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闘いつづける経営者たち


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03.オープン戦略

技術流出より市場形成

中国・珠海格力電器と合弁会社設立などに合意した調印式の様子(左が井上会長)

中国・珠海格力電器と合弁会社設立などに合意した調印式の様子(左が井上会長)

2008年3月。ダイキン工業は中国・珠海格力電器(広東省珠海市)と業務提携した。狙いは中国で環境性能の高いインバーター搭載エアコンを普及させること。ダイキンの井上礼之会長兼最高経営責任者(CEO)は「オープン化戦略で格力電器と組んだ」と言い切る。長年の研究開発で築き上げたインバーター技術の一部を、格力電器に供与した。
 ダイキン社内では当然のように反対の声が上がる。自社の競争力の源泉ともいえる技術だからだ。しかし、井上会長はインバーターエアコンの市場形成を優先した。中国は経済成長が続く有望市場。インバーター以外の環境技術が現地で先に大勢を占めれば、インバーターは主流ではなくなる。先端技術を格力電器に提供しても、市場さえ形成できれば闘うことができる。

真っ向勝負

グラフ:空調メーカーの売上高(2011年度)

グラフ:空調メーカーの売上高(2011年度)

戦略は奏功した。井上会長は「当時7%だった中国のインバーター比率は、12年に60%に達した」と成果を語る。家庭用エアコンで世界最大の生産量を誇る格力電器の影響力は絶大だった。ダイキンもインバーター技術を提供する代わりに、日本向けに低コストの家庭用エアコンを格力電器に生産委託しているほか、原材料や部品の共同調達、金型の共同生産などでメリットを発揮している。また、ダイキンは中国・江蘇省蘇州市に大型工場を建設し、現地で真っ向勝負を繰り広げている。
 ただし、格力電器も空調事業で世界2位にのし上がっている。ダイキンが目標にしていたかつての世界首位、米キヤリアは市場悪化などもあり売上高を落とし、世界3位には中国・広東美的電器がつけている。エアコンの成長市場が先進国から新興国にシフトして、業界の勢力図も変化してきている。ダイキンも事業拡大に向けて新興国の攻略を急いでいる。

半歩先に決断

格力電器との業務提携の中に、12年に採用を決断した次世代冷媒「ハイドロフルオロカーボン(HFC)32」普及のポイントがある。それは「オープン化戦略」。「HFC32」も囲い込んでいれば、大きなうねりは起こせない。そこでダイキンは、「HFC32」の基本特許を新興国では無償開放し、応用特許はライセンス契約で対応することを決めた。新興国では冷媒の転換時期が近づいており、新冷媒の選定が急がれている。
 ただ、ダイキンは冷媒も生産する世界で唯一の空調機器メーカーであるため、競合には警戒感を持つところもあるとされる。主力の空調事業がダイキンの代名詞になっているため陰に隠れているが、化学事業でも米デュポンを抜いて15年度にも世界首位に立つことを目指している。「半歩で良いから先に決断する」と肝に銘じている井上会長。先陣を切った「HFC32」の成否は、空調と化学の両事業で“真の世界一”を確立する試金石となる。

井上礼之 プロフィール(いのうえ・のりゆき)

1935年(昭10)生まれ。京都府生まれ。57年、同志社大学経済学部を卒業して大阪金属工業(現ダイキン工業)に入社。75年に人事部長になり、79年に取締役に就任。85年に常務、89年に専務。94年に代表取締役社長、95年に会長を兼務、02年に会長兼最高経営責任者(CEO)となり、20年にわたり経営トップとして会社のグローバル展開などを推進している。

企業データ

ダイキン工業株式会社

大阪市北区中崎西2-4-12
06-6373-4312
事業概要:空調・冷凍機事業、化学事業
資本金:約850億円
連結売上高:1兆2909億円(2013年3月期)


掲載日:2013年5月16日


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