店舗においては、照明によって空間の演出方法や商品の見せ方を変えることで、来店客が受ける印象は大きく変わり、集客や販売促進にも影響を及ぼします。
たとえば、通行客の目を引きつけ、店内に引き寄せるには、店頭やショーウィンドーを華やかに照らすことです。特定の場所に強いスポットライトを当てて空間のアクセントとし、視線を引きつけたり、コーナーや店奥の天井や壁を明るくして視覚に刺激を与えるなど、メリハリある照明が必要です。
全体の明るさを暗くすると、大人っぽく落ち着いた雰囲気になり、高級感があります。飲食店などでは客席だけを淡く照らすとテーブルごとに独立した空間を演出できます。
店舗照明の役割は必要な明るさを確保するだけではなく、店舗全体の雰囲気づくりや快適な空間づくりに役立ちます。照明を工夫するだけで店舗のイメージはガラリと変わるので、改装などを考える前にもまず、照明を変えてみることが大切です。
目次
見る人が感じる「明るさ」は?
照明の明るさは一般に「照度」(光の「量」)で表されます。しかし、人が感じる明るさは、「色温度」、「演色性」(光の「質」)によってかわってきます。
1.照度
照度は「lx(ルクス)」という単位で表され、その場所に届いている光の「量」を示します。日本工業規格(JIS)の照度基準は表のようになっています。
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2.色温度
照度が同じでも、色温度が異なれば明るさや印象は大きく変わってきます。
色温度は絶対温度の「K(ケルビン)」という単位で表されます。色温度が高いと青白い光になります。これは青空の下のようで、爽やかで活動的な感じを与えます。それでも、照度が低すぎると薄暗く陰気な雰囲気になります。色温度が低くなると、光の色は青~白~赤へと変化します。色温度が低いと赤味を帯びて、夕焼け空のように暖かく落ち着いた印象になります。しかし、照度が高すぎると暑苦しく感じるかもしれません。
3.演色性
照明によって、物の色の見え方が異なることを、照明の「演色性」と言います。これを平均演色評価数という数値で判断します。平均演色評価数は、基準光源を当てた時の見え方を100とし、ある光源をあてたときの色の見え方(基準光源による色を忠実に再現しているか)を指数で表したものです。基準光源による色との違いが小さいほど、平均演色評価数は高くなり、「演色性が良い」と表現します。白色電球の光が食べ物をおいしそうに見せるのは、演色性が良いからです。同じ照度なら演色性が良い方が明るく感じます。
照明計画のポイント
1.全体照明と局所照明
照明は、照らし出す範囲から、 | |
・ | 全体照明(全般照明、ベース照明) 全体に均一な明るさを提供する。シャンデリア、シーリングライトなど 平板で単調な印象 |
・ | 局所照明(局部照明、重点照明) 一部だけを照らし、空間を演出する。ペンダントライト、勉強机のスタンド、フットライト 特定の場所を重点的に照らして強調したり、光の変化や陰影によって雰囲気を変える |
の2つに分かれます。 局所照明を適度に配することで、空間に立体感を与えることができます。 |
2.直接照明と間接照明
照明の当て方には、主に3つの方法があります。 | |
・ | 直接照明 直接光源から出た光をあてて照らす 照明効率はよいが、光がまぶしく感じられる |
・ | 間接照明 天井や壁に光源から出た光をあて、反射光で照らす 照明効率はよくないが、落ち着いた雰囲気のやわらかい光が当てられる |
・ | 半間接照明 照明器具のカバーなどを通して物を照らす。 照明効率はよくないが、やわらかい光が広い範囲に広がる。 |
天井からの直接照明の照度より、間接照明で壁面を明るくした方が、見る人は明るく感じます。 |
3.照明器具
照明器具は、素材やデザインも豊富にあり、主な種類としても天井に直接取り付けるシーリングライト、天井に埋め込むダウンライト、天井から吊り下げるペンダントライト、壁に取り付けるブラケット、スポットライト、スタンドなど、さまざまなものがあります。
また、照明器具によって使用できるランプは異なります。
白熱電球は、安価で、小さくて軽いため扱いやすいです。照明の方向や範囲なども調節しやすく、調光も可能です。濃い影ができるため、立体感や質感を出せます。
蛍光灯は白熱電球に比べて効率的で消費電力が小さく寿命も長いです。発光面積が大きく、全体を均一にはっきりと照らし出せます。
4.内装との組み合わせ
天井、壁、床などの内装の素材や色によって、照明の効果は変わってきます。照明器具が同じでも、白い壁に光を当てた場合と黒い壁に光を当てた場合とでは、見る人が感じる明るさは異なります。黒い壁は光を反射しにくいため暗く感じられ、白い壁は光を反射しやすいため明るく感じられます。
青や緑など寒色系の内装に色温度の高いシャープな光をあてると涼しげな空間が生まれます。高すぎると青が強調されすぎて病的な印象にもなります。
レンガ壁や木目など赤味の強い素材は色温度の高いランプを使うと安っぽく感じ、色温度が低い方が落ち着いた雰囲気になりますが、低すぎると暑苦しくなります。
5.経済性・保守性
消費電力が小さくても設置台数が多くなると電気料金がかさみ、発生熱量が大きければ室温が上がって冷房費にも影響がでます。ランプの寿命が短かいと頻繁に交換しなければならず、費用も手間もかかりますが、寿命が長いランプも次第にホコリがたまり、明るさが落ちてきます。ランプの交換や照明器具の清掃がしやすいかどうかも重要です。下記の点に注意して照明機器を選びましょう。
・ | 省電力型、高効率型の照明 |
・ | 照明器具やランプは、定期的に清掃 1ヵ月に1回は乾拭きし、4ヵ月に1回は水拭きする |
・ | 不要な照明はこまめに切る タイマーやセンサー、調光機能などを活用する |
・ | 全体の照度バランスを見直す 全体照明の照度が高いと、局所照明の照度を上げる |
・ | 全体のレイアウトを見直す 天井照明と販売什器の位置を合わせると、照度を下げても明るく感じる |
・ | 自然光を上手に取り入れる |
最終内容確認 2018年2月