資源と称する)を堆肥へ再生利用し、それを用いて農業生産者が栽培した野菜・果物などの作物を(食品資源を提供した)飲食事業者などへ還流させる循環システム(ループ)だ。

地域の自立・活性化も図れる

ヤサイクルのきっかけは、同社が2008年に始めた食品資源再生(食品残渣を堆肥にする)機の販売だった。同事業の生みの親、小野仁志代表取締役は語る。
 「お客さまからは、食品リサイクル法などの規制で廃棄物を減らせ、環境にも貢献できるという機械のメリットは理解できるけど、できた堆肥はどうすればいいの?できた作物はどうなるの?採算性はどうなの?という反応がほとんどでした」
 単に食品資源再生機を販売するだけでは購入者のためにならない。それを実感した小野社長は「ならば、肥料ができた以降のビジネス・フローは当社で担おう」と考えた。機械を購入したユーザーの堆肥がつくりっぱなしにならないよう、同社がそれを農業生産者に無償提供し、収穫した農産物を農業生産者から仕入れて販売する。食品残渣を出発点に肥料、農産物へとつながる連鎖の構築だった。しかも、農産物を(食品残渣を排出した)飲食店に販売すれば連鎖をループにできる。
 「このループを築くことでその地域の自立と活性化を図ることもビジネスの大きな目的としました」

飲食事業者-農業生産者をつなげる自立循環型のリサイクルループ「ヤサイクル」

飲食事業者-農業生産者をつなげる自立循環型のリサイクルループ「ヤサイクル」

農業生産者からの反発

08年12月、このビジネスモデルをまず地元の横浜ベイシェラトンホテルに提案すると、循環が完結できるのであればとメリットを感じてもらい導入に至った。その一方で苦労したのが農業生産者にヤサイクルを理解してもらうことだった。
 「われわれにごみで野菜をつくらせる気か!」
 食品資源再生機でつくった堆肥の使用を頼みに行った農業生産者の反応は怒りに近いものだった。無理もない、日本でリサイクルといえば廃棄物の汚いイメージが強すぎるため、バイオマスでつくられた堆肥と説明してもすんなりとは理解してもらえない。が、再生できるものはごみではない。その信念をもって小野社長は農業生産者にねばり強く説いて回り、ようやく三浦半島で農業を営む5名の農業生産者グループから賛同を得てヤサイクル事業に参加してもらった。

現在では口コミで農業生産者の輪が広がり、三浦半島では30件の農業生産者がヤサイクルに参加する。ヤサイクルでは農業生産者に無料で堆肥を提供し、農産物を栽培する際の堆肥全体の1割以上を提供肥料にすることなどを網羅して農業生産者と覚書を結んでいる。
 事業としては販売計画に基づく仕入れをしたいところだが、製造業では常識の売上・経費・利益に基づく企業経営が農業分野ではすんなりと受け入れてもらえない。とくにヤサイクルを始めたころは顕著だったが、農業生産者にとって計画的に栽培するとう考え方が定着しておらず、むしろ天候が読めないために計画を請け負うことに臆病にならざるを得なかった。
 しかし、無理には販売者の論理を押し付けない。相互理解の段階に応じて計画販売の意味を理解してもらうよう努めている。また、最近は全国の農業生産者からヤサイクルへの問い合わせが相次いでおり、同社の肥料を提供し、全国の農業生産者から農産物を買い付けることで計画販売を補完している。
 「野菜などの旬はほぼ3カ月ですから、例えば三浦半島で収穫の終わった野菜をさらに北の地方から調達できれば販売計画が立てられます」
 実際、地方の農業生産者にも関東地方に販路を求めケースが多く、ヤサイクルへの参加を打診する生産者が増えている。

天候に左右されるため農産物の計画的生産には農業生産者は躊躇しがちになる

天候に左右されるため農産物の計画的生産には農業生産者は躊躇しがちになる

さらに販路を拡大する

現在では、ホテル、日本料理店、食品工場などを主体とした33の自立循環型リサイクルループ(ヤサイクル)が全国で稼動している。
 ヤサイクルで同社が得る収益源は、食品資源再生機の販売およびメンテナンス、そして農産物の販売だ。農産物についてはその加工品も含めて直販と通販もしている。
 「事業を始めた当初は採算など取れず資金もどんどん出ていきました。それでも農家さんの生産物をできるだけ多く売りたいと熱中してきました。この事業は農家さんの実情がわからないとできないことを学びました」
 今夏には八百屋カフェ「ヤサイクル」を地元にオープンした。野菜を店頭販売するだけでなく、それを用いたスープやジュース、さらにヤサイクル肥料から収穫された小麦でつくったパンなどが店内で食べられるカフェだ。ヤサイクルをさらに強化するための販路の拡大だ。今後の目標はこのカフェを1つでも多く展開して農産物を多くの消費者に知ってもらうことだ。

企業データ
企業名 or 店名 株式会社横須賀軽金
代表者 小野仁志
所在地 神奈川県横須賀市佐原2-1-3

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