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創業者列伝II


シリーズ04:クリスタルシステム【進藤 勇】
国研初のベンチャー企業

第1回「葡萄と水晶」

進藤 勇社長

進藤 勇社長

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進路を決めた山梨大の人工水晶

「葡萄と水晶」

この2つの言葉から思い浮かぶのは、いずれも山梨県の特産品ということだろう。この自然の大地から生まれた特産品が先端技術の出発点である事実はあまり知られていない。

その謎解きは次のようなものである。

第二次世界大戦中、無線通信技術の優劣は軍の作戦遂行能力を左右するほどに重要な基本技術の1つだった。無線通信には力を信号として取り出せる酒石酸と、その信号を整えて通信として使えるようにするための水晶が必要になる。

酒石酸はワインから造る。そのワインを造るブドウは山梨県が一大産地だ。一方の水晶は昔から甲州の特産品だった。

しかし、天然の水晶は形が不揃いであり性能も不安定なので、性能が安定している人工水晶を作る必要があった。ブドウと水晶に馴染みの深い山梨大学では、軍の強い要請を受けてこれら材料の人工合成研究に着手していた。

戦後、人工水晶の研究はさらに進化し、水晶時計の心臓部に使われるようになって、本格的に人工水晶造りが始まった。そして、山梨大学は人工水晶(クリスタル)合成のメッカと呼ばれるようになっていた。

1943年1月生まれの進藤が地元の山梨大学応用化学科に入学したことが、「クリスタルとの付き合いの始まりだった」という。当時の山梨大学には東北大学、名古屋大学とともに、日本のクリスタル合成研究の拠点校として、大型の人工水晶や人工ルビーなどのクリスタル合成装置が完備され、最先端のクリスタル合成研究が進められていた。

そんな環境の中で、人工水晶研究室の助手となり、クリスタル合成研究に携わるようになったのはごく自然の成り行きだった。

クリスタルにも追い風吹く

「水晶というのは地球上に一番多い珪素(シリコン)の酸化物です。普通、シリコンは高温で溶かしてからゆっくり固めて石にします。ところが水晶だけはこの方法だとガラスになってしまいます。だからこれを解決するにはガラス転移温度よりも低い温度で溶かす必要があります」

「低い温度で合成するには、高圧の水蒸気を使う方法があります。大きな大砲のような高圧容器を真っ直ぐに直立させ、底部には原料となる天然水晶を入れ、頭部には種子結晶を吊り下げておきます。これに高圧水蒸気を閉じ込めて底部の温度を頭部よりも少し高く設定して置くと、原料の天然水晶は少しずつ溶け出します。そうすると頭部の少し温度が低い場所にセットしておいた種子結晶部で人工水晶が成長します。1〜2ヶ月ほどこのまま放って置くと、十分に大きく成長した人工水晶を取り出せます。これが高圧水蒸気でクリスタルを作る熱水合成法という方法です」

話は長くなったが、人工水晶の製造の仕組みを知る上では手抜きを許されない貴重な技術解説である。

進藤が学生だった当時は石油化学工業全盛の時代。山梨大に限らず応用化学専攻の優秀な学生は競って石化業界に流れて行った。ナイロンやプラスチック製品が消費生活を席巻しはじめた時代だ。

だが、進藤が人生を賭けた、応用化学では比較的マイナーだったクリスタルの世界に、思わぬ追い風が吹き始める。(敬称略)


掲載日:2007年1月10日

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