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闘いつづける経営者たち


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03.人は育てるものでなく育つもの

よい意味でのワンマン体制

チロルチョコが分離独立したことで、

チロルチョコが分離独立したことで、"本家"の松尾製菓は商品の製造を専業にする

チロルチョコ株式会社が松尾製菓株式会社から分離独立したのは2004年4月。"本家"の松尾製菓を製造専業とし、チロルチョコは東京を拠地として企画・販売を担う。 そして両社の社長を松尾利彦は兼務している。

チロルチョコの製品開発パワーは、松尾の独創性と感性に負うところが大きい。消費者の嗜好を推し量って、いたずらに市場に迎合するようなことはしない。その松尾の不抜の信念が、これまで多くのヒット商品を支えてきた。「あまり大げさにとられると困るけれど、そういう要素は多い」と松尾も率直に認める。

しばしばマイナスイメージで用いられる紋切り型の言葉に従うなら「ワンマン体制」ということになるが、従業員数で見れば松尾製菓で180人、チロルチョコが50人の企業規模。むしろ松尾のリーダーシップが会社の成長をもたらしているといえる。

しかし、問題はその先にある。このくらいの企業規模なら社長の威令が隅々まで浸透しやすいものの、さらに成長軌道をたどったときにはワンマン体制の弊害が待ち受けている。


仕事はOJTで覚えるもの

チロルチョコの企業としての生命線はバラエティに富んだ製品の開発力にある。

チロルチョコの企業としての生命線はバラエティに富んだ製品の開発力にある。

あまつさえチロルチョコの生命線は製品開発にあり、いま、その大部分を松尾が担っている。いわゆる「人材育成」が急務と思われるのだが、松尾はそれを真っ向から否定する。

「経営の本を読むと、人材育成について縷々語られていますね。だけどそんなことは評論家とかそれをメシのタネにしている人が言うだけのこと。人間は最もややこしく厄介な存在ですよ。人が人を育てるなんて、しょせんできることじゃありません。松下幸之助さんを始め、これまでにたくさんの優れた経営者が輩出されていますが、人材育成がうまくいった人はほとんど皆無です。ですから僕は人を育てるなんて考えたこともないし、考える気もない。そもそもそんなことにかかわっているヒマもありません」

人は育てるものではなく、育つべき人材は自ずと育つと言い切る。多くの企業が採り入れているような第三者機関の人材教育システムも人材育成のための教本めいたものもチロルチョコには存在しない。

「仕事はOJT(On the Job Training:職場内教育訓練)でおぼえるものです。OJTを通じて学べばいい。うちはそれしかやっていません」

人の採用についても、「僕は人を見る目がないので」と松尾は関わっていない。 「これまで何度も失敗して、僕にそういう才能がないことは痛感しています。いいなと思って採用したら、いつもよくなかったから」と笑い飛ばす。

もちろん、"見る目がない"はずの松尾も、マネジャークラスの人材が社内で育っていることは認める。ただそれもマネジャークラスどまり。経営者となると話は別で、いわんや後継者となると頭痛の種のようだ。

「後継者の育成は、経営者にとって強迫観念になっているのではないでしょうか。自分を名経営者というのではありませんが、名経営者のあとに名経営者は出ない。まして、たかだか200人規模の会社から優れた経営者が出る確率は2万人規模の大企業の100分の1ですよ。一代の経営者が有能だということと、その経営者が後継者を育成できるかどうかは別。僕が勝手にそう思い込んでいるだけかもしれないけれど、そうでも思わなきゃ、やってられませんね」

発言の最後の部分にチラリと本音がのぞく。社長の感性を盗み、社長の経営術を盗んでそれを自家薬籠中のものとし、チロルチョコに次代の成長をもたらす人材の出現が待たれている。

松尾利彦プロフィール

1952年生まれ。75年慶應義塾大学法学部政治学科卒業。同年アメリカ留学。77年松尾製菓株式会社入社。80年にヤマサキナビスコ株式会社に出向。85年松尾製菓の常務取締役就任。従来の駄菓子店を中心とした販売ルートからコンビニエンス店を中心とした一般販売ルートへの転換を図り「大人も楽しめるチロルチョコ」を目指す。91年代表取締役に就任。2004年、企画・販売部門を独立させチロルチョコ株式会社を設立。松尾製菓株式会社と兼任で代表取締役に就任。好きな言葉は "夢は叶う"。

企業データ

チロルチョコ株式会社

〒101-0054
東京都千代田区神田錦町3−23
TEL:03-3292-7170
事業概要:チョコレート販売(製造は松尾製菓株式会社)
設立:2004年4月
資本金:5000万円
売上高:109億円(2009年3月)
従業者数:50人


掲載日:2010年1月18日


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