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闘いつづける経営者たち


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04.社長業は母親に似ている

亡き母の教え、いつも胸に

母(左)の教えが“身の丈経営”の基礎になった(写真は幼少期に家族で食事をとる風景。田中社長は専一会長[右]の隣)

母(左)の教えが“身の丈経営”の基礎になった(写真は幼少期に家族で食事をとる風景。田中社長は専一会長[右]の隣)

田中秀子社長は会社を6層のイメージでとらえている。一番下に会社のベースとなる(1)「資金・資産」や「会社の強み」を置き、その上に会社の方向性を決める(2)経営層を置く。経営層の上に(3)「製造・物流」(4)「営業」(5)「広告宣伝」が並列的にあり、全体を(6)社長がバックアップするというイメージだ。
 「飛行場に行くと、いつも思い出すことがある。飛行機を安全・安心に飛ばすという一つの目的のために、みんなが一致団結して働いている。博水社は航空会社と違い中小企業だが、従業員のみんながそれぞれの役割をまっとうしているから、ハイサワーなどの商品を販売することができる。社長の仕事はみんなが働きやすいように、対内・対外的な環境を整えること」(田中秀子社長)と断言する。
 このような考えに行きついたのには、他界した田中社長の母の考えが影響している。「両手でお米をすくっても、両手の大きさ以上のお米は結局、手からこぼれ落ちてしまう。おごらない姿勢でいなさい」との言葉が今も胸にある。 「身の丈の中で会社を大きくし、従業員の生活を守ることが私の使命だと教わった」(同)と述懐する。博水社には社長室がない。常に従業員と同じ環境でいるためだ。

「裸の王様」にならないように

「しっかりと従業員のことを見てあげることが大切。社長業は母親に似ている」と社長としての姿勢を説く田中社長。

「しっかりと従業員のことを見てあげることが大切。社長業は母親に似ている」と社長としての姿勢を説く田中社長

田中社長は母の言葉を胸に刻み、「裸の王様」にならないように工夫を凝らしている。
 例えば、営業部員には手帳の使い方で、あるお願いをしている。一ページを上下に割って、上段には商談中のメモを、下段には商談中に気付いたこと、やらなくてはいけないことを記載する。上段のメモは営業に無関係な雑談なほど良い。「業務報告書にはキレイな事柄が並ぶことが多い。仕事上のヒントになる大切なことは、何気ないことが書かれた手帳の上段にある」(同)と考えるためだ。
 この手帳は営業がうまくいかなかった理由を追及するためのものではない。田中社長が営業部員と文字通り顔を突き合わせ、一緒になって営業を成功させる方法を考えるためのツールになる。「社長が営業に行ってもダメな時はたくさんある。ダメだった理由を一緒に考える“空気”をつくることが何より大切」(同)と強調する。
 もう一つ、田中社長が大切にしていることがある。「認める」ことだ。
 「原価の一銭二銭を下げるために闘っている従業員がいる。アウトソーシングしている製造工場の立ち合いで深夜まで働く従業員がいる。大変な思いをしている人の仕事を周囲の人にも教え、認め、共感するようにしている」(同)という。田中社長には「大手企業と違い、博水社ではこの部署に合っていなければ違う部署という訳にはいかない。大手企業以上に、しっかりと従業員を見てあげることが必要。社長業は母親に似ている」(同)との思いがある。

現場は教科書以上のことを知っている

田中社長の周りはいつも笑いが絶えない。率直で決しておごらない姿勢が魅力となり、磁石のように人を引き寄せる

田中社長の周りはいつも笑いが絶えない。率直で決しておごらない姿勢が魅力となり、磁石のように人を引き寄せる

田中社長は自身の性格を「旗を持ってみんなを引っ張っていくタイプではない」(同)と分析する。
 「学校での席順は必ずと言っていいほど、後ろから2番目。一番前に座るほど勉強熱心ではないし、一番後は返って目立つから。そもそも、社長なんて大それた仕事をする器ではない」(同)とにっこり。
 率直で決しておごらない姿勢が魅力となり、磁石のように人を引き寄せる。博水社のある従業員は田中社長のことを「中心になって明るい会社の雰囲気をつくってくれる人」と迷わず答えた。
 「現場は教科書以上のことを知っている。教えてもらうことばかり。一番してはいけないことは机に座りっぱなしなこと」ときっぱりと語る田中社長。社内に一日いることはないという。今日も取引先を駆け回る。踏み出す一歩の距離は慢心せず、常に田中社長に合った歩幅になっている。

もう一つの顔

田中社長には社長に就き諦めたこともあるが、ずっと続けていることもある。捨てられた保健所の犬や猫を里親が見つかるまで一時的に預かるボランティアをしている。また、「まだ間に合うからプロジェクト」を立ち上げ、保健所の犬や猫の気持ちを歌にしたCDの収益金を、全国の犬や猫を助ける活動を行う団体に寄付している。田中社長がボーカルを担当する。社長業の傍ら続けるこの取り組みは「つらいこともあるが、明日への力になる」(田中秀子社長)と語り柔和な笑顔を見せた。

田中秀子 プロフィール(たなか・ひでこ)

1960年(昭35)生まれ。東京都生まれ。山脇学園短期大学英文科を卒業後、80年に株式会社博水社に入社。東京農業大学に社会人入学し食品醸造について学んだほか、税理士予備校に入学し経理業務を学んだ。08年に代表取締役社長就任。13年2月には、博水社初となるアルコール入りの缶チューハイ「ハイサワー缶」(350ミリリットル)を投入するなど、数々の商品を発売する。2児の母。

企業データ

株式会社博水社

東京都目黒区目黒本町6-2-2
03-3712-4163
事業概要:割り材(清涼飲料水)と酒類の製造販売業
資本金:2000万円
売上高:12億2500万円(2012年11月期)


掲載日:2013年12月 5日


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