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01.製パン業界の“ガリバー”への挑戦
3年連続1位の食パン
長引く不況の折、食パンカテゴリーで3年連続首位の商品を持つ会社がある。2010年に創業90周年を迎えた敷島製パン(名古屋市東区、盛田淳夫社長、052-933-2111)だ。製パン業界で長らく2位の座に甘んじていた同社だが、ここにきて少しずつ“ガリバー”である山崎製パンへの追い上げを強めている。
そのきっかけとなったのが、同社が98年に満を持して発売した食パンの「超熟」シリーズだ。超熟は「炊きたてのごはんのようなもっちりした食感」がコンセプト。その実現のために同社が採用したのが湯種(ゆだね)製法だ。通常は小型の焼きたてパン店で採用されるこの製法は、品質の安定が難しく、大量生産のホールセール(卸売り)には向かないとされていた。
しかし「湯種製法による量産の食パンを作る」と盛田社長は譲らなかった。開発陣は極秘プロジェクトで、原料の配合や温度管理、熟成時間の微妙な調整を幾度も繰り返した。そして量産化に成功。大々的なプロモーションも功を奏し、超熟は次第に消費者から支持を得るようになった。06年にはホールセールのパンに不可欠な添加剤の使用をやめるなど、発売後も消費者の声に応えて改良を重ねてきた。盛田社長は「発売から10年。こうした地道な努力を積み重ねてきたことが結果につながった」と振り返る。
超熟のヒットが自信に
超熟は08年から10年までの3年間、食パンカテゴリーでシェア1位を堅持している。パンメーカーにとって、毎日のように食卓にのぼる食パンは基幹商品。その食パンのカテゴリーでのシェア1位は、長らく同社の悲願だった。また、食パンは多くの種類がある菓子パンなどに比べて生産性が高く、利益への貢献度も大きい。
そして、超熟は現在、食パンだけでなく、ロールパンやマフィンなど食事パンのカテゴリーまでラインアップを拡充。超熟発売前の97年度の同社の食パンの売上高(小売りベース)は315億円。超熟シリーズのヒットで、10年度の食パンの売上高(同)は520億円にまで増えた。超熟の成功がもたらしたものは、売り上げの増加だけではない。「社員が食パンカテゴリーで1位という共通の目標に向かって努力し、成果を出したことが自信につながった」と盛田社長は胸を張る。
新たな市場開拓に挑戦
同社は超熟の成功をひっさげ、さらなる成長を目指す。国内市場で狙うのが商品開発による新たな市場開拓だ。そして、6月には市場拡大が見込め「第2のエンジン」と位置づける中国に本格進出し、海外展開を積極化する。これらの施策で首位との差を少しでも縮め、業界での存在感を一層高める考えだ。
盛田 淳夫 プロフィール
1977年(昭52)成蹊大法卒、同年日商岩井(現双日)入社。82年敷島製パン入社。83年取締役、87年常務、92年副社長、98年社長。名古屋市出身。
掲載日:2011年5月24日