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起業マニュアル

起業を思い立ったその瞬間から、実際の起業準備そして開業まで。
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起業した後
ワン・トゥ・ワン・マーケティングを導入する

目次

変わるマーケティング手法

 1960年代以来、長らく続いてきたマスマーケティングの時代は顧客を大衆として捉え、同じ製品を大量に生産し、販売するというものでした。その後、1980年代にはセグメント化された対象に向けてそれぞれのニーズに応える商品を提供するというセグメントマーケティングの時代へと変わってきました。

 ところが、1990年代後半には、消費者ニーズは十人十色ではなく、一人十色とまでいわれるようになり、企業がこれまで用いてきた単純な顧客属性からは顧客のニーズが読みとれない状況となりました。こうしたなかで生まれてきたのがワン・トゥ・ワン・マーケティングです。

ワン・トゥ・ワン・マーケティングとは

 ワン・トゥ・ワン・マーケティングは、企業が顧客と双方向のコミュニケーションをとり、個々の顧客のニーズを理解するということを基本として成り立っています。そして、このマーケティングのポイントは、

 企業は、個々の顧客ニーズにあった商品・サービスを提供することで、
  当該顧客と継続性のある取引を実現し、
  その顧客との生涯にわたる取引から得られる生涯価値(LTV=ライフ・タイム・バリュー)
  の最大化をめざす

というものなのです。
 ここでワン・トゥ・ワン・マーケティングを新しいマーケティング手法と捉える理由は2つあります。1つ目はワン・トゥ・ワン・マーケティングが顧客との双方向のコミュニケーションをとり、顧客との共創を意識しているという点です。

 そして2つ目は、マーケティング目標の重点を市場シェアから顧客シェアへと移しているという点です。マスマーケティングの時代からセグメントマーケティングの時代においては市場シェアの拡大が最大の目的でした。しかし、ワン・トゥ・ワン・マーケティングにおいては、

 その顧客の人生における消費のどれだけの部分を自社が占めることができるか

という顧客シェアの拡大が最重要課題
となっているのです。

ワン・トゥ・ワン・マーケティング導入へ

 こうした背景のもとで、企業の間では個々の既存顧客との関係性を重視する取り組みが始まりました。このように、

  多くの企業では既存顧客は重要な経営資源であると認識しており、
  ワン・トゥ・ワン・マーケティングが実践されています。

 その際にもっとも重要なことは、顧客を個々に捉えるということです。たとえばCS(顧客満足度)プログラムを実施するにしても、そのプログラムに最大公約数的な全体最適化を求めるのではなく、個々の顧客の満足度をいかに高めるかという考え方に基づいて設計する必要があるのです。

ワン・トゥ・ワン・マーケティングのメリット

 ワン・トゥ・ワン・マーケティングは、一人ひとりの顧客と強固な関係を作り上げ、長期にわたって多くの種類の商品・サービスを購入してもらうことをめざした手法です。ワン・トゥ・ワン・マーケティングを実行する企業は他の企業に対してさまざまな優位性をもち、競合企業のマーケティング活動から顧客を守ることができます。次に、こうしたワン・トゥ・ワン・マーケティングのもつ主要なメリットについて検討してみます。

顧客維持率の向上

 ワン・トゥ・ワン・マーケティングは商品・サービスを差別化するのではなく、顧客との関係のありかたを差別化するマーケティングです。そのため、 

  企業と顧客との関係は強固なものとなり、
  競合企業が現れても顧客を奪われる可能性が低くなります。

 なぜなら、自分のことを理解してくれる企業から他の企業に取引を移すときには、顧客にとって大きな不安が生じるからです。多くの女性が美容院を利用する場合に、一定の技術をもったなじみの担当者ができると簡単には店を変えないことからも理解できるでしょう。
 ワン・トゥ・ワン・マーケティングを実践できる企業は、自社にとって重要な顧客と緊密な関係を結ぶことで顧客維持率の向上を実現しているのです。

追加販売による収益拡大

 緊密なコミュニケーションによって、

  顧客のニーズをつねに把握しておけば、関連商品を販売したり、
  買い換え需要にも応えることが可能になります。

 また、点検・修理といったアフターサービスまで、追加販売の一部であると考えれば、取引拡大のチャンスは大きく広がっていきます。顧客のニーズや環境の変化を読みとり、追加販売を行うことによって1人の顧客から長期にわたって大きな収益を拡大することも可能になります。

新規客の紹介引き出し

 ワン・トゥ・ワン・マーケティングによって、

  顧客の満足度が高まると、
  新たな顧客を紹介してくれる可能性が高くなります。

 しかも、企業にとってLTVの高い顧客が紹介してくれる顧客は、一般の新規客と比べLTVの高い場合が多くなっています。

  ワン・トゥ・ワン・マーケティングによる満足度の向上は、
  継続的なリピートを生むだけでなく、
  顧客の紹介という形でさらなる価値を企業にもたらします。

 実際、ワン・トゥ・ワン・マーケティングを行う企業のなかには新規顧客紹介を導くために、既存顧客に対するインセンティブ制度を導入している企業も少なくありません。

ワン・トゥ・ワン・マーケティングの導入方法

顧客構造分析による顧客選別

 最初からあらゆる顧客に対してワン・トゥ・ワン・マーケティングを行うことは困難です。まずは自社にとってワン・トゥ・ワン・マーケティングを導入すべき部分を明確にする必要があります。その際には、

  自社に大きな利益をもたらしてくれる
  優良な顧客を選別することからはじめなくてはなりません。

 顧客構造の分析はこの顧客選別のための手法のひとつです。LTVの視点によって顧客を検討する場合、企業にとって顧客の価値はそれぞれ大きく異なります。そうすると、企業にとって価値の高い部分の顧客シェアを高めることが重要であるのはいうまでもありません。つまり、ワン・トゥ・ワン・マーケティングの導入にあたっては、

 LTVの視点によってグループ分けした顧客構造を分析したうえで、本当に個別対応が必要な顧客を選別する必要があるわけです。

顧客構造分析の事例

 ある航空会社の顧客の構造を、搭乗クラスと年間の搭乗マイルにしたがって分析したものが下表です。この航空会社にもたらしてくれる利益のレベルに応じて、個々のグループに優先順位を付けていくと、Aのグループの「ファーストクラスで2万マイルを超えて搭乗する層」がワン・トゥ・ワン・マーケティングを行うのにもっとも優先すべき対象であることがわかります。その後コストパフォーマンスを考えながらB、C...といったグループに対してもワン・トゥ・ワン・マーケティングを導入していくのです。

■航空会社の顧客構造分析表のイメージモデル                (単位:人)
2万マイル超 1万超 ~2万マイル 1万マイル以下 合計
ファーストクラス A   80 B   160 E   250 490
ビジネスクラス C  150 D   500 G   750 1400
エコノミークラス F  300 H  1020 I  2600 3920
合計 530 1680 3600 5810

優秀な顧客マネージャーの設置

 企業が市場シェア中心のマーケティングをする場合には、製品やブランドごとにプロダクトマネージャーやブランドマネージャーを設置しているはずです。一方、

  ワン・トゥ・ワン・マーケティングを導入し、
  顧客シェアの拡大をめざすのであれば、
  顧客管理を担当する顧客マネージャーを設置することが必要となります。

 顧客マネージャーを設置する方法としては、顧客構造を分析した際に重要と判断されたグループごとに設置するのがよいでしょう。

  顧客マネージャーの役割は、
  担当するグループ内の顧客と円滑なコミュニケーションをとることで、
  そのニーズを把握し、さまざまな提案をすることです。

 そのため顧客マネージャーには、コミュニケーション力、洞察力、理解力、調整力、コンサルティング力などが求められます。このような優れた営業マンに必要な能力に加え、企画担当者としての企画・提案力も必要となります。顧客マネージャーがこうした能力を発揮することで、ワン・トゥ・ワン・マーケティングの目的である顧客シェアの拡大、ひいてはLTVの向上が実現できることになります。

サポート企業の活用

 実際にワン・トゥ・ワン・マーケティングを導入するには、顧客情報を蓄積・分析するためのコンピュータシステムや高度なノウハウが必要とされることも多く、場合によってはコストに見合う利益を得られないこともあります。このため、

  第三者と協力して、ワン・トゥ・ワン・マーケティングを導入することも考えられます。

 つまり、双方向コミュニケーションや顧客ニーズの収集・分析など、ワン・トゥ・ワン・マーケティングに必要となる機能をもった外部の企業と協力して効率的にワン・トゥ・ワン・マーケティングを導入するのです。

業界別導入ポイント

製造業

 たとえば、靴メーカーが販売店と協力して顧客ごとの足の型をとり、それぞれの顧客にあった靴を製造するというものがあります。最初に足の木型を作る際の顧客負担は大きくなりますが、その後はつねに自分にあった靴が購入できるので、足に問題を抱えている顧客にはとくに好評です。

 また顧客の好むデザインを把握し、それに応じた新作などを紹介できれば、顧客が離れる可能性はさらに低くなります。このように、製造業ではワン・トゥ・ワン・マーケティングのなかでもとくに「カスタマイズ」という点がポイントになるでしょう。

卸売業

 卸売業の場合は以前からリテールサポートという手段によって個々の小売業のニーズにあわせた、ワン・トゥ・ワンに近い対応をしてきました。現在は、顧客である小売業へのリテールサポートにさらに磨きをかけるとともに、小売業が行うワン・トゥ・ワン・マーケティングを、工夫して支えることが、卸売業にとってのワン・トゥ・ワン・マーケティングのポイントになっています。

小売業

 商店街の鮮魚店などが顧客の要望に応じて魚をさばいたり、調理済みのものをその家族にあった分量だけ販売したりしてきたことが、ワン・トゥ・ワン・マーケティングの原型ともいえるものです。

 百貨店などが顧客のクレジットカードやポイントカードなどの使用データを活用し、利用状況別に割引したり、顧客のニーズにあった商品案内やメンテナンス情報を提供したり、といった例がみられます。

 このように、小売業の場合は日々の購買データに基づいたワン・トゥ・ワンのアプローチが主流になるでしょう。

サービス業

 サービス業も小売業と同じく、基本的には購買データを蓄積して顧客にあわせたサービス提供を心掛けることが基本になります。さらに、サービス業の場合はサービスを生み出すという意味で製造業に近い特性ももっているため、顧客にあわせてカスタマイズしたサービスをどれだけ提供できるかがポイントになるでしょう

金融・保険業

 金融業もサービス業の一部と考えられますが、最近は銀行などでプライベートバンキングを導入するなど、顕著な形でワン・トゥ・ワンタイプのサービスが実施されています。保険業においてもオーダーメイド保険を標榜する会社が成長するなど、ワン・トゥ・ワン・マーケティングが重視されています。ワン・トゥ・ワンのサービスを汎用化して低コストで行うことや、うまく最適な顧客選別を行うことなどが重要になるでしょう。

最終内容確認 2013年10月

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