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01.トップ企業の自覚と責任
2010年に空調機器事業で念願の世界最大手に上り詰めたダイキン工業。94年から経営トップとして会社の躍進をけん引しているのが井上礼之会長兼最高経営責任者(CEO)だ。12年には米国の家庭用エアコン首位のグッドマン・グローバル(テキサス州)を約2900億円で大型買収したほか、業界で初めて次世代冷媒「ハイドロフルオロカーボン(HFC)32」の全面採用を決めた。事業拡大に向けて手を緩めず、矢継ぎ早に次の一手を打ち続けている。
悲願の米社買収
「長年の悲願だった」-。12年8月29日、大阪市内のホテルで開いたグッドマン買収の会見で井上会長の喜びはひとしおだった。米国市場は地場の強豪がひしめき、海外メーカーの参入は容易ではない。ダイキンも業務用エアコンでは米国に基盤を持つマレーシアのOYLインダストリーズ(クアラルンプール市)を06年に買収して橋頭堡(きょうとうほ)を築いたが、家庭用エアコンでは「過去2回挑戦して失敗している」(井上会長)。しかも、グッドマンの買収は11年に合意寸前まで話が進んだものの、同年3月に東日本大震災が発生したため交渉を中断した経緯もあった。
新冷媒に舵切る
一方、もう一つの大きな決断が次世代冷媒「HFC32」の採用だ。冷媒はエアコンの“血液”とも呼ばれ、空気中にある熱を運んで部屋の中を冷やしたり、暖めたりする機能に欠かせない。現在、先進国では混合冷媒の「HFC410A」が主流で、温暖化係数が低いなど性能の高い次世代冷媒候補は複数ある。
その中でダイキンは「HFC410A」に比べ温暖化係数が約3分の1の「HFC32」に的を絞り、採用に踏み切った。国内の家庭用エアコンでは12年11月に発売した最上位機種「うるさら7」への採用を皮切りに、以後発売する新機種に順次採用して全面展開する方針だ。海外でも現地の法規制などをにらみながら採用を進める計画で、すでにインドでは製品を発売済み。そのほかでは業務用エアコンへの採用も推進する。
試される影響力
「環境負荷低減に貢献したい」(井上会長)との思いからHFC32に大きく舵(かじ)を切ったダイキン。ただ、新冷媒を採用する場合、業界で足並みをそろえるのが通常だ。ダイキンも業界団体に積極的に働きかけた。しかし、足並みをそろえるには時間がかかるため、まずは単独で走り始めた。海外でもHFC32への転換を目指すダイキンは、空調発祥の地で冷媒選定で影響力があるとされる米国でも冷媒転換を狙う。これは大きなトピックスだ。
空調事業の売上高では世界一になったが、ダイキンは“真のグローバルエクセレント”を標榜(ひょうぼう)する。それには業界での地位だけでなく影響力も伴わねばならない。中国企業の追い上げもある。闘いは始まったばかりだ。
井上礼之 プロフィール(いのうえ・のりゆき)
1935年(昭10)生まれ。京都府生まれ。57年、同志社大学経済学部を卒業して大阪金属工業(現ダイキン工業)に入社。75年に人事部長になり、79年に取締役に就任。85年に常務、89年に専務。94年に代表取締役社長、95年に会長を兼務、02年に会長兼最高経営責任者(CEO)となり、20年にわたり経営トップとして会社のグローバル展開などを推進している。
掲載日:2013年5月 9日