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起業マニュアル

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起業した後
社内規定の整備:就業規則(非正社員)

目次

非正社員を取り巻く環境

 従来の企業では、正社員として雇用される従業員が大半を占めていましたが、今日では、契約社員やパートタイマー等、非正社員として働く人々が増えています。厚生労働省が取りまとめた「パートタイム労働者総合実態調査(平成23年6月1日調査)」結果によると、前回の調査時(平成18年)と比較して非正社員の雇用割合が高くなっていることがわかります。

  • パートタイム労働者を雇用している事業所:66.1%(前回:61.0%)
  • 正社員とパートタイム労働者の両方を雇用している事業所:61.0%(前回:57.8%)
  • 正社員のみを雇用している事業所:25.0%(前回:33.6%)

 一方、「非正規」という不安定な雇用が生み出す様々な問題点も挙げられます。賃金が正社員より低く設定されたり、有期雇用契約である場合も多く、労働者自身の仕事における向上意欲が損なわれたり、職場に定着せずすぐに離職してしまうなどの問題点も指摘されています。

非正社員のための就業規則を作るメリット

 就業規則作成のメリットの一つとして、「従業員に対する処遇の公平化・明確化」を挙げることができます。そして、非正社員のための就業規則を作るメリットとしては、「雇用形態の異なる従業員ごとに適用される決まり事の明確化」を挙げることができます。過去には、この区分が不明確であったために、会社が予測していなかったトラブルに発展したケースもありました。

 また、非正社員として働く従業員にとっては、ルールや処遇が明らかであることで会社に対する信頼感も生まれやすく、自身の職業人生を設計しやすくもなります。

非正社員用・就業規則作成のポイント

1.関連する法律に目を通してみる

 パート等の非正社員についても、労働基準法は当然に適用されます。とくに、「労働契約法」や「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(通称:パートタイム労働法)」は、有期契約労働者やパートタイム労働者に関わる重要な法律です。最寄りの労働基準監督署などには、これらの法律に関するパンフレット等が置かれている場合もありますので、足を運んでみるのもよいでしょう。

2.正社員用就業規則に委任規定を設ける

 正社員以外の非正社員(以下、「パート等」と言います。)を雇用している場合、正社員用就業規則には必ず下記のように「非正社員は、別に定める規定に従うものとする」等、適用範囲に関する規定を設け、「パート等には正社員用就業規則は適用しない」旨を定めておきます。

 また、パート等の従業員とは、雇用契約書等で労使双方に誤解のないよう、書面で合意を交わしておくことも大切です。

・就業規則(正社員)における適用範囲に関する規定例
第○条(適用範囲)
 この規則は会社の社員に適用する。ただし、契約社員、アルバイト、嘱託社員の就業については、それぞれ別に定める「契約社員就業規則」、「アルバイト就業規則」、「嘱託社員就業規則」に従うものとする。

3.適用対象者を明確にする

 「非正社員」の中には、正社員以外の「契約社員」や「アルバイト」「パートタイマー」「嘱託社員」等と呼ばれる様々な雇用形態があります。しかしながら、これらの雇用形態については、法律上の決まりが存在するわけではなく、個々の企業において定義が設けられているのが通常です。会社内に複数の非正社員の形態が存在する場合は、個々の非正社員の定義を規定しておくことが必要です。

・非正社員の定義に関する規定例(巻末参照)

4.正社員と異なる部分は具体的に明記にする

 パート等に関して、賃金の決定方法、賞与、退職金の支給や慶弔休暇の取り扱い等について正社員等と異なる待遇をする場合には、就業規則にて事前に明記しておくことが必要です。これらの記載が無かったことから、パート等に対しても、賞与や退職金を支払う義務があるとして、会社の意に反して支払を命じられた裁判例もあります。「非正社員には、賞与・退職金は支払わない」という場合には、その旨を具体的に明記しておきましょう。

・待遇に関する規定例(巻末参照)

5.「通常の労働者と同視すべきパートタイム労働者」に関する注意点

 前述のように、正社員とパート等に関して、異なる待遇とすることは可能ですが、近年「同一労働・同一賃金」や「均等待遇」の観点から、以下の点において、正社員と同様の取り扱いがなされるパート等においては、パート等であることを理由に差別的取り扱いをすることが禁止されるようになりました(パートタイム労働法第8条)。

(1) 正社員等、通常の労働者と職務内容が同じ
(2) 契約期間の定めが無い(反復更新によって、期間の定めのない労働契約と同視することが社会通念上相当と認められる有期契約を含む)
(3) 人材活用の仕組みや運用が、正社員等と同じ

 そのため、具体的な根拠がない限り、上記のすべてに当てはまるパート等の従業員については、就労の実態が正社員等と同じと判断され、賃金だけでなく、教育訓練の実施や福利厚生施設の利用等に関する差別的取り扱いも禁止されます。

 一方、意欲のあるパート等の従業員に対しては、「正社員転換制度」を制定するなどして正社員へ登用する道を準備しても良いでしょう。

 また、労働契約法の改正(2013年4月1日施行)により、有期労働契約が5年を超えて反復更新された場合には、労働者の申し込みにより、無期労働契約に転換させる仕組みを導入することが定められました。そのため、今後は「無期労働契約への転換」についても併せて規定しておくことをお勧めします。

6.雇い止め・退職に関する注意点

 「雇い止め」とは、契約期間の定めのある労働者について、契約期間満了時に契約更新を行なわず契約を終了させることを言います。一方、雇用期間の定めの無いパート等を、一方的な会社都合で退職させる場合は、正社員同様に「解雇」となります。

 労働契約は「採用」という労使双方の合意から始まることを考えれば、労働契約を終了させる場合も、出来る限り労働者と使用者が納得した上で退職手続きに進むことが望ましいと言えます。正社員同様、近年は、パート等の従業員においても、雇止めや解雇に関するトラブルが多い傾向にありますので、社内規定の整備とともに、契約更新の際には非正社員との面談機会を設けるなど、全従業員一丸となって働ける職場づくりを目指してはいかがでしょうか。

(ご参考)就業規則(非正社員)例

・非正社員の定義に関する規定例
※パートタイマーの定義
第○条(定義)
 この就業規則で「パートタイマー」とは、1週間の所定労働時間が○時間未満の従業員を言う。
第○条(契約期間)
 パートタイマーの雇用契約は、期間の定めのあるものとし、その期間は○カ月以内とする。

※契約社員の定義
第○条(定義)
 この就業規則で「契約社員」とは、1週間の所定労働時間が○時間以上の者で、業務の特殊性により期間契約とした従業員を言う。
第○条(契約期間)
 契約社員の雇用契約は、期間の定めのあるものとし、その期間は1年以内とする。

・待遇に関する規定例
第○条(昇給)
 パートタイマーに対しては、定期昇給を行わない。
第○条(賞与)
 パートタイマーに対しては、賞与を支給しない。
第○条(退職金)
 パートタイマーに対しては、退職金を支給しない。

(執筆・監修:特定社会保険労務士 岩野 麻子)

最終内容確認 2013年10月

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