● | 経営環境の変化に対応し、自社が成長するための基盤となる事業分野の選択や経営資源の有効配分を進めるには、新しい経営戦略の策定が必要になっている。 |
目次
1.中小企業の経営戦略の方向性
中小企業は機動性と独創性を強みとするが、一方で経営資源に乏しいという弱みがある。こうしたことから、中小企業のとるべき基本的戦略は、専門化戦略と外部連携化戦略の2つに絞り込むことができる。
1)専門化戦略~コア・コンピタンスの確立
専門化とは、顧客に提供する製品やサービスの独自性を強めること。専門化する領域を明らかにする、つまりコア・コンピタンス(中核的な能力・知識の塊)の確立が必要。
2)外部連携化戦略~アウトソーシングによる外部資源の有効利用
具体的には、以下のような活動になる。
・他社との事業提携を行なう
・情報技術を利用したネットワークにより企業の情報化を推進する
・大学、研究機関と連携する
・民間の各種サービスに外部委託する
2.経営戦略策定のステップ
自社の現状に適合した経営戦略の策定ステップを踏んで、具体的な個別戦略に落とし込んでいかねばならない。以下1)~6)に手順を示す。
1)経営理念の確立
まずは経営戦略の前提として、企業の文化・風土を見定めるとともに長期的な企業の方向性を決定する。
経営理念は「企業が事業を通じて社会に対して何をしたいのか」「どういう価値観や規範に基づいて事業を行なおうとしているのか」を示す。
2)経営環境の把握とその分析
a.外部環境と内部環境を把握する | |
・外部環境:企業の外から影響を受ける環境要素で、政治・経済環境、技術動向、市場動向、競争相手の動向など ・内部環境:企業の内に存在している環境要素で、生産力、財務力、人材、マーケティング力、組織風土など |
b.SWOT分析を行う | |
内外の環境と自社経営に及ぼすであろう事項から強み、弱み、機会、脅威を明確化する。この分析から、自社の強みを活かし、事業機会を捉えるような戦略を抽出する。 |
3)経営者の意思・社員の夢と現状のギャップ分析
経営理念と自社の現状との間にあるギャップを埋める作業が具体的な戦略の策定となる。
この段階で、ギャップを自社における経営上の問題点として明確にしておく。
4)事業ドメインの確立
事業ドメインは自社が本業として行なう事業分野のこと。経営理念に基づき自社の強みを発揮しうる事業領域を意味する。
経営環境の変化が激しいときは、これに応じ事業分野も変化し、事業ドメインである本業の再構築も不可欠。
5)戦略代替案の作成と選択
明らかになった経営上の問題点をクリアする経営戦略の具体案(代替案)を複数作成し、このなかから一定の評価のもとで合理性のある最適な経営戦略を選択する。
6)経営資源の配分
事業組織の組み替え、事業の資金配分など、ヒト・モノ・カネ・情報といった経営資源を経営戦略に基づいてこれを最適に配分する。
3.戦略策定技法
経営戦略を策定するとき、有効な戦略技法を活用していくことがポイント。ここでは代表的な成長戦略と競争戦略を紹介する。
1)成長戦略
企業の事業領域を拡大していくためには成長戦略が基本になる。そのとき「市場-製品」の組み合わせで、自社の成長の方向性を決定していくことができる。企業の成長は、この4つのいずれかの基本的枠組みの戦略によって実現する。
既存製品 | 新製品 | |
既存市場 | a.市場浸透 | c.製品開発 |
新市場 | b.市場開発 | d.多角化 |
a.市場浸透戦略
現在の「市場-製品」に対して、販売戦略などで市場占有率の増大を目指し、成長の方向性を見出す戦略。
b.市場開発戦略
現在ある製品を、新しい使い方などを探ることによって、新しい市場に投入する戦略。
c.製品開発戦略
既存の市場に対して新製品を開発し、新たな需要を喚起する戦略。
d.多角化戦略
市場-製品の両面でまったく異なった分野に進出する戦略。
2)競争戦略
競争優位の源泉となる競争戦略は、次の3つに類型できる。
a.コスト・リーダーシップ戦略
業界全体の広い市場をターゲットに他社のどこよりも低いコストで評判を取り、競争に勝つ戦略
b.差別化戦略
製品品質、品揃え、流通チャネル、メンテナンスサービスなどの違いを業界内の多くの顧客に認めてもらい、競争相手より優位に立つ戦略
c.集中化戦略
特定市場に的を絞り、ヒト・モノ・カネの資源を集中的に投入して競争に勝つ戦略
最終内容確認日2018年2月