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起業マニュアル

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起業した後
労務管理のポイント:女性労働者

目次

女性を取り巻く労働環境の変化

 厚生労働省の調査によれば、近年の女性被雇用者数は2,237万人で、被雇用者総数に占める女性の割合は42.7%にも上ります(厚生労働省「平成23年版 働く女性の実情」)。一昔前と比べて、多くの女性が結婚、出産後も働き続けるようになり、女性が働きやすい労働環境が整いつつあると言えます。

 今回は、女性を雇用する上でのポイントや、「男女雇用機会均等」の考え方を具体例を交えながらご説明します。

男女雇用機会均等法とは

 男女雇用機会均等法(以下「均等法」と言います)は、正式には「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」といい、日本国憲法で定める法の下の平等(第14条)の理念を雇用の分野で推進するとともに、女性労働者の妊娠中・出産後の健康を確保するために定められています。

 女性労働者の保護については、労働基準法等にも規定がありますので、均等法と併せてご説明します。

女性のみに会社指定の制服を貸与する事例

 均等法について、まずは具体例を挙げて考えてみましょう。ある企業では、男性社員はスーツの着用、女性社員は、会社指定の制服を貸与し着用することを義務付けているとします。女性社員の中には、「毎日着て行く洋服を選ぶ手間も省けるし、仕事用の私服を買う必要が無いから負担が少なく楽だ」という肯定的な声もある一方、「女性のみに制服の着用を義務付けるのは不公平だ」とする意見もあります。

 また、役員の中には「受付や秘書業務につく女性社員は、制服を着用するのが当然だ」といった意見もあります。このような場合、女性のみに制服を貸与・着用を義務づけることは、均等法の立場から見てどう判断されるのでしょうか。

【性別を理由とする差別の禁止】
 そもそも、均等法では、次のように規定されています。

  • 事業主は、労働者の募集及び採用について、その性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならない(第5条)。
  • 事業主は、次に掲げる事項(労働者の配置(業務の配分及び権限の付与を含む)、昇進、降格及び教育訓練、福利厚生の措置、等)について、労働者の性別を理由として、差別的取扱いをしてはならない(第6条)。

 先ほどの事案で考えると、受付業務や秘書業務を女性に限定して採用、配置している場合は、そもそも均等法違反となります。一方、総合職等について男性に限定して採用するなどの行為も同様に均等法違反となります。

【福利厚生措置の具体的な範囲】
 では、女性のみに限定して制服を貸与する行為は差別となり得るのでしょうか。
厚生労働省令では「性別を理由として差別的取り扱いをしてはならない福利厚生の措置」の具体的な範囲は以下のように定められています。

1. 生活資金、教育資金その他労働者の福祉の増進のために行なわれる資金の貸付け
2. 労働者の福祉の増進のために定期的に行なわれる金銭の給付(生命保険料の一部補助、子どもの教育のための奨学金の支給など)
3. 労働者の資産形成のために行なわれる金銭の給付(財形貯蓄に対する奨励金の支給など)
4. 住宅の貸与(賃金については、労働基準法 第4条で男女の差別的取扱いを禁止しています)

 上記の中に「会社指定の制服」は含まれておらず、制服を女性のみに限定して貸与する行為は、直ちに均等法違反とはなりません。

 とは言え、制服廃止を求める意見が高まってきた場合に、社内で議論の場を設けることは、実際に制服を着用する女性社員の意見を尊重することにもつながり、男女平等の取扱いの観点からも望ましいと言えます。

 実際に制服を廃止する場合には、職場の風紀や職務内容を勘案しつつ、制服着用を希望する社員等にも十分な説明をし理解を得ることが重要です。

母性保護のための規定

 性別を理由に差別的取り扱いをすることが禁止されているのは、先に述べたとおりですが、一方、女性労働者に対し母性保護の観点から、一定の制限が設けられている場合もあります。

【妊産婦等の就業制限】

業務の内容対象者禁止される内容
重量物取扱業務
全ての女性
(年齢制限無し)
重量物とは、満18歳以上の場合、断続作業:30キロ以上、継続作業:20キロ以上を指す。
これらの重量物の取扱業務を禁止。
有害ガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務
全ての女性
(年齢制限無し)
妊娠、出産・授乳機能に影響のある25の化学物質について、空気中の平均濃度が規制値を超える状態となった屋内作業場やタンク内での業務等を禁止。
坑内業務
妊娠中と申出のあった産後1年を経過しない女性
坑内で行なわれる全ての業務を禁止。
上記以外の満18歳以上の女性
人力により行なわれる掘削業務等を禁止。
その他の
危険有害業務
妊娠中と申出のあった産後1年を経過しない女性
機械、器具を用いて行なう振動業務や著しく寒冷な場所における業務等を禁止。

【産前産後休業等】
 産前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内に出産する予定の妊婦が請求した場合と、産後8週間を経過しない女性を就業させてはならない(ただし、産後6週間を経過した女性が請求し、医師が支障が無いと認めた場合は就業可能)とされています(労働基準法 第65条)。
この規定は、雇用形態に関わらず、全ての女性労働者に適用されます。

【労働時間の制限】
 妊産婦が請求した場合、時間外・休日労働や深夜業をさせることはできません。変形労働時間制等を導入している場合であっても、1日について8時間、1週間について法定労働時間を超えて労働させることはできませんので、注意が必要です。

【労働基準法に定めるその他の規定】
 女性に関するその他の規定は次のとおりです。

軽易な業務への転換
妊娠中の女性が請求した場合、軽易な業務に転換させること(第65条3項)。
育児時間
生後満1年に達しない子を育てる女性は、1日2回、少なくとも30分の育児時間を請求することができる(第67条)。
生理休暇
生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求した場合は、就業させてはならない(第68条)。

【均等法における規定】

保健指導または健康審査を
受けるための時間の確保
事業主は、女性労働者が妊産婦のための保健指導または健康審査を受診するために必要な時間を確保できるようにしなければならない(第12条)。
指導事項を守ることができるよう講ずべき措置
妊娠中および産後の女性が主治医等から指導を受けた場合は、勤務時間の変更や勤務の軽減等の措置を講じなければならない(第13条)。

 なお、育児・介護休業法に定める育児休業等は、女性に関わらず男性も休暇を取得できる制度となっているため、このコラムでは説明を割愛させていただきます。

男女ともに活躍できる社会を目指して

 働く男女が共に職場で能力を発揮していくためには、法令の遵守はもちろんのこと、各企業の取り組みや、従業員一人一人の意識の持ち方も重要になります。性別に関係なく、一人一人が活躍できる職場を作って行きましょう。

(執筆・監修:特定社会保険労務士 岩野 麻子)

最終内容確認 2013年10月

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