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経理・財務
経営者のための資金繰り管理法

目次

1.経営者と資金繰り

1)資金繰り表による資金管理

「資金繰り表」とは、一定期間の資金の「出」と「入」を種類ごとに並べ、収支バランスを確認するものである。この表で収入金額だけでは支払資金が不足することが明らかになったときには、銀行借入や手形割引などで不足分を補って資金のバランスをとる必要がある。通常、1カ月単位で3~6カ月程度の短期間の表を作成するが、事業計画や設備投資計画を決定する際には、1年以上の中長期的な見積資金繰り表の作成も同時に必要となる。

■資金繰り表

  • 実績資金繰り表
  • 見積資金繰り表(短期:3~6カ月程度)
  • 見積資金繰り表(中長期:1年以上)
  • 日繰り表(日々の資金繰り表)

資金繰りを管理するためには、売上や仕入れなどの本業に係る収支と本業以外の取引に係る収支を区別して把握することが必要である。したがって、資金繰り表にはさまざまな形式があるが、本業と本業以外に係る資金収支をそれぞれ区分した「六分法」による資金繰り表を作成することをお勧めする。
通常、資金繰り表といえば、短期の見積資金繰り表をいう。ここでは、資金管理部門(通常、経理や財務部門)によって作成された資金繰り表を経営者自らがチェックする際のポイントについて紹介する。

【経営者による資金繰り表のチェックポイント】

  • 収入として計上しているものは確実か
    借入の銀行了解、手形のジャンプ要請の危険、売上収入の確実性等
  • 支出の計上額に漏れはないか
    税金、配当金、賞与等
  • 月中に資金ショートは起きないか
    月末の資金残高がプラスであっても月中の入金日と支払日の前後関係に注意
    (日繰り表によるチェック)
  • 本業に係る資金収支を分析しているか
    収支がマイナスに陥っている部分はないか
  • 各月の手形割引可能額や当座借越の可能残額を把握しているか
  • 見積りと実績の資金繰り差異を分析しているか
  • 中長期的な資金繰り改善策を検討・実行しているか
    資金運用表や資金移動表によって資金繰り圧迫原因の究明、改善策の検討

2)資金運用表による資金管理

日々の資金繰りや3~6カ月先までの資金繰りが予測できるようになれば、資金不足で突然あわてることを防ぐことができるようになる。さらに資金繰りに強い企業体質を作り上げるためには、資金運用表や資金移動表による資金繰り体質の分析が必要である。
資金運用表(後述)は、資金の「出」と「入」を前月あるいは前期の現金預金、受取手形、売掛金、商品、支払手形、借入金等貸借対照表の各項目ごとに比較して、その科目の金額が増えたのか、減っているのかをみるものである。
運転資金管理は「正味運転資金」を基に行なう。「正味運転資金」とは、流動資産と流動負債の差額、または固定負債および自己資本から固定資産を差し引いたものと定義できる。この正味運転資金が増加していれば資金繰りは改善、減少していれば資金繰りは悪化していると判断する。そして、表を詳細にみることで、「何が原因で資金繰りの改善または悪化が生じたか」を分析することができる。
正味運転資金の動きから企業の資金繰りを分析するツールとしては「資金運用表」が利用される。これは、一定期間(半年や決算期)ごとの貸借対照表を比較し、その変化から当該期間における正味運転資金の動きを把握するものである。
たとえば、以下のような2期分の貸借対照表が与えられていたとする。

比較貸借対照表 (単位:万円)
資産 第1期 第2期 負債・資本 第1期 第2期
流動資産     流動負債    
 現金預金 1800 1930  支払手形 2900 3200
 受取手形 3500 3700  買掛金 3800 4100
 売掛金 4500 4900  短期借入金 5100 4700
 商品 6100 5700  未払税金 800 1000
固定資産     固定負債    
 建物 1900 1800  長期借入金 9200 9400
 備品 3800 4300 資本    
 車輌運搬具 1100 1200  資本金 1000 1200
 土地 5500 6200  法定準備金 300 330
       任意積立金 4200 4600
       未処分利益 900 1200
合計 28200 29730 合計 28200 29730
※減価償却累計額は固定資産から直接控除されている

この貸借対照表の表示科目の金額の増減を算出すると以下のようになる。

(単位:万円)
資産 第1期~第2期 負債・資本 第1期~第2期
流動資産
 現金預金
 受取手形
 売掛金
 商品
固定資産
 建物
 備品
 車輌運搬具
土地
 
 
 
130
200
400
▲400
 
▲100
500
100
700
 
 
流動負債
 支払手形
 買掛金
 短期借入金
 未払税金
固定負債
 長期借入金
資本
 資本金
 法定準備金
 任意積立金
 未処分利益
 
300
300
▲400
200
 
200
 
200
30
400
300
合計 1530 合計 1530

この増減を構成要因別にまとめたものが、資金運用表(下表参照)となる。
たとえば、流動資産の増加、流動負債の減少は「運転資金の増加」、流動資産の減少、流動負債の増加は「運転資金の減少」として記入される。
この差額だけでも資金の動きがだいたいわかるが、正しい動きを把握するには、資金移動の伴わない取引を反映させなければならない。たとえば、当期未処分利益は当期利益に繰越利益を加算したものだが、当期利益こそがその期間に得た利益であるため「資金の源泉」とされるべきである。
前掲の例で、第2期に第1期の未処分利益900万円を配当300万円、役員賞与20万円、利益準備金30万円、任意積立金400万円として処分したと仮定すると、150万円が次期への繰越利益となり、配当300万円、役員賞与20万円は「資金の使途」、第2期の未処分利益1200万円から繰越利益150万円を差し引いた当期利益1050万円が「資金の源泉」となる。また、備品、車輌の増加額は「資金の使途」とされるが、これは当期の減価償却費額を減額した額となっている。減価償却費は資金の流出しない費用であるため、本来ならば、減価償却費を「資金の源泉」とし、備品、車輌の増加額にこの減価償却費を加算したものを「資金の使途」とする。さらに、第2期の減価償却費を建物100万円、備品120万円、車輌運搬具30万円とすると、減価償却費の合計250万円が「資金の源泉」、備品、車輌の増加額に減価償却費をそれぞれ足した額620万円、130万円が「資金の使途」となる。
以上の手続きを踏んで作成される資金運用表は、以下のようになる。

資金運用表 (単位:万円)
1 資金の源泉
  当期利益
  減価償却費
  増  資
  長期借入金
合 計
 
1050
250
200
200
 
 
 
 
 
 
1700
2 資金の使途
  配当支払
  役員賞与支払
  備品購入
  車輌運搬具購入
  土地購入
合 計
 
300
20
620
130
700
 
 
 
 
 
 
 
1770
差引:正味運転資金の増減   ▲70
3 運転資金明細表
  運転資金の増加
   現金預金の増加
   受取手形の増加
   売掛金の増加
   短期借入金の返済
合 計
 
 
130
200
400
400
 
 
 
 
 
 
 
1130
  運転資金の減少
   商品の減少
   支払手形の増加
   買掛金の増加
   未払税金の増加
合 計
 
400
300
300
200
 
 
 
 
 
 
1200
差引:正味運転資金の増減   ▲70

この資金運用表を例に、「資金の源泉・使途」の面をみると、当期利益と減価償却費を含めた額が当期の営業活動による資金調達であったことがわかる。また、「運転資金の増加・減少」の面をみると、売上債権と買入債務に関してはいずれも600万円の増加で均衡し、さらに、在庫商品の圧縮や短期借入金の返済が行なわれていることから、計画的な運転資金の管理努力がうかがわれる。

最終内容確認日2013年10月

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