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起業マニュアル

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起業した後
労務管理のポイント:労務管理の「法定三帳簿」

目次

労務管理の重要性

企業は基本的に、「ヒト」「モノ」「カネ」の三要素に加え、「情報」などの経営資源によって成り立っています。このうち「ヒト」、つまり会社で働く人材という資源を管理し、会社の目標に導き、マネジメントしていくことを「人的資源管理」「人事労務管理」もしくは「労務管理」等と呼んでいます(ここでは便宜上「労務管理」に統一して説明します)。

労務管理とは、個々に意志を持ち、多種多様な個性を持つ経営資源である「人材」をマネジメントすることであり、他の資源と比べても管理が難しい分野であるといえます。しかしながら、会社の成長にとって優秀な人材は不可欠です。そのため、優秀な人材を獲得し、また既存の従業員が自身の持つ力を最大限に発揮できるようにするために、労務管理は企業経営の中でも重要な役割を担っているとして、古くから研究されてきました。

一般に、会社の中で労務管理を行うのは通常「人事部」や「総務部」などの部門担当者ですが、それらの部門を持たない中小企業では多くの場合、経営者自身が労務管理を担うこととなります。とはいえ、最初のうちは何から手を付けたら良いかわからず、不安に思う経営者、担当者の方も多いのではないでしょうか。今回から、「労務管理のポイント」というテーマで、労務管理の基本となる事柄についてポイントをおさえて解説していきます。是非、自社の労務管理にお役立てください。

労務管理の「法定三帳簿」

まずは労務管理の基本となる帳簿を整備することから始めましょう。帳簿の整備によって、自社の労務に関する現状を把握することができますので、自社が抱える問題点や、改善すべき点が明確になることもあります。

会社が人を雇った場合に整備することが義務付けられている帳簿があります。それは、労務管理の「法定三帳簿」と呼ばれている以下の帳簿で、労働基準法によりその整備が定められています。
1.労働者名簿
2.賃金台帳
3.出勤簿

1.労働者名簿

「労働者名簿」とは、あまり聞きなれない帳簿ですが、事業場ごとに日々雇い入れられる者を除いた全従業員について作成し、整備しておくことが義務付けられています(労働基準法第107条)。労働者名簿の記入事項は以下の通り法律等で定められています。また、記載内容に変更があった場合は、遅滞なく訂正が必要です。

・労働者名簿の記入事項
(1)氏名
(2)生年月日
(3)履歴(一般に、社内の人事異動履歴等を記載する)
(4)性別
(5)住所
(6)従事する業務の種類(従業員数が常時30人未満の事業場においては記載不要)
(7)雇い入れの年月日
(8)退職の年月日およびその事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む)
(9)死亡の年月日およびその原因

労働者名簿の様式は、厚生労働省のホームページ等でダウンロードできます(巻末参照)。なお、記載事項を網羅していれば、自社でオリジナルの書式を作成し整備することも可能です。

2.賃金台帳

「賃金台帳」は、事業場ごとに作成し、賃金支払いの都度遅滞なく以下の事項を記入しておきましょう(労働基準法第108条、同法施行規則第54条)。なお、賃金台帳は、労働者名簿と併せて作成することも可能です。

・賃金台帳の記入事項
(1)氏名
(2)性別
(3)賃金計算期間(原則として、日々雇い入れられる者を除く)
(4)労働日数
(5)労働時間数
(6)時間外労働、休日労働、深夜労働の時間数
(7)基本給、手当その他賃金の種類ごとにその額
(8)賃金の一部を控除した場合には、その額

労働基準法上の管理・監督者にあたる「労働時間、休日および休憩に関する適用除外(労働基準法第41条)」に該当する従業員については、(5)労働時間数、(6)時間外労働、休日労働の時間数を記入しなくてもよいとされています(ただし、深夜労働の時間数については記入する必要があります)。
なお、通貨ではなく現物支給された賃金がある場合(定期券を現物支給する等)には、その評価総額を記入しておきます。

賃金台帳の様式は、厚生労働省のホームページ等でダウンロードできますが(巻末参照)、エクセル等でオリジナルの書式を作成したり、市販の「給与計算ソフト」を利用して、給与明細書の作成と同時に、賃金台帳を作成・保存することもできます。

3.出勤簿

「出勤簿」という名称については、法律上の規定はありませんが、「労働時間、休憩、休日」について定める労働基準法第4章の趣旨に照らし、使用者は労働者の労働時間を適切に管理する責務があることから、労働者の勤務について適正に把握できる帳簿の整備が必要であると考えられています。
また、給与計算の際も用いられることが多いことから、単に出勤日のみを記載するのではなく、勤務時間等も把握できるタイムカード等の整備が望ましいでしょう。出勤簿(またはタイムカード等)は一般的に、以下の内容が把握できるものを作成します。

・出勤簿等の記入事項
(1)氏名
(2)出勤日
(3)出勤時刻、退勤時刻、休憩時間等

「法定三帳簿」の保存と整備

・「法定三帳簿」の保存期間
法定三帳簿は、その保存期間が法律により定められています。従業員の退職とともに破棄してしまうことのないよう、注意しましょう。

帳簿・記録の種類起算日保存期間
労働者名簿、
雇入または退職に関する書類
労働者の死亡、退職
または解雇の日
3年間
(ただし、退職金に関するものは5年間、雇用保険の被保険者資格に関するものは4年間、安全衛生に関するものも一定期間保存が必要。)
賃金台帳
最後の記入をした日
出勤簿、タイムカード、
各種届出書等
その完結の日

・「法定三帳簿」を整備するメリット
長年会社を経営している方であっても「労働基準監督官の調査」の際には緊張されるようです。それは、労働基準監督官は単なる職員ではなく、立入調査はもちろんのこと、労働基準関係の法令に関する指導や、違反行為の取り締まり、そして会社が保管する帳簿等の証拠物件の提出を要求する権限をも有する労働法令の司法警察官であるためです。

すでに労務トラブルが発生してしまっている場合は、専門家に頼るのも一つの手ですが、日ごろから「法定三帳簿」を整備する事により、労務管理の基本をおさえておくことが、労務トラブル回避の一番の近道といえます。

・労働者名簿、賃金台帳のひな型は以下ホームページでダウンロードできます。
厚生労働省(主要様式ダウンロードコーナー)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudoujouken01/index.html

(執筆・監修:特定社会保険労務士 岩野 麻子)

最終内容確認 2013年10月

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